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第85話 クロサワからの届け物


 3週間が経過し、予定している模擬戦大会まであと1週間を切っている。

 声を掛けた人たちはみんな参加を表明してくれ、更にロッゾさん推薦の人物が1名、ドニーさん推薦の人物が1名参加してくれるらしい。


 戦える人が16人は確定で集まりそうだし、一応トーナメント形式を予定している。

 トップ3に入った人には賞品も用意しているため、きっと全力で戦ってくれるはずだ。


 模擬戦大会後に用意する予定の料理の方も順調そのものであり、2週間ほど前辺りから日本の作物が収穫できている。

 スキルの畑ではなくとも育つことが分かってホッとしたし、何よりNPの節約になるのが大きすぎる。


 シッドさんが作ってくれた食在庫のお陰で腐らずに保管できているため、当日は腕によりをかけてご飯を作る予定。

 ただ、少し不安なのは今回は参加人数が多すぎること。


 16人以上が集まるとしたら、私一人だけで賄えるのか微妙なラインのため、王都からノーマンさんを招集することも視野に入れている。

 大衆食堂で働いているため、来られるかは微妙なラインだけど……日本の食材を扱えると聞いたら、来てくれるのではないかと思っているんだよなぁ。


 私は実力的に模擬戦大会には参加する予定はないため、来てくれなかった場合はみんなが戦ってくれている間に頑張って料理するだけ。

 畑を広げたこともあって、この3週間でNP的な余裕は作ることができているし、まぁ何とかなる……はず!


「佐藤さん、起きてますか?」


 ベッドに横になりながら模擬戦大会のことを考えていたのだが、珍しく部屋の外からシーラさんが声を掛けてきた。

 そろそろ起きようと思っていたタイミングではあったけど……何かあったのだろうか。


「起きていますよ。どうかしましたか?」

「王都から荷物が来まして、佐藤さんが応対してくれ——とのことなんです」

「荷物ですか? いつも食料ではなく?」

「ええ。王城からではないみたいですね」


 何か買ったとかもしていないし、思い当たる節が何もない。

 私は首を傾げつつも、外へ出て荷物を受け取ることにした。


「佐藤さんですね。ここに受け取りのサインをお願いします」

「分かりました。……あの、この荷物は誰からなのでしょうか?」

「クロサワ様からですね」


 クロサワ……?

 名前を聞いても思い当たる節はないけど、もしかしたら黒沢かもしれない。

 そうなると、蓮さんたちの誰かの苗字である可能性は非常に高いな。


「ありがとうございました。お疲れさまです」


 運んできてくれた方にお礼を伝えてから、大きな麻袋を受け取った。

 かなりの重さであり、中身が非常に気になったため覗き見たのだが……中に入っていたのは大量の魔力塊だった。

 それと手紙も入っており、煤けてしまっている手紙を取り出し読んでみることにした。


 送り主はやはり蓮さんであり、どうやら来週の模擬戦大会のため、ライムたちに魔力塊を使ってあげてほしいという旨が書かれていた。

 スレッドは進化したが、マッシュは進化していないし、ライムも未だにダークスライムのまま。


 暗い時間帯でしか動けないスレッドが参加できない可能性が高いことからも、この魔力塊は非常にありがたい。

 手紙に向かって頭を下げながら感謝をしつつ、私はすぐにシーラさんに報告したのだった。



 朝食を食べた後、早速ライムたちに魔力塊を与えることにした。

 まずはマッシュを進化させることを目標に、マッシュ中心に与えてみる。


 進化しない種である可能性もあることから、残り半分になるまで与えてみるつもり。

 マッシュは何かと不憫なため、どうにか進化させてあげたいけど……どうだろうか。


「佐藤さん、マッシュを連れてきました」

「ありがとうございます。マッシュ、蓮さんから魔力塊が送られてきたのですが食べますか?」


 私がそう声を掛けると、マッシュは勢いよく何度も首を縦に振った。

 進化したいという気持ちはあるようだし、後は魔力塊を摂取して進化してもらうだけ。


「マッシュの意思を確認できて良かったです。それでは遠慮なく食べてください」


 厳選してくれたのか、今回送られてきた魔力塊は質の高いものばかりに思える。

 これならば、進化する可能性が高いかもしれない。


 私は黒々とした魔力塊を1つずつ手渡していき、マッシュはそれを美味しそうに食べている。

 ライムも美味しそうに食べているし、魔力塊は美味しいのかもしれない。


 少し味見してみたい、美味しそうにしているマッシュを見てそんなことを考えていると――マッシュの体が光り輝き始めた。

 まだ5個目とかなり早い段階。


 私は期待しながら見守っていると……体が一回り大きくなり、傘の部分が黄色くなった。

 スレッドほどの大きな変化はないものの、ライムよりも変化はしているため、確実に進化したと見ていいはず。

 これまで割と不憫だったし、進化しない種族とかではないことが分かって、何だか私まで嬉しくなる。


「マッシュ、無事に進化できたみたいですね。体の調子はどうですか?」


 大丈夫と返事をするように、体をブンブンと動かし始めた。

 体のキレも上がったように見えるし、模擬戦大会でも期待ができるかもしれない。


「シーラさん、マッシュは何の魔物に進化したか分かりますか?」

「実際に対峙したことはないので確定とは言えませんが、パラライズマタンゴだと思います」

「パラライズということは、麻痺系の攻撃が使えるようになったということでしょうか?」

「そうですね。パラライズマタンゴは敵を痺れさせる胞子を使って攻撃する魔物です。マタンゴだった時よりも胞子が強力になったと考えていいと思いますよ」


 これは楽しみではある。

 模擬戦大会で使ってもいいか許可を出すかは微妙なラインだけど、調整できるのであれば軽く痺れさせるぐらいならありにしてもいいかもしれない。


 とりあえずマッシュが進化してくれたし、残りの魔力塊はクロウとモージを中心に与えつつ、ライムにも与えていいかもしれない。

 ライムもダークスライムに進化してから、何の音沙汰もないからな。

 マッシュ同様にそろそろ進化するんじゃないかと私は睨んでいるんだけど……こればかりは与えてみないと分からない。



お読み頂きありがとうございます。

お知らせとなるのですが、本作の書籍化が決定致しました!!

更にコミカライズ企画も進行中でして、本当に応援して頂いている読者様のお陰です<(_ _)>ペコ

書籍版、コミカライズ版では更にスローライフ度、優しさ120%、シーラさんやライム達を少しでも魅力的に描く予定ですので、まだ先になりますが発売された際には是非お手に取って頂けたら幸いです!!

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