第88話 1回戦第1試合
今回の模擬戦大会の参加者は下記の16名となっている。
シーラ、ベルベット、蓮、美香、唯、将司、ルーア、ポーシャ、ロイス、ロッゾ、ライム、スレッド、マッシュ、モージ。
更に、推薦枠のジョエル、ブリタニー。
そして、1回戦第1試合は蓮さん対ルーアさんとなっている。
勇者パーティの中でのリーダー格である蓮さんが、初戦からの登場となった。
まぁ優勝候補である蓮さん達は、シードとしてそれぞれ違うブロックに組み入れているため、誰かしらが初戦で登場することは決まっていた。
こちらの世界に来て日が浅いとはいえ、話を聞く限りでは抜きん出て実力が高い印象があるからね。
対抗馬であるドニーさんが欠場した今大会では、蓮さん達の誰かが優勝する可能性が高いと私は思っている。
そんな圧倒的優勝候補に対するのは、ルサンソ王国の元騎士であるルーアさん。
実力は完全に未知ではあるんだけど、初対面がボロボロの姿だったこともあって、そこまで強くないのではと私は思ってしまっている。
ただシーラさんの話では、ルサンソ王国には『ルサンソ騎士団』という名実共に優れた騎士団があるとのこと。
その騎士団に所属していたのであれば、ドニーさん以上の強さを持っていても不思議ではないと言っていた。
ルサンソ王国の騎士なら、『ルサンソ騎士団』に属している可能性の方が高いだろうし、もしかしたら初戦から番狂わせがあるかもしれない。
私はワクワクしつつ、初戦の戦いを見学することにした。
「蓮とルーア。互いに準備はいいな」
「俺はいつでも大丈夫。スキルの使用はありなんだよな?」
「ああ。ただし、重傷を負わせた場合は即失格となるから気を付けろ」
「分かってる。ルーアさん、良い試合にしようぜ」
「勇者と戦えるのは光栄だ。どうぞお手柔らかに頼む」
蓮さんとルーアさんが握手を交わし、それから間もなくして武器を構えた。
今回は安全面を考慮し、木の武器を使うことになっている。
蓮さんは木の片手剣、ルーアさんは木の槍を装備しており、構えの雰囲気でいうとルーアさんの方が洗練されていて強そうに見える。
「それでは――始め!」
ドニーさんの合図と共に動き出したのは蓮さん。
スキルを使っている雰囲気はないけど、とにかく動きが速い。
対するルーアさんはどっしりと構えており、隙がないどころか一発を狙っている――そんな雰囲気すら感じる。
これは激しい攻防の面白い試合が見られそうだ。
私は目を輝かせて勝負の行く末を見守っていたのだけど……私の期待に反し、試合はあっさりと終わってしまった。
試合を決めたのは一発を狙い続けていたルーアさん——ではなく、多彩な攻撃で圧倒した蓮さん。
試合開始から飛び込むまでは普通の動きだったんだけど、ルーアさんのカウンター気味の突きの回避から、蓮さんの動きのギアが三段階くらい一気に上がったのだ。
黄色いオーラのようなものを身に纏っていたし、恐らく何かしらのスキルを発動させたのだと思う。
そこからの蓮さんの連撃は本当に凄まじく、槍の距離を取り直そうと逃げるルーアさんを逃がさず、懐に潜り込んで有効打を3発浴びせて試合終了。
私が期待していた激しい攻防が繰り広げられる試合ではなかったものの、両者共にレベルの高さを魅せてくれた面白い試合だった。
「――試合終了。勝者は蓮」
「よしっ、やったぜ。ルーアさん、ありがとな。怪我はしてない?」
「ああ。怪我はしていないが……強さに驚いたな。腕にはそこそこ自信があったんだが、何もさせてもらえなかった」
「そんなことはないぜ? 突きはギリギリで回避した形だったし、次は確実に当てられると思って、突きを打たせないような立ち回りを取らされたから」
「そう言ってくれるのは嬉しいが、やっぱり悔しいな。蓮、私の分も優勝してくれ」
「ああ、任せてくれ。必ず優勝する」
そんな会話の後、蓮さんとルーアさんは固い握手を交わした。
その光景に、私も含めてみんなが賞賛の拍手を送る。
みんなの雰囲気も良いし、初戦から本当に楽しい良いイベント。
何より私が参加しなくていいというのが気楽だし、模擬戦大会は絶対に恒例行事にしたいな。
そして続く第2試合は、キャットメイジのモージ対元冒険者のロイス。
農作業でも大活躍だし、事前の評価では圧倒的にモージ優勢だったのだが、試合の結果はロイスの勝利。
午前中の農作業でМPを使ってしまっていたことが主な敗因であり、試合の序盤は魔法を使って優位に立っていたモージだったけど、魔力切れを起こしてからは防戦一方。
あと一発攻撃を当てることができればモージの勝利だったのだが、地力の強さを見せたロイスさんの勝利で試合は終わった。
まぁモージが何とか一発当てて勝っていたとしても、続く2回戦では不戦勝だったろうしロイスさんが勝って良かったと思う。
ただ、今の試合を見た限りでは、蓮さんに勝つのは難しいというのが率直な感想。
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