第71話 アダルト
ドニーさんと一緒にお昼ご飯を食べた後、私は地図を頼りに教えてもらったお店を回った。
ベルベットさんから教えてもらった情報ということもあり、1軒目からまさかの買取OKのお返事が貰え、詳しい交渉については実際の物を見て判断したいとのこと。
軽く珍しい作物があることも伝えたところ、そちらの買取も味次第では行ってくれるとのことで、早くも卸し先については見つけることができてしまった。
後は売れるまでしっかりと作物を育てるだけ。
これで大工さんの確保が駄目だったとしても、ちゃんと報告できることができた。
私は肩の荷が下りた感覚になりつつも、気を引き締め直し、ロッゾさんのお兄さんとの交渉に備える。
まずは宿を取り、人目のない部屋の中でモニター付きのDVDプレーヤーの値段を調べていく。
……ふむふむ。DVDプレーヤーが主流ではないこともあって、モニター付きであっても予想していた通りかなり安い。
とはいっても8000円ほどはするようで、NPに変換すると2400NPはする。
まぁ2400NPで家が建つと考えたら安いのだけど、これだけじゃ6時間しか持たないのが非常にネック。
発電機を購入したいところだが、この世界でも使うことのできそうなソーラー発電機は15000NPもするため、流石に躊躇してしまう。
悩みに悩んだが……ソーラー発電機は購入するが、プレゼントはせずに私が保持しておき、ロッゾさんのお兄さんには随時充電しにきてもらうって形でいいはず。
ベルベットさんと同じく、気に入ってくれたら是が非でも充電しに来るはず。
そして、別荘に充電しに来るとなれば、ついでに作業も行ってくれるだろう。
安易な考えだとは思うけど、もしロッゾさんのお兄さんを懐柔できなくともソーラー発電機は非常に有用。
損をするということはまずないため、購入してしまっていいはずだ。
私はタブレットを操作し、モニター付きDVDプレーヤーとソーラー発電機。
それから安めに取引されている旧作のAVを3枚を購入。
合計で20000NPもかかってしまったが、その大半はソーラー発電機だから許容範囲内……のはず。
NPを使ったからといってあまり過度な期待はせず、これで家が建つなら儲けものという気持ちで、私はロッゾさんのお店へと再び向かった。
「おー、佐藤さん! ナイスタイミングだぜ! ちょうど締め作業が終わって、準備が整ったところだった!」
「それなら良かったです。ちなみにですが、どこに向かうんですか?」
「この通り沿いだぞ! 歩いて5分くらいだから近い! 今日の今日だからアポは取ってねぇけど、きっとまだ店にいるはずだ!」
「そうなんですか。ご案内よろしくお願いします」
「おう! 任せてくれ!」
胸を叩いたロッゾさんに頭を下げ、私達はロッゾさんのお兄さんのお店へと向かった。
先ほどロッゾさんが話していた通り、ロッゾさんのお兄さんのお店は歩いて5分のところにあり――やけに大きな建物。
「凄い立派なお店ですね……」
「腕がいいってことで、儲かっているみたいだからな。俺も単純なモノづくりの腕自体は負けてねぇと思うんだが……如何せん、金に興味がなくて商売が下手なんだわ!」
シーラさんの知り合いだったとはいえ、初対面の私に剣を譲ってくれるぐらいのお人良しな方だもんなぁ。
今回も好意で紹介してもらったし、ロッゾさんにも何かしらのお礼をしなくてはいけない。
ロッゾさんのお兄さんが喜んでくれたら、ロッゾさんにもDVDプレーヤーをプレゼントしてもいいかもしれない。
鍛治と建築と一見正反対のように見える2人だけど、モノづくりが好きという根本的な部分は同じだし、きっと趣味自体は似ていると思うからな。
私はそんなことを考えながら、ロッゾさんの後を追って立派な建物のお店の中に入った。
お店は既に閉まっているようでガランとしており、そんなお店の奥に1人のドワーフの姿があった。
「おう、シッド! 久しぶりだな!」
「誰かと思いきやロッゾか。こんな時間にいきなり来やがって。一体何しに来やがったんだ?」
見た瞬間からそうだと思っていたが、話しぶりからしてもあの人がロッゾさんのお兄さんだろう。
筋骨隆々という点も含めて見た目は似ているんだけど、金持ち社長さんのようなファッションで、無骨なロッゾさんとは確かに違う。
私は苦手なタイプだけど、ロッゾさんのお兄さんなら性格は良い……はず。
「そう喧嘩腰になるなって! 今日はちょっと紹介したい人がいるから連れてきた! シッドに家を建ててもらいたいんだとよ!」
「ふーん……見たことない顔だな。家を建ててもらいたいって、金はあんのか? 仕事は早いし腕は一流だが、俺のところは金がかかるぞ?」
「い、いえ。お金はそんなに持っていないんですが、良い物を持ってきたのでこちらのアイテムと引き換えに家を建ててくれないかと思いまして……」
「良い物? 金目の物以外は興味がないんだが、まぁロッゾが連れてきたってことは変なものを持ってきてねぇか。見せてみろ」
もう少し挨拶のようなものを挟んでから渡すことになると思っていたのだけど、まさかの会ってすぐに要求されてしまった。
ロッゾさんの紹介ということもあって、何だかハードルが上がっていそうだし、お気に召さなかった時のことを考えると少し怖い。
……まぁ渡さないという選択肢はないんだけども。
「こちらになります」
私は先ほど購入したモニター付きDVDプレーヤーを手渡した。
見慣れないものなのか、先ほどまでの態度とは裏腹に、どう扱っていいのか分からずにオドオドとし始めたシッドさん。
「な、なんだこれ? 一体何の道具なんだよ。見てもさっぱり分からねぇ」
「録画した映像を見る機械ですね。この世界にはありませんか?」
「映像? 魔動撮影機ならあるが、写真だけだな」
「佐藤さんが持ってきたそれは映像を見られるのか!? 俺も普通に興味がある!」
シッドさんだけでなく、ロッゾさんも興味を持ったようでかなり前のめりになっている。
反応的には大正解だったかもしれないけど、シッドさんの女好きという部分しか見ておらず、AVしか購入していない。
この場で実戦できるように、普通の映画も購入しておくべきだったかもしれない。
……いや、今からでも購入するべきだろう。
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