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 異世界転生、そして胸か尻かの聖戦へ

キャラクター紹介


風間 ユウト(かざま ユウト)

現代から異世界に転生した青年。特に信念もない平凡男子だが、「胸も尻も愛せる」そのスタンスが“均衡の勇者”として注目される。争いよりも平和を望むが、なぜか女性たちに巻き込まれやすい。


天宮あまみや さくら【巨乳派】

土属性。癒し系のおっとり美女。天使のような笑顔と圧倒的な胸囲で、巨乳派の象徴的存在。「巨乳には包容力がある」という哲学を持ち、温泉やスライム風呂イベントでは毎回話題に。


神崎かんざき りん【貧乳派】

火属性。自称・騎士でツンデレ。胸が小さいことを気にしているが、その分誰よりも真面目で努力家。「胸のサイズで価値は決まらない!」が口癖。ユウトには何かと突っかかるが、時折見せる照れ顔が魅力。


佐藤さとう 桃子ももこ【普通派(読者視点)】

風属性。ユウトと同じく現代日本から召喚された。冷静沈着でツッコミ役。胸も尻も「どっちも普通」がポリシー。異世界のノリについていけないながらも、最も常識的な視点を提供する解説役でもある。


黒崎くろさき いのち【尻派・中二病】

闇属性。尻教団に所属する忍者で、自称「夜に舞う漆黒の尻尾」。中二病っぽい言動だが、実は尻の美学に強いこだわりを持つ。戦闘では翻る尻技ヒップスラッシュで敵を翻弄。

第一話 異世界転生、そして胸か尻かの聖戦へ

「……君の理想の女性は、巨乳か? それとも美尻か?」


開口一番、それを聞かれた。


白く輝く空間、意識の底から這い上がるように俺は目を覚ました。まるで天国のような神秘的な空間に浮かぶ一人の存在。金色の瞳に銀髪、天衣無縫の微笑みをたたえる女性──名乗るまでもなく“女神”だろう。


「……え?」


「聞こえなかったのかな? “胸か、尻か”。これは重要な問いなのよ」


「え、いやいやいや! 何なんですかいきなり!? 僕、事故ったと思ったらここで……」


「うん。あなた、トラックに轢かれて死んだわ。でも安心して。異世界に転生させてあげる。それも、チート持ちでね」


言葉を失う俺。え? 本当に異世界転生ってあるのかよ? でも話の流れが妙に軽い。


「その代わり、あなたには選んでもらうわ。あなたの“属性”を。巨乳派か、美尻派か。それによって加護の内容も、出会う仲間も、宿命も変わってくるから」


「属性ってそういう意味!?」


女神はにっこり笑う。どうやら本気らしい。


「ほら、早くしないと“平凡属性”になっちゃうわよ?」


悩む暇はない──そう悟った俺は、思い出す限りの記憶を総動員した。高校のとき、クラスの人気者は美尻派が多かった。だけど、温もりという意味ではやっぱり……


「……くっ、選べない! 巨乳も尻も、それぞれに良さがあるんだ!」


「……ふふ、まさかの優柔不断タイプね。なら、あなたには“禁断の属性”を与えてあげる」


「禁断の……?」


その瞬間、俺の身体に光が走った。胸の奥から熱が湧き、脳にまで響く。


「あなたに与える加護は──“バランスの聖印”。胸と尻、両方の属性を持つ者に愛され、翻弄される運命よ」


「え、待っ──えぇぇぇぇえええっ!?」


光が俺を包み、次の瞬間──俺は異世界に降り立った。


* * *


「……ここ、どこ?」


目を覚ますと、そこはファンタジーRPG風の森の中だった。剣と魔法の世界。装備は裸同然だが、腰にはなぜか金色の紋章が刻まれた短剣がある。そして、俺の手首にも刻まれていた。女神が言っていた“バランスの聖印”か。


「おーい、そこの人! 生きてる!?」


森の奥から、少女の声がした。現れたのは──


「な、なんだそのでかさは……!」


たわわに実った果実のような巨乳を揺らしながら、長いブロンドの美少女が駆けてくる。土色の魔道ローブからは谷間がチラリズムどころかフルオープン寸前。


「私は天宮桜! あなた、召喚された人よね? 感じるわ、胸の気配を!」


「胸の……気配?」


「ええ! あなたの胸属性……とても強いわっ!」


近い近い近い! 顔を覗き込まれるようにしてドキリとする。癒し系の笑顔と反比例するように、彼女の胸が……圧が強い。


「おい! そいつ、尻属性も持ってる気がするわよ!」


突如、もう一人の少女が現れた。今度は黒髪のポニーテール。身軽な装備に引き締まった下半身。そして、むっちりと盛り上がるグラマラスなヒップ。まさに“美尻の化身”と言っても過言ではない。


「貴様、貧乳にしてこの尻……!」


「誰が貧乳だコラ!! 名前は黒崎命。尻派くノ一だ!」


ツンと尖った態度、そして異常に意識の高い尻主張。俺の脳内では、すでに両サイドから引っ張られるビジョンが……。


「ちょっと、私の胸に気圧されてるじゃない。認めなさい、巨乳こそ至高って」


「フッ、柔らかいだけが女じゃない。尻は語るのよ、女の生き様を!」


……争い始めた。


「ちょっと待てぇぇえ!!」


俺の叫びが森に響く。


「胸とか尻とかで争うのはやめてくれ! 俺は……どっちも好きだ!!」


「……」


「……」


その場に一瞬、静寂が落ちた。


「……ふふ、なるほど。“バランス”ってそういうことね」


「やれやれ、面倒な男に拾われたもんだぜ」


二人は顔を見合わせ、そして──


「ま、しばらくついていってあげるわ。巨乳派代表としてね」


「……こっちも、尻派の誇りにかけて監視する必要がありそうだな」


こうして俺の異世界パーティは始まった。仲間は美乳と美尻の申し子たち。そして、いつしか王都を揺るがす「胸vs尻」の聖戦へと発展していくことを、このときの俺はまだ知らなかった──


【続く】


第二話 スライム討伐と、揺れる冒険のはじまり


異世界に来て、二日目の朝。


俺、佐原ユウトは、巨大な胸と極上の尻に挟まれながら、人生最大の幸福と地獄を同時に味わっていた。


「おはようユウトくん、朝ごはんできてるわよ~♡」


「起きたか。こっちはすでに準備万端だ。出発するぞ」


そう。朝からこのテンションである。


巨乳派の癒し系魔導士・天宮桜は、朝食の支度と共にバストの揺れも絶好調。一方、尻派のくノ一・黒崎命は、やたら腰を突き出した姿勢で武器を整えている。


「いや……これ、目のやり場に困るわけだが」


「うふふ、気になるの? ユウトくん、胸のほうが好きなんでしょ?」


「この前、“どっちも好き”って言ってたじゃない。だったら、尻も見なさいよ。見ていいのよ?」


言葉の圧がすごい。物理的な圧もすごい。


この世界で俺は「胸属性」も「尻属性」も両方の加護を受けた“バランス属性”らしい。しかも、その影響で、なぜか胸派と尻派の女の子が異様に絡んでくる。つまり──モテている。……のか?


「よし、今日の依頼はこれだ!」


俺たちは王都ラブリウスの冒険者ギルドに向かい、最初の依頼を受けた。


「依頼内容:セクシャルスライムの群れを討伐せよ。報酬500リル。※接触時の性的な影響に注意」


「……なんだこの依頼は」


「セクシャルスライムって、俗に“乳スライム”とか“尻スライム”って呼ばれてるわね。強くはないけど、触れてくる部位に応じて心と体が侵食されるわ」


「ま、どっちにせよ私たちが前に出るしかないってことね」


桜が胸を張り、命が尻を揺らす。なにこの威圧感。


こうして、俺たち三人は森の奥に向かった。


* * *


「いた……!」


モコモコと粘体のような物体が、地面を這うようにうごめいていた。薄桃色のゼリー状スライム。中央部に、まるで“バスト”のような膨らみ。もう片方は、見事に“尻”に擬態していた。


「お、おい……本当に形がリアルじゃね?」


「さすが“欲望に反応して形を変える魔物”……えっちなスライムね」


桜は頬を染め、命は鼻で笑った。


「私が胸スライムを引きつける。お前は尻を頼む」


「了解」


二人が飛び出すと、スライムたちは嬉々として対応するかのように、弾けるような動きで跳ね回った。


「ふにゃぁっ!? う、胸に……! 変な粘液……っ」


「くぅ……お尻のラインをピンポイントで……ぐぬぬ、変態スライムが……!」


──完全にピンチである。


だが、ここで俺の加護が発動した。


「“バランスの聖印”解放──スライム誘導【中立波】!」


俺の手の紋章が光り、両方のスライムが一瞬止まった。


「今だ、ふたりとも!」


「“爆裂乳球ばくれつにゅうきゅう”っ!!」


「“尻遁・弾尻衝破だんけつしょうは”っ!!」


ズドォン!! という派手な爆音と共に、スライムたちが空高く吹き飛んだ。


「……討伐完了」


「……ふぅ。尻がベトベトだけど、勝ったわ」


どう見ても余計に色っぽくなった姿で、二人は息を整えていた。


俺はただ、震える手で討伐証明を拾いながら、遠い目をしていた。


「こ、これが……異世界の冒険……!」


* * *


帰り道。三人で森を歩きながら、俺は改めて考えていた。


(このまま俺、いったいどこに向かってるんだ?)


いや、確かにラッキーな状況だ。巨乳と美尻に挟まれて、異世界ライフは爆発している。


だけど──


「なあ、ふたりとも」


「なに、ユウトくん?」


「どうした、変な顔して」


「俺、最初の頃は“どっちが好きか”って言われても選べなかった。だけど、今日みたいにふたりが命がけで戦ってくれて、俺……思ったんだ」


「「うん?」」


「胸も尻も──“人となり”と一緒に好きになるものなんじゃないかって」


沈黙。


「なにそれ、真面目~」


「くっそ、そういうとこだけモテ男感出すんじゃないわよ」


「いや、ごめん、なんか言ってて恥ずかしくなってきた」


三人の笑い声が森に響く。依頼も無事にこなしたし、チームの絆も少しだけ深まった……気がする。


でも、次に向かうクエストには、さらに危険な敵が待ち受けていた。


ギルドからの通達はこうだった。


「至急! 王都の温泉地帯にて“爆乳温泉魔”および“美尻湯けむり団”の乱入報告あり! 対応可能なパーティは向かってくれ!」

──波乱の予感しかしない。


【続く】


第三話 混浴温泉、爆乳温泉魔VS美尻湯けむり団!


「混浴温泉だってぇぇえ!?」


王都ラブリウス南方の山岳地帯──そこにあるのが、男女問わず人気を誇る聖湯リベルティス温泉郷である。だが今、その聖なる湯に“二大勢力”が激突していた。


「ふふふ……この湯は、爆乳の力を引き出す“豊胸源泉”なのよ。貧乳派や尻派なんかには一滴たりとも渡さないわ!」


「笑わせるな! 湯けむりにこそ尻の真髄あり! この“美尻湯けむり団”が全湯制覇させてもらう!」


その戦場へ、俺たちはギルドからの要請で向かっていた。


「というわけで、ユウトくんたちには、この“爆乳温泉魔”と“美尻湯けむり団”の抗争を止めてほしいんだよね~」


ギルド受付嬢・マーニャさん(安定の無乳)が笑顔で依頼を出してくる。


「いや、規模がデカすぎるだろ……」


「……でも、行くしかないわね。巨乳の名誉のためにも!」


「同感。温泉に尻を沈める快楽を、貴様ら平胸派には教えてやらねばなるまい」


それぞれの意志が強い。やる気はすごい。でも俺の胃はキリキリする。


* * *


リベルティス温泉郷は、美しい山の風景の中に湯けむりが立ち上る秘境のような場所だった。湯屋の奥、源泉地帯へと進むと──すでに戦は始まっていた。


「ぬおぉぉお! この圧倒的なバスト波動……!」


「くくっ、まだまだよ。見て、この揺れッ! これが“爆乳温泉魔”団長、ラナ=グラッセの真骨頂!」


目の前に立ちはだかったのは──身長190cm・バストZカップ(たぶん)の超巨乳美女。全身をタオル一枚で包み込み、毎秒5cm揺れている。


「私の胸の中で眠りなさい……♡」


「ギャアア! 桜ちゃんの胸と比べたら、ちょっと……いや、でかすぎて怖い!」


「なんだとぉ!? それならこちらを見ろ!」


今度は対抗勢力──美尻湯けむり団のリーダーが現れた。


「私はモナ=ビュティア! この世界に“ぷりけつ正義”を広めるために湯けむりの中で鍛えた女!」


見るからに引き締まった太ももと、完璧な桃型ヒップ。足を踏み出すたびに湯気すら形を変えるそのお尻は──もはや芸術。


「ふふ……お前の中途半端なバランスに、我々は判断を下さねばなるまい」


「うわ、バランス派差別だ!?」


ラナとモナの視線が俺に集まる。


「では、どちらが上か──貴様に証明してもらう!」


「異世界のバランサーよ、見極めなさい。胸か尻か、真に優れているのはどちらかを!」


「いや! それは俺にとって最大のタブーなんだって!!」


──が、問答無用で始まる。


* * *


「“爆乳爆風ばくにゅうばくふう”!」


「“尻断衝撃けつだんしょうげき”!」


源泉が吹き飛び、湯けむりが舞い、タオルが宙を舞う。


その中で、桜と命も加勢していた。


「ユウトくんのために! 私、もっともっと胸で応えたいっ!」


「こっちだって! あんたの尻があれば、この戦場も制圧できるって証明してやる!!」


激戦のさなか、温泉のエネルギーが高まり、突然、**“結界”**が展開された。


「なに……!? これは……」


女神の声が聞こえた。


《……おめでとう、ユウト。ついに“胸湯結界”と“尻湯結界”が同時に発動したわ。これはつまり──“合体技”のチャンスよ》

「合体技!?」


《うん。“バランス属性”のあなただけが発動できる“超越融合技”──それを、今こそ使う時……!》

「お、おおおおお!!」


俺は叫んだ。


「“究極融合──おむねケツ・ファイナルブレイク”!!」


胸と尻、それぞれの加護を宿した桜と命が俺の両脇に立ち、気を放つ。


「ユウトくん、私たちの想い、受け止めて!」


「いくぞ、変態バランサー!!」


三人のエネルギーが合わさり、湯けむりが光に変わり──ラナとモナを包み込む!


「「う、うわぁぁぁあっ!!」」


大爆発とともに、温泉全体が金色の泡に包まれた──


* * *


数時間後、温泉郷は平和を取り戻していた。


「ラナさん、モナさん。少しは落ち着いてくれた……?」


「……ええ。あの技で、ちょっと目が覚めたわ」


「“どちらが上か”を決めるより、互いに磨き合うことが大切だったのね……」


巨乳と尻が手を取り合う──異世界の奇跡、ここにあり。


「さすが、バランス属性の使い手だね~♪」


ギルドのマーニャさんがやって来た。いつの間にかちゃっかり温泉に浸かっている。


「ふたりとも……本当にありがとうな」


「ふふ、でもユウトくん」


「次の冒険では、もう少し“私だけ”を見てね?」


桜が微笑む。


「……今度こそ、尻の良さを決断させてやるからな」


命がニヤリと笑う。


「ま、まだ選べねえ……でも、最高だよ、この異世界」


俺の旅は続く。胸と尻のはざまで揺れながら──


【続く】


第四話 王都決戦!微乳の刺客と胸尻武術大会!


胸と尻が手を取り合い、平和が訪れた──と思ったのも束の間。


俺たちが王都ラブリウスに帰還すると、冒険者ギルドの前に人だかりができていた。貼り出された巨大なポスターには、こう書かれていた。


《第一回・胸vs尻 武術大会──優勝者には“神の加護”を授与!》

「……なんだこれ」


「ふふ、面白そうじゃない?」


桜がにっこり微笑む。が、隣の命はさらに真剣な顔をしていた。


「やっと“決着”をつける舞台が現れたな……!」


いやいやいやいや、決着とかつけるなよ!!


「俺の意思は!? 俺の平穏な異世界ライフはどこ!?」


「バランサーなら、審判として参加するのが当然よ。なにせ──」


「君の言葉が、世界を揺るがすからね」


突然現れたのは、黒い修道服に身を包んだ女性だった。身長は低め。華奢な体つき。胸……というか、胸がない。完全なる平坦。まさに壁。


「……誰?」


「私は佐藤桃子。“平胸教団”の代理人。そして、今回の大会の主催者」


「まさかの主催者!?」


しかも名前、明らかに日本人だし!


「“胸”と“尻”ばかりが評価されるこの世界に、一石を投じたいの。今こそ、“微乳の美学”を広める時」


「おい待て、勢力がもう一つ増えたんだが!?」


「心配はいらないわ。胸派、尻派、そして平胸派。三すくみでこそ、真の戦いが生まれる」


桃子は冷静に言い切った。こいつ……ただ者じゃない。


「とにかく、私たちも大会に出るわよ!」


「優勝して、“最も魅力的な属性”だって証明する」


かくして、俺たちは“胸vs尻vs平胸”の武術大会へ参戦することとなった。


* * *


大会当日。王都の中央闘技場は観客で埋め尽くされていた。


「胸派ーーーっ!!」


「尻派ァァァア!!」


「貧乳こそ神ィィィ!!」


わけがわからない盛り上がりである。


俺は中央席で“バランサー枠”の審判ポジションを担当。手には、なぜか女神印のフラグが2本。「巨乳」か「尻」かを判定できる仕組みらしい。暴動の原因にならないかこれ。


そして、ついに開幕戦──


「第一試合! 巨乳代表・天宮桜 VS 美尻代表・黒崎命!」


「ええぇぇええっ!? 仲間割れじゃねーか!!」


「胸こそ正義!」


「尻が世界を救う!」


二人は全力だった。


「“揺波・母性突風ゆうは・ぼせいとっぷう”!」


「“尻弾・桃花裂破しりだん・とうかれっぱ”!」


激突する揺れと揺れ。観客席が波打つほどの衝撃波。


しかし勝負は──ドロー。俺がどちらの旗も振れず、場が騒然となったためである。


(無理だろこんなの選べるかよ!!)


続く第二試合は──


「平胸教団代表・佐藤桃子 VS 巨尻流の使い手・ダンプ=ヒュンケル!」


「胸は邪魔。尻は甘え。私に不要なものなどいらない」


「その言葉、尻に刺さるぜぇ!」


桃子の武術は異常だった。


「“無のゼロパーム”!」


彼女の技は、胸や尻を的確に“無視”することで気配すら読ませない。


「うおっ!? この女、どこにいるかわかんねぇ!」


「……存在感が希薄すぎて、逆に強い!!」


圧倒的な静寂の中、桃子はヒュンケルを圧倒。勝利を収めた。


「こ、これは……!」


観客の多くが困惑しながらも拍手を送る。


「胸や尻がすべてではない。そう……“無”こそ、究極のセクシー」


「おい、あの思想が広まると世界が滅ぶぞ!?」


もはや単なる大会ではない。これは──性の価値観を賭けた大戦争だ。


* * *


「決勝戦──天宮桜 VS 佐藤桃子!」


「ついにこの時が来たわ……!」


「胸に勝つためだけに修行してきたんだから、負けるわけにはいかないの!」


桃子の眼には炎が宿っていた。


「いくよ──“零乳羅刹拳れいにゅうらせつけん”!」


「私だって……私だって! “愛されバスト・インフィニティ♡”!!」


桜の全力愛バーストと、桃子の冷酷なる無の武術が激突する。


そして──


「……決着だ」


両者が膝をつく。勝敗は──


「審判、ユウトくん。あなたが選んで」


「そうよ。どっちが、魅力的だったか」


俺は……俺は……!


(この戦いに、正解なんてない。だけど──)


手にした旗が、どちらにも振れず、空中で揺れる。


その時、俺の心に響いたのは──あの女神の声だった。


《ユウト、あなたは“選べない”ことが、最大の力なの。だからこそ──》

俺は叫ぶ。


「勝者は……全員だッ!!」


観客席が一瞬静まり返り──


「なん……だと……」


「“選べない”という選択肢が……あったのか……!」


そして、爆発的な歓声が巻き起こった。


「巨乳も!」


「尻も!」


「貧乳も!!」


「全部、最高ォォォオオオオ!!!」


世界が、揺れた。


* * *


大会後、桜・命・桃子の三人は、俺のパーティに加入した。

なぜか、三属性パーティになってしまった。


「これからは私も旅に同行させてもらうわ。あんたのその中立性、興味あるの」


「へ、変な気起こさないでね!? 私はユウトくんの“胸”担当なんだから!」


「私は“尻”。アイツが微乳アピールしてきても、惑わされるなよ」


──俺は思う。


やっぱり、選べないってことが、最高の幸せなんじゃないかと。


【続く】


第5話 聖女とくノ一と、温泉の密談

「ふぅ〜……命ちゃんって、肩、柔らかいねぇ……」


「……だから触るなと何度言えば分かるのだ、光よ!」


夜の宿屋、二階の女子部屋。そこは穏やかな月明かりが差し込む一方で、ある種の騒がしさが充満していた。


「だって、見てるだけじゃつまらないじゃん? こういうのは体感しないと♪」


「そもそも何を体感する必要がある!? 我が平らな胸に何のロマンがあるのだ……!」


「ううん、命ちゃんはその――スラリとした背筋と、しなやかな肩甲骨ラインがね……これはもう、美だよ、美!」


「美じゃない! それは忍としての鍛錬の成果! 変な意味で誉めるな!」


そんな騒がしいやりとりを、部屋の隅から桃子はため息混じりに眺めていた。


(……温泉入っても、落ち着かないなぁ)


今日の宿には立派な温泉があり、パーティ全員で汗を流すという“異世界ファンタジーらしいイベント”が発生したのだった。だが、そこでも当然のように「胸派」vs「尻派」のバトルは勃発し、まるで湯気の立ちこめる戦場だった。


(火花じゃなくて、蒸気とオーラが交差してたもんなぁ……)


思い出すだけで疲れる。特にあの二人――桜と凛のバトルは、入浴中とは思えぬほどの迫力だった。


「さぁさ、背中流しますよ〜♡ 桜ちゃんの背中、ふんわりあったかそう♡」


「ちょ、な、何で光さんが!?」


「うふふ、女の子同士だから、恥ずかしがらないで? ん〜っ、この柔らかさ……まさに“慈愛の谷間”……!」


「やめてええええええええ!!」


その光景を、凛が遠くから半泣きで睨んでいたのも印象的だった。


そして今、桃子の隣にいるのは――その凛本人である。


「……疲れたわ」


「お疲れさま。まあ、色々あったしね」


凛は髪を下ろして、ややぼんやりと天井を見ていた。


「ねえ、桃子。あんた……私の胸のこと、どう思ってる?」


不意打ちのような問いだった。桃子は眉をひそめたが、すぐに答える。


「私は、胸より人間性を見る派かな」


「……それって、誤魔化してるだけじゃない?」


「ちがうよ。ただ、凛は凛で、格好いいと思う」


「……どこがよ」


「たとえば、剣を振るときの立ち姿とか。胸とか尻じゃなくて、“自信”がある感じする」


凛は少し驚いたように桃子を見ると、照れ隠しのようにそっぽを向いた。


「……ふん、そういうこと言うと、調子に乗るわよ?」


「いいよ、たまには調子に乗っても」


「……ありがと」


小さな笑みが、凛の口元に浮かぶ。


そして、その夜。


桃子は一人、宿の廊下を歩いていた。何かの気配を感じて。


「……誰か、いる?」


すると、廊下の先に、黒い影が現れる。


「ふふ……気配を感じるとは、さすが桃子殿」


「命……? 何してるの?」


「忍の嗅覚は、昼も夜も変わらぬ。少し、耳を貸してほしくてな」


彼女の口調はいつになく真剣だった。桃子は黙って頷き、二人は中庭の縁側に腰を下ろした。


「……話って?」


「明日、王都に着く。そこには“尻教団”の拠点があると、密偵からの報告があった」


「尻教団……」


「我らが戦っている相手、“選別の審判者”たち。彼らがどうやら王家の中枢にも影響を及ぼしつつある」


「まさか、王都が?」


命はゆっくりと頷いた。


「この戦いは、ただの“胸か尻か”の論争にあらず。異世界の思想、文化、そして存在の価値観が問われる“審判”……桃子殿、そなたはどこに立つ?」


「私は……」


桃子は言葉に詰まった。彼女自身、未だに自分が“胸派”なのか“尻派”なのか分かっていない。


「私は、まだ迷ってる。でも、一つだけは言える。みんなで笑って旅ができるなら、それでいいと思ってる」


「……その言葉、しかと胸に刻んだ。いずれ、真実の選択を迫られる日が来ようともな」


その時、背後で声がした。


「――あらあら、深夜に女子同士の密談なんて、うふふ、私も混ぜてほしいわね♪」


振り返れば、白い寝間着に身を包んだ九条光が、月光を背に微笑んでいた。


「光、貴様、また盗み聞きか!」


「ううん、ただの偶然よ。……でも、明日は覚悟しておいた方がいいわね」


「何が?」


「“尻教団”だけじゃない。“胸の審判者”も、動き出してるみたいなの」


「なに……!?」


三人の影が、静かに交錯する。


異世界の夜が、深く、そして不穏に揺れ始めていた。


続く



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