6.
答えが出ないまま、タカオは神社に目を向けた。どこにでもある小さな神社だ。燃やされた事が事実なら、目の前にある社は建て直されたものなのだろう。それがどの時代の出来事なのか、タカオには検討もつかなかった。
しばらくして、松嶋は神社に戻ってくると、この暑いなか小走りで車を持ってきたぞと笑顔で手を振った。そんな松嶋に礼を言って、タカオは車へと移動した。
旅館まではたいした距離ではなかったけれど、折角なので松嶋の厚意に甘える事にした。
「そういえば、松嶋さん」
シートベルトをしめながら、松嶋は適当に返事をした。
「ああ?」
「あの神社のミステリーって、誰に聞いたんですか?」
「ああ、お前もやっぱり気になるだろ!今だに何も育たないなんて稲荷神の呪いだよなー。怖いなぁ」
時折、松嶋は質問に答えない時があるが、タカオにとってはいつものことだった。松嶋は気がつかぬまま鼻歌まじりに車を出発させる。
「そういえば今日あの神社でお祭りがあんだよ。お前は……行かないよな。ちゃーんと休んでるんだぞ」
なんだか楽しそうに話す松嶋に、タカオは疑惑の眼差しを向ける。
「まさか、出張の日を微妙にズラしたのって、その為なんじゃ……」
そう言いかけると、松嶋はもの凄い勢いでタカオに顔ごと向けた。
「おい!なんて事言うんだ!俺は仕事で来てんだぞ!今回の新商品にどれだけ人生かけてると思ってんだ!若い子目当ての祭りの為にわざわざ出張日を調整するはずな……」
「わわわ分かりました!分かったから!前見て運転してくださいよ!!!!」
松嶋のあまりの慌てように、完全に陰謀に気が付いたタカオはため息をこぼした。
「女の子目当てだったんですか……」
笑うのを堪えながらぼそりと言うと、松嶋の鬼のような形相と、
「ぁあ?!!!!!」
チンピラまがいの圧力をかけられ、旅館までの数分間は笑うのを堪えて沈黙を守った。
松嶋とのそんなやり取りも、タカオにとっては不思議だった。いつもの日常に戻りつつある。それが、不思議でならなかったのだ。このまま、こうやって日常に戻れば、あの森の事は忘れて行く。何もなかったように、きっと忘れていくのだ。
ーー何も、なかったんだ。あんなこと、全部夢で良かった。
言い聞かせるように、納得出来るように。流れて行く景色を目で追いながら、それでも、ざわめきが消えずに大声を上げたくなる自分を抑えていた。




