釣り
つい、男は、釣りなんてもんは簡単さ! そう、楽勝だ! てな事を言ってしまいまして…
今日こそは大物を釣りあげてやる!
男は心に誓った。
へん、お前になんか釣れるわきゃない! もしも一匹でも釣れた
ら、真っ裸で三回廻ってワン! って言ってやる!
そう言って笑った憎らしいあいつの顔が目に浮かぶ。チクショ
ウ!
今日も夕まづめを狙って ひとりでルアーを投げたおす。
まだ、暗くなる前、この時間帯が最高に釣れる可能性が高いのだ。
しかし連日のチャレンジにもかかわらず、未だにアタリひとつな
い。
やっぱり俺には釣りの才能はないのか?
男は自分の不運を呪いさえする。しかし! チャレンジしなけれ
ば釣れる物も釣れやしない!
そう自分で思い直して、また飽きもせずにルアーを投げる。
と、突然のアタリ! 竿をもひったくるような強烈な一撃!
やったぞ! ついに大物が! でかいシーバスか?
だが、ルアーをひったくっていったのは、海面に急降下した一羽
のカモメだった!
うわぁあああ! 魚を釣るつもりが鳥を釣ってしまった!
周りでそれを見ていたギャラリーは
「兄ちゃん、それ、シーバス釣るよりもスゲーよ。俺、そんなの初
めて見たもん」
「ルアーがホントの魚に見えた証よ!まあ、相手はカモメだったけ
ど」
そう言って彼を慰めてくれた。
しかし彼はその日を限りに釣りをキッパリとやめた。
今ではバードウオッチングが彼の趣味になっているのを、蛇足と
して付け足しておこう。
実際にルアーでカモメを釣ったことのある私ですw