15.
そのタカオにエントが近づき、まじまじと見つめている。タカオもエントを見つめ返す。エントの瞳は他の者よりも深緑の色が薄い。歳のせいだろうか。タカオがそんな事を考えていると、今にも泣き出しそうな声が聞こえた。
「なんてこと……」
扉の近くにいたジェフの母親が、まるで絶望的とでも言うように手を口に当てて、悲しそうな表情をしていた。ジェフはよく分からない様子で、きょとんとしている。
「気をしっかり持つんだ!」
エントはついにわけの分からない事を言い、グリフは素知らぬ顔でいつも通りだ。
「エント?何がどうしたんですか」
タカオがそう聞くと、エントは言いづらそうに壁に掛けてある小さな鏡に視線を移す。
「自分で確認するほうがいいだろう」
タカオは何も分からないまま、鏡の前に立った。
ーー目が充血したくらいで大げさな。それともここでは目が充血したら死ぬ。そんな迷信じみた伝説でもあるんだろうか。
タカオは首を傾げながら鏡を見ると、そこには、もちろん自分自身が映っていた。
けれど、その左の瞳は、もう自分自身と瞳とは思えなかった。左の瞳だけ、黄金に輝いていたのだ。
「サラと、同じ瞳……」
タカオは驚いて、最初に放った言葉はそれだった。
エントは困惑するタカオに、後ろから静かに語り始めた。
「黄金の瞳、それは四大精霊の瞳だ」
「しだい……せいれい?」
初めて聞く言葉にタカオは戸惑った。
「四大精霊とは、この森を守っていた精霊の事だ」
さっぱり話についていけないタカオを見かねて、グリフが口を挟んだ。
「分かりやすく言えば、サラマンダー。あれは四大精霊のうちの火の精霊だ。その他に土、水、風の精霊がいる」
グリフから説明されても、タカオは頷くのがやっとだった。
「その四大精霊と、この瞳になんの関係が?」
タカオがそう言うと、グリフは何も言わずため息ついた。すると、グリフのかわりにエントが口を開いた。
「これは、伝説にしか過ぎんと言われてきたんだがな。精霊の怒りに触れた者を、殺すために……その者の瞳と精霊の瞳を繋げる、と言われていてな」
エントは少し間を置くと、ため息と共に言葉を切り出した。
「実際に精霊の瞳を持つ者など、王族以外で聞いた事もないが、その伝説はこの森の者なら誰でも知っている」
その話の全てを理解するのは、今のタカオには難しい。それでも、緊迫したこの空気が、これは冗談ではない事を明らかにしていた。
タカオは口を開けたまま、エントとグリフを交互に見ていた。




