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第六話「創設者」

「…なんだろう、空っぽ?」


箱には空気以外、何も入ってないように思えた。不気味なほどに静まり返った島に、シモヤマの両ひざが崩れる音がした。


「シモヤマ!?」


ハヅキが箱から手を抜き、シモヤマの異変に気付いたときには、彼は全身を小刻みに痙攣させていた。苦しむシモヤマに近づこうとしたハヅキだったが、


「さわるな!」


と、謎の名探偵の張りつめた声が響き、ハヅキはその場に立ち尽くす。


「謎の名探偵…?」


振り向いたハヅキが目にしたもの。


「それは…?」


謎の名探偵はシモヤマが手を入れた箱の暗幕を外していた。そこには小さな緑色の生物が一匹。


「…蛙?」

「ああ。これは、モウドクフキヤガエル、致死量は0・2ミリグラムだ。先程のヒョウモンダコの数万倍の毒性を持っている…非常に危険だ」


蛙は暗幕の外れた透明の箱の中をピョンピョンとはねている。


「そんな、シモヤマ…!」

「ハヅキ、それ以上シモヤマに近づくな」

「どうして」


謎の名探偵は続けた。


「このモウドクフキヤガエルの毒は世界単位で考えても一、二を争う程の毒だ。一個体で象を二頭、人間であれば軽く十人は一瞬にして殺すことができる毒。また、直接でなくとも、関節的に触れただけで恐らく命の保障はないだろう」


その言葉に唖然とするハヅキ。苦しむシモヤマに近づくことも出来ず、彼は既に、ぴくりとも動かなくなってしまった。


「…シモ…バヤシ…」

「シモヤマだろう」


悔しさのあまり唇を噛むハヅキの目の前では、その気持ちとは裏腹に希望の扉が開いてゆく。


「…ごめんシモヤマ。でも必ず!あなたの分までこの島の謎を解いてみせる」


そういって、うつ伏せになっているシモヤマに最後の別れを告げた。


 扉が全て開き終わると同時に、何故かまたすぐ、目の前に扉が現れた。


「え…扉? さっきまでは暫く歩かないと次の扉まで辿りつけなかったのに」


目を丸くするハヅキに謎の名探偵は言った。


「恐らく、この扉の向こうは、始めに歩いた位置から対極の海になっている」

「本当!?じゃあ、やっと…この島から解放されるのね!」


安堵の表情を見せたハヅキだが、謎の名探偵は扉をじっと見つめている。


「…謎の名探偵? どうしたの、やっとここから出れるんだよ」


ハヅキの言葉に謎の名探偵は静かに呟いた。


「最後の扉を開ける前に、どうしても確認しなくてはならない事がある、今ここにいる、うんこアイランドの創設者にな」

「え、創設者!?だって…そんな人どこに」


ハヅキは辺りを見渡すが人影はおろか、風すら止んでいた。静まり返る島で、謎の名探偵は指を指して言った。


「さあ、話しを聞かせてもらおうか、うんこアイランドの創設者よ!」


謎の名探偵の指の先、そこには。


「え…? お、お母さん」


指先はハヅキの母、ヒデコに刺されている。


「いきなりどうしたんですか、謎の名探偵さん…? え、私が島の創設者?」


慌てるヒデコにハヅキも焦りを隠せない。


「そ、そうだよ謎の名探偵!なんで私のお母さんが!」


驚くハヅキに謎の名探偵は続ける。


「怪しい点は初めからいくつかあったが、決定的な根拠と目的から推理し、ひとつの答えに辿り着いた」

「目的?」

「ああ。この島の目的、それは、〝永遠のうんこ製造機〟」

「うんこ…製造機…?」


聞きなれない言葉にハヅキは首を傾げた。


「そう、死者を出すことが目的ではなく、あくまでも、そこで選抜された生存者を絞り、より強力で頑丈なうんこ製造することだ」

「…そ、そんな」


愕然とした様子でハヅキは、自分の母であるヒデコを見つめている。謎の名探偵は、そして、と推理を続けた。


「驚くべきことにこの島、ただの無人島とばかり思っていたが、先ほど島の土の養分を採取したところ、善玉菌や悪玉菌、その他の腸内細菌、また胃液や胆汁、食べ物のなれの果てといった人糞に一致する成分で出来ていた」

「…ま、まさか、この島」


ハヅキは自分の立っている地面を覗き、ぞっとした。


「そう、この島自体がうんこでできている。そして回りの木々から実る果実は、うんこの養分を蓄え成長する。よって空を飛ぶトンビ等がこの島に寄りつかない説明もつく」


その答えにハヅキは絶句したが、やはり実の母が島の創設者だと認めたくないのだろう、謎の名探偵に反論した。


「そ、それでも、お母さんが黒幕だって証拠はないでしょう? それに、扉を開けるには死者をださなけれないけなかった。お母さんが毒にあたる可能性だって十分あったはずよ」

「それも既に答えはでている」

「…」


謎の名探偵は全国ジュニア名推理大会 中学生部門にて毎年覇者として君臨するその推理力を魅せた!

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