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5.

 ドワーフはやっと手を離すと、小走りに木の家のドアに近づく。手作りのようなドアは不揃いの木の板を何枚か並べただけの簡単なものだった。


「さぁ、ここが僕の家だ」


 そう笑顔で言うと、家の中に入るように手で合図した。


 その木は不思議な姿をしていた。木の根が盛り上がり、地面から離れているように見える。盛り上がったところはドアと同じように木の板を並べて塞いでいる。大きな木を利用した小さな家だった。


 ドワーフが開けたドアからは灯りがもれて、すがりつきたくなる。開けられたドアから遠慮がちに入ると、家の中は思っていたよりも広く、すべての家具がやはり小さかった。


 部屋は円形の作りで、天井は木をくり抜いたように高い。手を伸ばしても届かないだろう。その天井から鎖がいくつも垂れ下がり、その先にはランプがオレンジ色の光を放っていた。


 部屋の中央には、ずっしりとした四角いテーブルが置いてある。テーブルには赤い布が敷いてあり、その上には料理がたくさん並んでいた。そして美味しそうな香りが部屋いっぱいに広がっている。


「さぁさぁ!早くテーブルについて、ご飯を食べよう。走ったらお腹がへったろう」


 ドワーフはそう言ってドアを閉めると、テーブルまで誘導する。そこまでくると困ったような声をだした。


「それにしても、君は大きいからなぁ。椅子がないなぁ。ちょっと待ってて!あのソファーならちょうどいい。うん」


 ドワーフは1人で喋りながら、最後には嬉しそうに足取りを軽くして部屋から出て行った。


 テーブルでは、ドワーフの奥さんらしき人がスープの入った鍋を運んで来たところだ。彼女も彼と同じ白髪だった。彼らの違うところは、服装がズボンかスカートなのかくらいだ。床まである長いスカートに、上に着ているものは彼と同じだ。


 不思議なことに、顔や体格など2人の外見は同じようにしか見えない。もしかしたら、彼らにしか分からない違いがあるのかもしれないが。


「あらあら。今日は珍しいお客様ね」


 スープを取り分けながら、ドワーフの奥さんは嬉しそうに微笑む。


 何か言おうと口を開けた時、隣の部屋のドアが開き、ドワーフにしては大きなソファーが現れた。ドワーフは軽々とその大きなソファーをテーブルまで運んできた。


「これなら座れるだろう。なにせ私達2人がゆったりと座れるくらい大きいからね。さぁ座って座って!」


 そう言って無理矢理ソファーに座らせる。古ぼけた緑色のソファーは少し窮屈だったけれど、座り心地は良かった。




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