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第72話 DVD


 年を取っているとはいえ――いや、年を取っているからこそ、実の兄弟の前でAVを流すのは空気的にも絶対によくない。

 完全に変な行動だけれど、私はこのタイミングで外に飛び出し、建物の間に入ってタブレットを操作。


 名作として一番最初に思い浮かんだ『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を購入し、再び中に戻る。

 世界観も全く違うし、お気に召すかは分からないが……めちゃくちゃ面白いし、本命はAVなのできっと大丈夫だろう。


「なんで急に外に飛び出したんだよ。この機会が爆発でもするのかとヒヤヒヤしたぞ」

「すみません。ちょっと忘れ物をしたと思ったのですが、手元にありました」

「なんだそれ! 佐藤さんの動き、完全におかしい人の動きだったからな!」

「本当にすみません。大事な場だったので慌ててしまいました。と、とにかく、これを入れれば映像が見られますので」


 何とか誤魔化しつつ、私はDVDを読み込ませる。

 DVDプレーヤーは問題なく起動し、モニターには映像が流れ出した。


「――おお、本当に映像が流れている。なんなんだこれは? どこの映像なんだ?」

「これは映画といって、物語を映像として撮ったものになります。全部観るとなると2時間くらいかかりますので、後は別の時にゆっくりと観てほしいのですが……」


 そう声を掛けたのだが、2人は肩をぶつけ合うようにしてモニターに釘付けとなっている。

 仲が悪いと聞いていたのだけど、この光景を見る限りではとてもそうは思わない。


 仲睦まじいし、このまま見させてあげてもいい気もするけど……。

 映画も含めて取引材料の一つであるため、私はDVDプレーヤーの電源を落とした。


「おーい、何をするんだよ」

「まだ見たかったのに! 一体どんな技術が使われているんだ!?」

「すみませんがここまでとなります。気に入ってくれたのであれば、こちらの機械と交換で家を建ててくれませんか?」


 電源を落としたことで本気で文句を言っているところを見るに、反応は予想以上に上々。

 AVが大本命だったのだけど、もしかしたら健全な映画だけで取引成立してしまうかもしれない。


「これをくれるってんなら……家を建ててもいいかもしれねぇ」

「なるほどな! 金好きのシッド相手に、金では買えないものを用意したって訳か! 流石はシーラと上手くやっている男だな!」

「それでは取引成立ということでよろしいでしょうか?」

「……お前さんの思惑通りに動いちまってる気がして悔しいが構わねぇ。ちなみにだが、どこに家を建てようとしているんだ?」

「王都から馬車で30分くらい離れた場所のところです」

「王都じゃねぇのかよ。……ただ、まぁ許容範囲内か」


 どうやら交渉が成立してしまった。

 せっかく用意した弾を使わず仕舞いに終わってしまったけど、ここはどう動くのが正解なのだろうか。

 更にやる気を上げさせるため、チラ見せするというのはありなのかな?


「ん? 佐藤さん、あんまり嬉しそうじゃないな! 引っかかってる点でもあるのか?」

「ええ、少しだけ考えていることがありまして……」

「おいおい、今更なしってのは駄目だぞ。交渉は成立したんだからな」

「…………決めました。シッドさんだけ、ちょっとこっちに来てもらってもいいですか?」


 私が持っていても全く意味をなさないため、ここで交渉のために使うことを決めた。

 せっかく購入したのに、もったいぶって保持したままでは意味がないしね。


 首を傾げているロッゾさんには心の中で謝りつつ、私はシッドさんを連れて店の奥の小部屋に入った。

 ここならば、気兼ねなくアダルトビデオの話ができる。


「急に連れ出してなんなんだ。ロッゾに知られたくないものでもあるのか?」

「私がといいますか、シッドさんが気まずいかと思って少し離させて頂きました。……実はですが、もう一つ交渉のネタがありまして、こちらを見てください」


 私はDVDプレーヤーにAVを入れ、再生させた。

 流れてきたのは不要なインタビュー。

 行為に及ぶまで飛ばしてから、シッドさんの反応を確認する。


「な、なんだこれは!? こんなに美人のエッチが見られるのかよ!?」

「っと、ここまでです。シッドさんが美女好きという情報を聞きまして、こちらの映像の方が好まれるかと思ったのです。もちろん先ほどの映画もめちゃくちゃ面白いですので、このDVDプレーヤーは色々な用途がある――ということなんです」

「…………欲しすぎる。絶対に譲ってくれ! というよりも、もう譲る約束はしたよな!?」

「ええ。その代わり、絶対に家を建ててください。それと、先ほどもお伝えいたしましたが、私はこの世界のお金をあまり持っていないんです。ですので、お金が貯まるまではDVDで請け負って頂けないかと思いまして……いかがですか?」

「もちろん構わねぇ! そのDVDプレーヤーとやらと、映画とエッチな映画をセットでくれるなら、立派な家を5軒は建ててやる!」


 シッドさんの目が血走っており、AVを見せた効果はてきめんといった感じだ。

 それに5軒も建ててくれるとは……想像以上。


「そんなに建てて頂けるのですか?」

「もちろん。金で手に入らない上、とんでもない代物だからな」

「そういうことでしたら……よろしくお願いします。エッチな方は追加でもう2枚差し上げますね」

「本当にいいのか!? こんな良い人を紹介してもらえたなんて……ロッゾにも感謝しねぇといけねぇな」

「ただ、1つだけ注意点があります。1回に使える時間は6時間が限度なんですよ。その度に私のところまで持ってきて、充電しないとなりませんが大丈夫ですか?」

「6時間だけか……。充電をすれば、また6時間使えるようになるのか?」

「ええ。充電さえすれば、また6時間使えるようになります」

「馬車で30分くらいの距離なんだろ? なら、全く問題ねぇ。……ちなみにだけど、その充電とやらに金はかかるのか?」

「いえ、お代は頂くつもりはございません」

「本当に太っ腹だな! うっし、久しぶりにやる気が出てきたぜ。すぐに取り掛からせてもらうから、詳しい場所を教えておいてくれ」

「分かりました。後で詳しい場所をお教えいたしますね」


 これで完璧に交渉成立。

 NPは結構使ってしまったが、家を建ててくれることを考えたら非常に安いもの。


 異世界のものは価格が30倍ということを考えても、20000NP——つまり200万円ほどの出費で家を5軒も建ててくれることになったんだからな。

 そのうちの15000NPは発電機代であり、発電機は私が保有するものだから……実質的な出費は5000NPのみ。

 

 ドニーさんの助言のお陰とはいえ、これは良い交渉ができたはず。

 作物の卸し先の目途もつき、大工さんの確保にも成功。

 出発前は不安でいっぱいだったけど、良い成果をシーラさんに報告することができそうだ。



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一日二話投稿のモチベーションとなりますので、この小説を読んで少しでも「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、ブクマと↓の☆☆☆☆☆から評価頂けましたら幸いです <(_ _)>ペコ


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お手数だと思いますが、ご協力頂けたら本当にありがたい限りです <(_ _)>ペコ

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