第87話 推薦された二人
弱そうという感想しかないんだけど、このジョエル君はドニーさん曰く、王国騎士団に入団した中でも最年少記録を更新した天才らしい。
ただ、自信が持てていないせいもあってか、今のところパッとしないと言っていた。
何かのきっかけにならないかってことで、今回の大会に参加させたみたいだけど……勇者も参加している訳だし、身内大会とはいえレベルはトップクラスに高いからなぁ。
1回戦負けを喫して、更に自信を失ってしまわないかは不安なところ。
「自信を持ってください。気楽にのびのびやればいいんですから」
「……はい! 僕なんかに声を掛けてくださり、本当にありがと――」
「おい、ジョエル! 絶対に優勝しろよ! 佐藤の賞品は何が何でもほしい! お前に懸かっているからな!」
「うぅ、ドニーさん! 僕、自信ないですよぉ……」
せっかく良い感じだったのに、会話に乱入してきたドニーさんのせいでまた俯いてしまった。
私は軽く睨みつけるも、ドニーさんはよく分かっていなさそうな顔をしている。
ジョエル君が自信を失っているのは、ドニーさんのせいなのではと思い始めたが……考えても仕方がない。
後でコソッとドニーさんには対応に気を付けるよう伝えるとして、私は2人とは別れ、シッドさんが推薦した人とも話をしに向かった。
今シッドさんとロッゾさんの2人と話しているのが、今回推薦で来た人物のはず。
背が小さく、恐らくロッゾさん達と同じくドワーフ族である女性の方だと思う。
「ロッゾさん、シッドさん。その方が今回参加して頂ける方ですか?」
「ああ、そうだ。俺の代わりに参加してもらう――俺達の妹、ブリタニーだ」
「あんたが佐藤かい? 兄貴たちがお世話になっているみたいだね。今回はよろしく頼むよ」
ドワーフ族だとはパッと見で分かったけれど、まさかロッゾさん達の妹だとは思わなかった。
年齢はまだ30代前半って感じだし、何よりお二人とは似ても似つかない美形。
口調は確かにロッゾさんやシッドさん味を感じるけど、妹と紹介された今でも信じられない。
「妹さんもいらっしゃったんですね。なんというか……似ていなくて驚いています」
「あっはっは、アタシは母親似で兄貴たちは親父似だからね。親父に似ていたらこの顔だったと思うとゾッとするよ」
「おい! 親父にも俺達にも失礼だろ! ……うーん。中々にイカしている顔だと思うんだけどなぁ」
「顔の話はもういいだろ。とりあえずブリタニーは冒険者をやっているから、戦いの腕には期待していいぜ。……まぁ勇者たちが参加するとは聞いていなかったから、優勝できるかは怪しいところだがな」
「勇者だろうがワタシは勝って見せるよ。強いといってもまだ坊ちゃんみたいだからね。先輩としての実力を見せつけてやるさ」
そう言って胸を叩いたブリタニーさん。
体が小さい割に胸が大きく、視線に困ってしまうが……とにかく頼りがいがある。
ロッゾさんたちの妹ということだし、実力は確実にあるはず。
というか、誘っておいて何なのだが、私はロッゾさんの方が心配。
「ブリタニーさんの実力は疑っていないんですが、ロッゾさんの方がかなり心配です。誘っておいてアレですが、鍛冶師ですし年齢的にも結構厳しいですよね?」
「おいおい、佐藤さん! 俺をあんま甘く見るなよ! 自分で打った剣を確かめるために戦闘は頻繁に行っているし、欲しい鉱石や素材がありゃ俺自ら取りに行くことだってあるからな!」
「そうなんですか? すみません。てっきり戦えないのかと思っていました」
「このぶっとい腕を見てみろ。シッドとは違って、俺は見せ筋じゃねぇからな!」
「おい、俺だって見せ筋なんかじゃねぇぞ。ちゃんと現場で鍛えられた筋肉だ」
何故か筋肉を見せつけ合うという兄弟喧嘩が始まってしまったが、とにかくロッゾさんは戦えるようだ。
実力は未知なことに変わりないけど、最近も戦闘自体は行っているようだし、期待してもいいのかもしれない。
他の人達とも話をしたいところだけど、それは大会が終わってからでいいだろう。
トーナメント戦とはいえ、今回は16人も参加しているため、1回戦で8試合。
2回戦で4試合、準決勝で2試合、決勝で1試合の計15試合を行わないといけない。
エキシビションマッチでドニーさんが戦うとなったら16試合になるし、滞りなく進めていきたいところ。
ということで、早速1回戦の第1試合を行うべく、試合会場に呼び込むことにした。
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