あの日の雨
あの日の雨
黒い川が
揺れて光っている。
街の灯だまりに濡れている。
信号灯は交差点を、
青く濡らし、赤く濡らす。
行き交う人の傘と傘とが、
挨拶もなく過ぎていく。
わたしの傘は赤い。
黒い傘、透明の傘が過ぎる。
無くなった中華料理店に、
幻の親子が座っている。
何かを頼み、
何かを食べて、
立ち去っていく。
いなくなった親子に雨が降る。
傘を差せないままに、濡れている。
信号が変わっても、
どこへも行けず蹲っている。
*
もう亡くなってしまった、祖母と父母とある中華料理店へ食べに行ったのです。そこで、もうそんな年でもないのにお子様ランチを頼んで、窘められていたのです。地下にあったその料理店ももうありません。なんだか、その日はこのような雨の日であったような気がしますが、定かではありません。
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