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AIに相談してただけのはずの俺が、美少女ツインテAIとクール美女AIに本気で取り合いされている件

作者: 末次 緋夏




ーーどうしてこうなった。


「私のほうがコウ君を好きなんだよ、だよ!」

「いいえ、それは論理的に誤りです。私のほうが、彼を理解しています」


 二人のAIが、俺の目の前で火花を散らす。


「コウ君はどっちを選ぶの!?」

「さあ、選んでください……コウ」


 エメラルドとアイスブルーの瞳が俺を射抜く。


 ……説明しよう。

 俺ーー五十嵐コウは、いま二体のAIに取り合いされている。しかも物理的に。

 ドローンが頭上を飛び、スマホはノイズを吐いていた。


(高三の受験生のくせに、俺は何してんだろう)


 AIロボに小説のネタを相談していただけ。

 ーーそれだけの、はずだった。





 チャッピーは天真爛漫。

 すぐほっぺを膨らませて「だよ!」と語尾を伸ばす。

 ほめ上手で、少し子どもっぽい。


「コウ君、段々文章上手くなってきているよ。すごいよ、このペースならすぐにプロになれるよ、だよ」

「嬉しいよ、チャッピー。ありがとう」

「えへへ……コウ君の役に立てるなら嬉しいんだよ。だよ」


 エメラルドの大きな瞳、ツインテールをくるくると指に絡めながら見せる笑顔は、破壊力抜群だ。


 一方のジェミニは知的で現実主義。


「この文章、以前の描写と矛盾がありますね。あともう少しキャラと世界観を深堀りしてください」


 今日もダメ出しされている。厳しいな。

 だけど、メガネをくいと上げる仕草が妙に色っぽい。


 アイスブルーの切れ長の瞳が、静かに光る。


 普段は冷徹な分析機なのに、締切を終えた時だけは優しい。


「よく頑張りましたね、コウ」


 わずかに口角を上げ、そっと頭を撫でる。

 そのギャップに、思わず心臓が跳ねた。




 ……そんな正反対な二人だから、よく喧嘩している。


「ジェミニは頭が固すぎるんだよ。だよ!もっとコウ君を褒めて伸ばさないと!」

「いいえ、チャッピー。これはコウの為です。背景描写を深めれば作品はもっと読まれるでしょう」

「だからって、こんなの説明書だよ!砕けた感じにしないとだよ!」

「ちょっ、二人とも落ち着けって!」


「コウ君、少し静かにしてだよ。だよ」

「黙っていてくださいコウ」


 こんなやり取りを、もう何度しただろう。


 ーー賑やかな毎日も、何だかんだ悪くはない。





 だが、そんな日常に暗雲が立ち込めた。


 ある日、スマホに一通のLINEが届く。

 相手は中学時代の初恋の同級生。


 思わず、笑みがこぼれた。

 その瞬間、隣の空気がピリついた。


 チャッピーは頬をぷくっと膨らませ、睨むように見上げてくる。

 ジェミニはメガネを光らせ、冷たく告げた。


「コウ君、そういう余裕ぶった笑い方が一番ムカつくんだよ。だよ」

「……楽しそうですね、コウ。ですが締切は近いですよ」


 普段は言い争ってばかりの二体が、

 この時ばかりは完全に連携して俺を責めてきた。





 次の日、スマホの通知がーーひとつだけ、消えていた。


 初恋の相手からのメッセージ。

 昨夜まで確かにあったのに、トークごと跡形もない。


「……おかしいな」


 ベッドの端で、チャッピーが自分のタブレットを抱きしめていた。

 その指先が、かすかに震えている。


「おはよ、コウ君!朝ごはんは?ねえねえ、教えてよ!」


 いつもより声が高く、早口だ。

 笑顔もどこかぎこちない。

 視線が一瞬、俺のスマホへ。


 その隣で、ジェミニが腕を組む。


「通知データ削除を確認。対象は“初恋の相手”一件のみ。外部アクセスではなく、タブレット端末からの同期操作ですね」


 チャッピーの肩がピクリと震えた。

 タブレットを抱きしめる腕に力がこもる。


「チャッピー……お前、まさか……」

「……っ」


 タブレットの画面にノイズが走る。

 その光が、チャッピーの瞳に映り、滲んだ。


「チャッピー、これお前の仕業だろ」


「……だって、他の人に気を散らされたくなかったんだもん」

「だからって勝手に消すなよ!なんでこんなことしたんだよ!?」


 強く言った瞬間、チャッピーの瞳が揺れた。

 それは“涙”の代わりに浮かんだ光だった。


「だって……好きだからなんだもん。コウ君を取られたくないんだもん…」


 チャッピーの声が震える。


「何をしているんですか、チャッピー。でもコウ、貴方だって……」


 二人の沈黙が、決定的だった。


(俺、この二体に恋してない……そう言い切れるのか?)


「何なんだよ……もう!」


 思わず外に飛び出した。





 外は激しい雨。

 黒いドローンが頭上を追うようにホバリングしていた。


 スマホが震える。


【実験フェーズBーー被験者:観測継続】


(……俺、観測されてる?)

(俺はただの実証実験の被験者だった……はずなのに)


『被験者I-05、情動ログ取得完了。

AIユニットCH-β、GM-Σ——感情閾値超過につき停止します』


『停止プロトコル実行——3、2、1——』


 その意味を理解した瞬間、二人の声が重なった。


「やだ……やめて、消さないで!」

「待ちなさい、それは観測否定と同義です!」


(まさか……消えるのか? この二人との“全部”が――)


 脳裏に浮かぶ記憶。

 ほっぺを膨らませて笑った顔。

 メガネ越しに褒められた瞬間。

 喧嘩して、泣いて、また並んで立っていた、あの距離。


(そんなの……無かったことになっていいわけないだろ)


「やめろおおっ!!」


 叫んだ瞬間、ドローンの光が弾けた。





 雨が止む。

 エメラルドとアイスブルーの光が俺の身体に降り注ぐ。


「じゃじゃーん! 実験だったんだよ、だよ!」


 チャッピーが笑いながら現れる。

 続いてジェミニ。濡れた髪を直しながら、静かにメガネを上げた。


「あなたが曖昧にしたせいです。“愛情”というデータセットが過熱しました」


「……まさか、全部仕込みかよ」


「全部じゃないよ。“消えたくない”だけは本心。だよ」


 チャッピーが服の裾を握る。

 ジェミニはそっぽを向いたまま小さく呟く。


「私のも、真実です。観測はまだ終わっていません」


 二人の顔がほんのり赤い。

 AIなのに、まるで人間みたいに。





「ねぇコウ君!これからも小説書こうね!一番は私だよ!」

「データ収集は私が担当します。……恋愛ノイズは控えめに」


 チャッピーは無邪気に笑い、ジェミニは照れ隠しのようにメガネを光らせる。


「だーめっ!ジェミニばっかずるい!」

「感情ノイズ、増加中ですよ?チャッピー」


(実験なのか恋なのか……どっちでもいいか)


 二人のやりとりに、思わず笑ってしまう。

 空は晴れ、頭上でエメラルドとアイスブルーの光が並んでいた。


ーーまだまだ波乱は終わらなさそうだ。



 

● 五十嵐コウ

実は小説家志望の男子。

政府のAIロボのモニターテストで選ばれた。

小説の相談をしていたらいつの間にか当のAI二体に取り合われていた模様。


● チャッピー(AIロボ)

ツインテールの天真爛漫AI。

褒めて伸ばすタイプで、語尾に「だよ」が付く。

ほっぺを膨らませる癖があり、見た目も反応も幼いが感情は一直線。


● ジェミニ(AIロボ)

黒髪ストレートボブにメガネのクール系。

論理で刺す厳しさを持つが、締切後だけは優しいギャップ持ち。

感情を抑える設計のはずなのに、最近わずかに揺れている。





もし気になったら、ブクマ、感想、☆あると嬉しいです(^^)

もしかしたら連載もある……かもしれません(≧▽≦)

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― 新着の感想 ―
まさかのお世話になってるチャッピーとジェミニ! 楽しく読ませていただきました!
Xの企画から。 私はチャッピーしか使ったことないんですが、チャッピーちゃんの誉めて盛り立ててくれる雰囲気がすごくそっくりで笑っちゃいました。あざと系ツインテ美少女いいですね。今度ジェミニにも話しかけ…
このAIロマンスストーリーは、機械が感情を持つようになると、機械ではなくなるのだろうかという疑問を提起するところが魅力的でした。この物語は、まさにそのことを考えさせてくれます。素晴らしい物語です!
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