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三題小説

三題小説第三十八弾「水着」「似ている」「老人」タイトル『肺に空気が満ちるのを感じる』

作者: 山本航

 今日は嵐だから大人しくしていなさい、と今朝、母は言った。人間に手を出してはいけない、とそのずっと昔から母は言っていた。

 だけど春の夜の嵐の中、揺れる小舟の影を群青色の水面に見た時、アタシは堪らない気持ちになって猛突進した。そうして力任せに下から突き飛ばしてやった。

 勢い良くひっくり返したものの、その舟に人は乗っていなかった。勢い余ったアタシは簡単に荒波に飲み込まれる。そして舟に頭をぶつけたのだ、と思う。


 要するにアタシは、人魚のくせに溺れた。


 どこか遠くから聞こえてくるような自分の咳き込む声に驚いて気がついた。


「気がついたか?」


 誰かの第一声はそれだった。まだあどけない少年の声だ。水ではなくて空気だからか、より一層透徹に響くその声はまだ声変わりしていない。

 少年の日に焼けた肌は擦り傷だらけでアタシの隣に寝転がっていた。その子の下半身には鰭が無く、二股に分かれており、白い布を腰に纏っていた。

 思いがけず人間を目の当たりにして慌てて逃げようとしたけど、どこに打ちつけたのか痛みですぐには動けなかった。よくよく気がつくとアタシの身体も擦り傷だらけだ。肘や肩が擦り剥けて、緑の鱗が何枚か剥がれている。その人間がまだ子供だと分かったので、すぐに逃げ出す事もないと考える事にした。


「君が助けてくれたの?」


 アタシがそう言うと少年はかぶりを振った。


「助けようとはしたんだけどな。俺も溺れたよ。ここに流されたのは偶然だ」


 年端もいかない子供のくせに偉そうな口ぶりで、でもただ一緒に溺れただけという話に噴き出した。


「何がおかしいんだ。こんな酷い目にあったのに」


 少年は呆れたように眉根を寄せて痛みに呻きながら上体を起こした。傷口が海水で沁みるらしい。


「全部よ。全部おかしい」


 その場所には見覚えがあった。人間のいない時を見計らって何度か遊びに来た洞窟だ。奥まで海水が流れ込んでいて浜のようになっている

 どうやら人間の目には真っ暗闇のようで少年は探るように水から出ていく。人間だから水の中にはいたくないのだろう。


「人魚って本当にいたんだな。おとぎ話だと思ってた」


 少年は独り言でも言うように呟いた。


「君が世間知らずなだけじゃないの? アタシは人間をよく知っているわ。こうして話すのは初めてだけど、遠目に見た事は何度もあるもの」


 少年がおそらく見えていない天井を見上げて言う。


「与太話って事なら人魚に出会ったって人の話は聞いた事あるけどな」

「それって君がその人の話を信じていなかっただけじゃない?」

「まあ、そうとも言えるか」


 波が寄せては返す音が洞窟の中に反響する。波打ち際の音なんて初めて聞くけど、中々素敵な音だ。砂や石が流され擦れる微かな音が馴染んでいる。

 少年の高い声がそれらを押しのける。


「君は水から出ないのか? 動けないなら手伝うぞ」

「人魚はこっちの方が落ち着くのよ」

「そうか」


 体は水中だけれど頭は空気中に出ている。肺に空気が満ちるのを感じる。肺で呼吸するのは久しぶりだった。体の中を洗い流すような感覚で、肺呼吸も悪くない。

 アタシも上体を起こし、洞窟の入り口の様子を見る。どうやら嵐は過ぎ去っているようだった。わずかながら星明りの瞬きが見える。全身を点検した限り、擦り傷は多いが大した怪我はなさそうだ。腕も鰭も多少の痛みは伴うけどきっちり動く。

 少年を見ると、少年は目を逸らした。目が慣れてきたのだろう。直前までアタシをじっと見ていたような気がしたけど。


「あなた名前は?」


 少年の赤らめた横顔を見つめながらアタシは言った。


「どうして?」と少年はそっぽを向きながら返した。

「変わった名前ね。人間てみんなそうなの?」

「今のは名前じゃない」

「分かってるわよ。何で名前を聞く理由なんて聞くの? 人間てみんなそうなの?」


 少年がふう、とアタシに聞こえるように空気を吐き出した。


「人魚じゃないけど。名前を魔のものに知られて不味い事になる昔話を聞いた事がある」


 一瞬何を言われたのか分からなかった。その言葉の意味がアタシの頭に染み渡るとアタシは猛烈に喋った。


「そう。人間は皆あなたみたいに礼儀知らずなのかしら。まあ礼儀を知らないだけなら、人間にしてはまだマシよね。アタシはアタシを助けようとしてくれた君に、たとえ大嫌いな人間・ ・だったとしても、敬意を表して感謝の言葉と名前を告げるわ。ありがとう。アタシの名前はみぎわよ。もう会う事はないでしょう。それじゃあさよなら」


 もう会う事はない。そう思っていた。

 アタシは音もなく海水に飛び込み、一度も振り返らずに泳ぎ去った。嵐の後の水は冷たい。



 結局、その次の日には少年と再会した。アタシから会いに行ったのだった。

 今朝、海へ帰ると母はアタシの無事を知って大いに泣き、アタシの軽率を知って大いに怒り、アタシの無礼を知ってまた大いに泣いた。誠心誠意感謝の気持ちを述べ、昨日の非礼を詫びなければいけない、との事だった。

 人間に近づくな、と普段は口を酸っぱくして注意する母がこう言ったものだから、アタシも妙に焦った。鰭が千切れんばかりに水を押し、腕が外れんばかりに水を掻き分け、昨夜舟を見かけた場所へ急いだ。

 少年はすぐに見つかった。少年の方もすぐにアタシを見つけた。少年は少し沖に出てただ泳いでいた。漁をしているわけではないようだ。


「もう会えないかと思った。昨日は悪かったな」と、少年が先んじた。


 アタシも慌てて詫びる。


「アタシの方こそ。命の恩人に対して余りに無礼だったわ。本当にごめんなさい。そして改めて、助けてくれてありがとう」

「いいんだ。昨日も言ったけど助けようとして一緒に溺れただけだから。俺の名前は千治。宮島千治だ。汀に名前を教えたかった」


 アタシはからかうようににやつく。


「いいの? 魔のものに教えちゃって」

「悪かったって」


 千治は決まりが悪そうに微笑んだ。


「ところで千治は何をしているの? こんな沖で人間が一人で泳いでいるのなんて初めて見たわ。漁船はよく見かけるけど」

「ただの水泳の練習さ。俺は泳ぐのが下手だからな」


 アタシは千治が冗談を言ったのだと思って笑った、けどとても真面目な顔をしていたので笑うのをやめた。


「昨日の嵐で溺れるのは仕方ないと思うけど? 人魚ですら溺れる嵐だったのだから」


 頭をぶつけなければああはならなかったと思うけど。


「そうかな。そうかもしれない。でもそれは別にしても、もっと上手く泳げるようになりたいんだ。俺は水兵になりたいんだから」


 水兵という言葉の意味は分かっていたけど、どういうものであるか実感はなかった。とにかく千治はもっと上手く泳げるようになりたいらしい。


「じゃあアタシが泳ぎを教えようか? 恩返しね」

「河童よりも上手いの?」


 アタシは妙に向きになる


「当たり前でしょ。相撲は取れないけどね」



 それからアタシ達は特に決まった約束もしなかったけれど、ほとんど毎日泳ぎの練習をする事になった。

 そしてやっぱり河童に教えてもらった方がよさそうだった。人間というのは脚を合わせて人魚のように泳ぐのは得意でないらしい。出来なくもなかったけれど、鰭と比べて足は小さ過ぎて水を押す量が少ないから、あまり効果的ではないみたいだった。

 脚を交互に動かして進むあのやり方や、開いて閉じての蛙みたいなやり方は、間抜けな上に水流が妙な動きをするので好きにはなれなかった。

 だけど、千治とともに泳ぐのはとても楽しかった。


 あれから十年余り、二人で泳ぎ、語らい、じゃれ合った。

 アタシは人魚や海の事を教えた。人魚の寿命やアタシの年齢を教えると千治は大いに驚いた。アタシは千治の祖父よりも年上なんだそうだ。それに人魚の集落の事、海溝の暗さ、奇妙な形の深海魚達、鯨の歌や海流の恐ろしさ。

 千治には地上の事を沢山教えてもらった。スクリュー付きの船のように地上を走るクルマやテツドウ、アタシも海上でたまに見かける飛行機、センシャやジュウという物騒なもの。それらを使って戦争をしているらしい事。


 あと地上の女の子は海を泳ぐ時でさえ体を布で隠すらしい。千治が妙に恥ずかしがるのでアタシも水着とかいうのを人魚の身体に合わせて作り直してして着る事にした。最初は邪魔に感じたが人間なりの工夫はそれなりに有効で、泳ぐのには適しているかもしれない、と譲歩した。


 地上の物にあまり魅力を感じなかったアタシもハナは気に行った。これは珊瑚のように色とりどりで地上には沢山あるらしい。それに種類も豊富で野の花や樹の花、季節によって咲く時期が違う様々な花があるのだという。たまに千治が持ってきてくれるけれど、海水には弱いらしくて持ち帰る事は出来なかった。あの洞窟でならアタシにも人間に知られずに育てられるかもしれない、と思ったけどハナも珊瑚と同じで日光が必要だった。それにアタシには真水を用意する事は出来なかった。


「そんなに好きなら俺が代わりにここで育ててやろうか」


 千治の声は変わり、重く美しく響く波音のようになっていた。

 アタシ達はあの洞窟で寝転がり、アタシは千治に貰った植物図鑑を眺めていた。


「いいよ。この植物図鑑で十分だわ。たまには持ってきてくれると嬉しいけど。それにどうしても育てたくて仕方なくなったら地上に住むのも悪くないかもしれないわね」


 千治からの返事が無いので振り返る。精悍になったその顔で、まるで幼い少年のように目を丸くしてアタシを凝視していた。


「驚いた。そんな発想した事なかったな」

「人間が海に住む事と比べたらありえなくもないでしょう?」

「それはそうかもしれないけど」

「けど?」

「汀は人間が嫌いなのかと思ってた」


 千治と出会う前と比べたらアタシも丸くなった。かつて抱いていた人間への憎しみはとうに消えている。色々な人間がいるという事は千治に教えられなくても、千治と語らっていれば分かった。


「そんな事言ったっけ?」

「言ってないけどな。言わなくても分かった、気がしてた。違ったか?」

「いいえ。ある意味では本当よ。ずっと人間を憎んでた。父を殺されたあの日から」

「殺された?」


 アタシは植物図鑑を閉じ、濡れないように波打ち際から離れた所に置く。


「ええ。忘れもしないアタシが丁度百歳になった誕生日。父はあたしに珊瑚を贈ろうと浅瀬にやってきていた。そこを人間に見つかって撃ち殺されたらしいの。幼いアタシは復讐しようと思っていた。けど遠くまで泳げる年齢になった頃にはもう人間の寿命なら死んでいる頃だったわ。それからはたまに人間に鬱憤を晴らしてたけど。もうそんな事する気も失せちゃったわね」

「大体八十年くらい前か。まだ江戸時代だな。昔の人間は人魚が恐ろしかったんだろうか」


 アタシは首を振る。


「人魚が殺される事はよくあったのよ。人魚の肉を狙ってね」

「聞いた事がある。不老長寿の霊薬になると。それは本当の話なのか?」

「ええ。アタシ自身人魚の肉を食べた人間に出会った事なんて無いけれどね。聞いた話では食べれば人魚と同じように若さを保ち、人魚と同じように十倍の寿命を得るらしいわ」


 千治は俯き深く考え込んでいた。

 千治が頼むなら肉をくれてやっても良いと思っている自分に気が付いた。


「やっぱり汀が地上に住むのは反対だな」


 人魚の肉、あるいは不老長寿について考えているのかと思っていてアタシは不意をつかれた。


「え? 何で?」

「汀が人魚だと知れれば君の肉を狙う人間がやまほど現れる。間違いなくな」

「そうね」

「それなら俺が海中に住む方がよほど現実的だよ」


 千治がにやりと頬を緩めて言った。アタシも釣られてくすくすと笑う。


「どうやって? 息も出来ないのに」

「今は潜水艦って言うのがあるんだ。さすがに見た事ないか。海中を進む船だ。きっと俺が大人になった頃には海中に家が建ってるさ」


 千治の語る夢物語は馬鹿馬鹿しい冗談かもしれないけれど人間と人魚が一緒に海中に住むというのはとても素敵な事だ。


「その頃には海の中で花を育てられるかしら」

「当然さ。人間が住めるのに花が育たないなんて事があるもんか。そうなれば地上の色々なものを汀に見せてやれるのになあ」


 アタシは寝そべり横目で千治を見つめ、含み笑いをする。今でも十分よ、と心の中で呟いた。



 その日千治の元に召集令状が届いたそうだ。翌日、海にやってきた千治は生きていれば必ずアタシの元に帰ってくると約束し、その三日後何とかいう師団に加わる為に家を出た。


 戦争はほんのひと時のものだった。人魚の感覚だからかもしれないけれど、あの四、五年で何が変わるというのか、アタシには理解できなかった。

 多くの飛行機を見、潜水艦は一度も見れなかった。

 結局十年経っても二十年経っても七十年経っても千治は帰ってこなかった。およそ二百五十年生きているのに、あの十年が何よりも輝かしく思い出された。

 植物図鑑は色褪せてしまい、最早何が映っているのか分からなかったけれど変わらず洞窟に置いてある。数は減ったがそれでも時折図鑑を開きに洞窟へ来ていた。

 今日は先客がいた。千治が去って以来初めての事だった。まだ幼い子供で丁度千治と初めて出会った頃と同じくらいの見た目をしている。水から顔を出すとすぐに目があった。その顔はどこか千治に似ている。


「人魚だあ!」と少年は言った。


 その口ぶりから察するに未だに人魚の存在は知れ渡っていないらしい。


「こんにちは。こんなところでどうしたの?」


 アタシは懐かしい気持ちがこみ上げて来て目を細めた。


「んー。別に。探検してたんだけど。お姉ちゃんは人魚だよね。人魚って本当にいたんだ」

「君が世間知らずなだけでしょう。人魚なんていっぱいいるんだから。君、ここら辺に住んでるの?」

「んーん。お爺ちゃんのお見舞いに来たんだよ。つまらないから抜け出してきた」


 アタシの中に芽生えた疑惑は確信に変わった。


「君のお爺ちゃんの名前を聞いても良い?」

「宮島千治だよ。僕は川崎光だけど」

「そう。お願いがあるんだけど、聞いてもらえるかな」



 アタシの心の中はどす黒い憎しみで染まっていた。その憎しみの対象はアタシ自身明確ではなかった。

 生きていたのに黙っていた事? そうあたしはとても心配していた。そして悲しんでいた。

 アタシに会いに来なかった事? アタシは約束を破られた事に怒りを覚えた。

 アタシの七十年を軽視された事? 人間だと七年ほど。長いといえば長い。短いといえば短い。

 千治が別の誰かに人生を捧げた事? 人魚だと七百年ほど。もちろん長すぎる。


 生まれて初めて今アタシは地上を進んでいた。車というのはとても速くて恐ろしいものだった。紺色に塗り固められた道をもの凄い速さで走り去っていく。千治に聞いていたよりももっと速い気がする。そんな車が大量に行き交っている。目が回りそうな光景だ。道行く人間達はアタシをちらと見るくらいで気にとめない。


 アタシの今着ている真っ白の服は病院で患者が身につける者らしい。そしてアタシが今乗っているクルマイスというのは歩けない人間が地上を進む為のものなのだそうだ。車の簡易版といったところだろう。そしてアタシの手には果物を切る為のナイフが握られている。どれも光がビョウインから持ってきてくれた。

 どうやら道行く人々が見ているのはアタシが握っていたナイフのようなので、背中に隠す事にする。そして光に教えてもらったビョウインへ向かう。


 病院というのは海からも見えている白い巨大な建物だった。三十年ほど前に建設された建物だったと思う。とても大きく、広く、外と違って整然としていて清潔な様子だ。自動で開閉するガラス板を機を見計らって潜り抜け、何度も何度も人に尋ねてとうとう千治の住んでいるという部屋を見つけ出した。


 その部屋には千治の他には誰もいなかった。すっかり変わりはて老人となった千治は布団をかぶり静かな寝息を立てて眠っていた。

 籠に入った花の束をしばらく見入った後、アタシは千治の隣へ行き、その顔を覗きこんだ。穏やかな寝顔だ。戦争に行った割には不幸の影を微塵も感じられない。アタシがナイフを取り出すと千治が目を覚ました。


「久しぶりだな。汀。俺を覚えていたのか」


 その声の艶は衰えていないように思えた。波打ち際のような響きが寄せては返す。


「当たり前でしょう。千治の方こそすっかり変っちゃって。耄碌しちゃいないでしょうね」

「君は何も変わらないな。頭は大丈夫だが、体はすっかりガタが来てな。もう数年も持つまい。わざわざ君の手を汚すまでもないさ」

「逆よ。アタシは千治を生かしに来たの」


 この裏切り者を老いた体のままさらに七百年以上生きながらえさせる。人魚の肉は老いを止めても、若返らせる事はないそうだ。


「許してくれるのか?」

「違う! 人魚の肉を食べても若返りはしないのよ! ただ老いたまま長生きするの! あなたは二度と泳げないし走る事も!」


 そう言って叩いたはずの千治の足はどこにもなかった。


「両足とも失ったんだ。生きていただけ儲けもの、そう考えようとは思ったんだけどな。もう二度と汀と一緒に泳げないと思うと顔を合わせる事が出来なかった。すまない」


 千治の涙が深く穿たれた皺を伝い流れている。アタシもまた声を上げて泣いた。千治の足があったはずの場所で涙を流した。

 どれくらいそうしていたか分からないけれど、涙が枯れるとアタシはナイフを握り直した。


「本当に良いの?」


 千治もまた泣き終えているが、涙の跡は残っている。


「ああ。生きる覚悟は出来ている」

「まあ、嫌になればアタシが殺してあげる。別に不死身になるわけでもなし」

「そんな心配はいらないさ。君の方こそ指を失っても大丈夫なのか?」

「脚を失った千治に比べれば大したことじゃないわ。それより心配なのは指一つで足りるのかって事よ」

「君が死ぬほどの肉が必要だとしたら本末転倒だな。まあその時は後を追うさ」

「アタシの台詞よ」


 二人して秘密の悪戯でもするように笑う。アタシは大きく息を吸い込む。数十年ぶりの深呼吸。肺に空気が満ちるのを感じる。ナイフを振り上げ、小指に狙いを澄ます。

ここまで読んで下さってありがとうございます。

ご意見ご感想ご質問お待ちしております。


最初はもっとおどろおどろしい内容になるつもりだったけど割と爽やかに。

憎しみとか嫉妬で悶え苦しむ人はまた別の機会に書こうと思う。

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