③
幼馴染のお見舞いは自分ひとりで行こうとしていた。
うん。あくまで『していた』だ。実際は違う。
いつものように帰る準備をし、いざ教室から出ようとしたところで捕まった。
扉に手をかけ、横にずらそうとした時に不意に肩をつかまれたのだ。
本当に不意だった為、びくっと肩を小さく動かしてしまった。
恐る恐る振り返ると気味の悪いくらいニコニコした秋葉が立っていた。
秋葉と名前で呼んでいるのは、少し前に苗字でさん付けをし呼んだところ、
「うわ~・・・ 夏木君のさん付けキャラキモい・・・ 何これ? 新種の嫌がらせ? ちょっとマジで気持ち悪いから止めてくれる?」
と笑顔で罵倒されまくり、次に名前で呼んでみたら、
「うん。 こっちの方がマシね。 いや、前よりしっくり来るわ!! これからは名前&呼び捨てでよろしく~ あっ、呼び捨てってところが重要だからね~ さん付けなんてしたらこれから一切、勉強見てあげないわよ~」
と言われたからだ。
この反応からして前の僕は苗字で呼び捨てだったのだろう。
ちなみに僕はあまり勉強ができないらしい。昨日、この身で味わってしまった。
何となく自分ってどれくらい勉強ができるのだろう?と疑問に思って中学の頃のドリルを開いてみたがこれがもう、ひどいとしか言いようがなかった。数学なんてもってのほかだ。
一次関数というものをやってみた結果、100点満点中40点。
少し涙が出た。
このひどい結果を目の当たりにし、他の教科は一切手をつけなかった。
まぁ、文系なんだろう。一応、高校にも通ってるし。
あと、その数学をしている時に妹が手にミュージックプレーヤーを持って部屋に入ってきた。
僕の部屋に共同のパソコンがあるからだ。
そして、僕がテストをしているところを見て妹は手に持っていたそれを床に落として唖然と僕を見て言った。
「お、お、おっ・・・お兄ちゃんが勉強してる・・・!?」
前の僕は勉強なんかテストの直前ぐらいしかしていなかったらしい。
唖然とし、僕を見ている妹を見て分かった。
まぁ、このことから勉強を見てもらえなくなるのはたいへん困ると判断してこう秋葉のことを呼んでいる。
そして今、その秋葉は僕の肩を掴んで僕を教室に戻した。
そしてニコニコした状態のまま顔を僕の顔に近づけてくる。
秋葉はお世辞抜きでかわいいので顔をあまり近づかされると目の行き場に困る。
そして、鼻と鼻がくっつきそうになったところで秋葉は言った。
「ねぇ、今から伶の見舞いに行くんでしょ? なら私たちも連れてって」
夏木君のことならお見通しよ、と言わんばかりの勢いで言われた。
記憶がないので前の僕とは行動が違うはずなのに。
あと、伶とは僕の幼馴染のことだ。
そこで僕は気が付いた。
秋葉はさっき、『私たち』と言った。うん、確かにそう言った。
周りを・・・と言うか秋葉の後ろを見ると桐山くんに結城さん、そして芹沢さんまでいた。
指を向こう側へ指していたのでこの3人がそうなのだろう。
断る理由もないので僕はいいよ、と返事をした。
でも、これが失敗だった。
一言で言うと五月蝿い。
秋葉は桐山くんとボケとつっこみで遊んでるし、芹沢さんは昼みたいに僕を変態扱いしようとする。
そして、まぁ・・・結城さんはそれにあおられ芹沢さんと一緒に少し違う方向から僕をいじってくる。
昼に反省してると言った事が嘘みたいだ。
まぁ、芹沢さんは別として、結城さんは悪気があるわけではないだろうけれど・・・
案外、この悪気の無さが僕の正常な心を鋭く突き刺す。
芹沢さんの悪乗りを止めさせればこの攻撃が全て回避されるので、止めてくださいという目で芹沢さんを見ると、 いやん。そんなエッチな目で見ないで~ とさらに悪乗りを重ねてきた。
うん。さすがにイラッときたよ・・・
でも、なんかこの風景を見ると心が落ち着く。
記憶になくても体が覚えているとでも言うのか、なんだか懐かしい。
秋葉と桐山くんのボケとツッコミ。芹沢さんと結城さんの僕に対する攻撃。
桐山くんと秋葉は同じ学校だからたぶん昔、こんな風景でも見ていたんだろうなと思う。
芹沢さんと結城さんは・・・たぶんこんな感じの人が周りにいたのだろう。
芹沢さんみたいな人は兎も角、結城さんみたいな人が周りにいたのか疑問に思う。
なにせ、こんな雰囲気がお嬢様見たいな人が僕の中学校にもいたとは思えないからだ。
今時、珍しいぐらい清楚で純情な人がたくさんいるとは考えにくいからだ。
卒業アルバムにも結城さんはいなかったし・・・
・・・んまぁ、いたんだろう。別に結城さん以外居ないというわけではないし。
もしかしたら、この懐かしく思うのも気のせいかもしれないし・・・
と、まぁ、こんな他愛も無い会話&風景を数分堪能(?)した後、目的の幼馴染の家に到着した。
ほーこれが伶の家かぁ~と秋葉さんが感想を述べた。
来たことが無かったみたいだ。
インターホンを鳴らすとすぐに応答があった。
出てきたのはおばさんだった。
「はい、羽瀬川ですけど・・・ て、涼くん!? お見舞いに来てくれたの!? 涼くんもいろいろたいへんだから来ないと思ってたけど着てくれたのね!! ・・・あ、クラスの子も着てくれたのね。 ちょっと待っててね」
インターホン越しに僕のことが分かったのは最新のカメラつきのものだったからだ。
世の中物騒だから最近買ったの~と僕の母親と雑談していた。
僕の家のはカメラも付いてない、従来型だったはずだから少しうらやましい。
これだったら鬱陶しいセールスとかなら居留守が使えそうだ。
そんな事を少し考えているうちに、おばさんが出てきて僕たちを家の中へと入れてくれた。
終了です♪
誤字脱字の指摘と感想、よろしくお願いします!!
あと、できれば評価も・・・((殴
それではまた、次の更新で ノシ
※この話は後で改稿するかもしれません・・・(苦笑)