第84話 催し物
防護柵を作った日から、約1ヶ月が経過した。
シッドさんが建ててくれると言っていた食在庫は出来上がっており、更におまけで酒蔵まで建ててくれた。
酒蔵に関しては、完全にシッドさんとロッゾさんの趣味だろうけど、実は私もお酒は嫌いではない。
この世界に来てからは自然と禁酒状態ではあるけど、働いていた頃は結構飲んでいた。
といっても、嫌なことを酒で誤魔化していたっていう感じでもあったため、本当に好きだったのかどうかは今となっては怪しいところ。
飲めることには飲めるし、この世界の酒がどんなものなのか飲んでみたい気持ちはある。
酒に関してはどこの世界も変わりないと思うからね。
……と、酒の話は置いておいて、建ててもらった食在庫が凄まじい。
ロッゾさんの謎技術により、食在庫の室温を自由自在にコントロールすることができるのだ。
水晶のようなものを操作することで室温を変えることができるのだが、魔力で動いているということ以外は仕組みが一切分からない。
大衆食堂で見た食在庫よりも完全に機能が上で、今は完全に宝の持ち腐れ状態となっている。
日本の技術の方が優れていると思っていたけど、こちらの世界のファンタジー要素には驚かされることが多い。
魔動だから、電気代のようなものがかからないって話だしね。
……まぁその分、動かす時は毎日魔力を込めないといけないらしいんだけども。
いつかは発電機ならぬ、発魔機が欲しいところだけど、私は技術者ではないから難しいかもしれない。
大きな変化といえばこんなものだろうか。
後はベルベットさんとドニーさんが遊びに来たり、モージの活躍が素晴らしかったりした。
NPも順調に貯めることができてはいたんだけど、つい先日スキル強化で畑を広くしてしまったため5000NPほどと結構カツカツ。
私とシーラさんは手持ち無沙汰になっていたし、畑の拡張は絶対にするべき案件ではあったから仕方はないとはいえ、そろそろ豪遊をしたいとは思っている。
ちょくちょく日本の料理は食べているけど、クリスマスパーティーから豪遊らしい豪遊はしていないからなぁ。
甘いものも節約していて食べていないし、近々何かしらの催し物を開催してもいいかもしれない。
私の一存だけでは決められないため、シーラさんに相談してみるとしよう。
「いいですね! 私は大賛成です!」
「えっ、そんな二つ返事で大丈夫なんですか?」
「もちろんです! 私も佐藤さんのデザートが食べたくてうずうずしていましたから!」
催し物の件をシーラさんに相談するなり、二つ返事で了承してくれた。
渋る予想をしていたんだけど、シーラさんは日本の料理には目がないから、この反応が当たり前といえば当たり前か。
「そういうことでしたら開きましょうか。ちなみに……何かこの時期に行うイベントみたいなのはありますか?」
日本でいうと、お花見とか新年度が行事としてある時期。
ただ、桜はもちろん咲いていないし、新年度って感じも一切しないからな。
「うーん、特にありませんね。……あっ! 王都ではないんですが、グレイラン王国の三大都市の一つである、キレラキラの街で王国武闘会が開かれます。私も何度か参加しようと思ったぐらいですし、かなり大きなイベントだと思いますよ」
「武闘会ですか。……面白そうですね。こちらも第1回模擬戦大会をやりますか」
忘れていたけど、日本でも運動会はこの時期に行われる。
参加者の候補もほどよく増えているし、結構盛り上がる大会になりそう。
「いいと思います! 模擬戦大会を行った後、異世界料理パーティーの流れは想像するだけで楽しくてニヤニヤしてしまいますもん!」
「シーラさんが賛同してくれて良かったです。それじゃ知り合いの方に声をかけておきますね。開催は……1ヶ月後くらいがちょうどいいでしょうか?」
「そうですね。農業を頑張ってNPを貯めつつ、模擬戦大会に向けた準備も行っていく――って感じでいいと思います」
「それでは1ヶ月後を目標に開催しましょうか」
こうして第1回模擬戦大会を行うことが決定した。
声を掛ける人は、ベルベットさん、蓮さん達、ドニーさん、後はロッゾさん、シッドさん兄弟。
ルーアさん達も参加するだろうし、クロウ以外の従魔達は参加したがるだろうから、これまでのお遊び的な模擬戦とは違って本格的な大会になるはず。
何かしらの優勝賞品を設けても面白いかもしれない。
そんなことを考えつつ、とりあえず農業を頑張ることにしたのだった。
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