第68話 一人での王都
ルーアさん達を受け入れてから3日が経った。
若い上に元冒険者なだけあり、3人ともに体力が凄まじい。
物覚えも早いし、あっという間に1人前の戦力になってくれた。
あと一つ気になっているのは、ルーアさん達が来てからやたら体が軽いのだ。
単純に人が増えて楽になったというのもあるだろうけど、それ以外の力が働いているような気がしてならないんだよなぁ……。
まぁ考えても分からないため、気にしないことにしているけど。
とりあえずルーアさん達が楽しそうにしてくれているのが私としては嬉しく、3人のためにもしっかりと王都で成果を上げたいところ。
「それじゃ王都に行ってきます。シーラさん、こちらのことはよろしくお願い致します」
「ええ、任せてください。佐藤さん、どうかお気をつけて」
シーラさんに見送られ、私はシーラさんが手配してくれた馬車に1人で乗り込む。
異世界に来てから初めての1人行動ということで、正直緊張しかしていないが、きっと何とかなる……はず。
背筋を伸ばしたまま馬車に揺られること30分。
緊張していたこともあって、本当に一瞬で着いてしまった感覚。
御者さんにお礼を伝えてから馬車を降りた私は、スリにだけ気をつけながら、まずは大工さんを探すことに決めた。
とはいっても、私は王都に全く詳しくない。
どこに行けばいいのかすらも不明なため、王都に以前訪れた際にシーラさんに紹介してもらった武器屋に行ってみることに決めた。
店主であるロッゾさんは無骨でありながらも優しかったし、きっと色々と教えてくれるはず。
記憶を頼りに武器屋へ向かった私は、早速店の中に入ってみることにした。
中は前回同様に蒸し暑く、薄着でも汗が滲んでくるくらいの室温。
それでもこの間と同じように、かなりの数のお客さんが入っている。
「いらっしゃい! ゆっくり――ってあれ? どこかで見た顔だな!」
店の奥から出てきたロッゾさんは、私の顔を凝視するように見てきた。
はっきりと覚えてはいないようだけど、薄っすらとは記憶に残っている様子。
「シーラさんと一緒に来て、以前この剣を譲ってもらった佐藤です」
「おー、そうだそうだ! 思い出した! 佐藤さんじゃねぇか! なんだ、今日はシーラと一緒じゃねぇのか?」
「はい。シーラさんは残って仕事をしてくれていまして、私一人で王都に来たんです」
「んー? 愛想を尽かされたとかじゃねぇよな?」
「今日も見送られてきましたので、愛想は尽かされていないと思うんですけど……」
多分、愛想は尽かされていないと思うんだけど、そんなことを言われてしまったせいで急に不安になってきた。
シーラさんに相談せずに決めることも多くなっているし、これからは気を付けないといけないかもしれない。
「がっはっは! 冗談だよ冗談! 前回の口ぶりからして、この短期間で愛想を尽かされてるってことはねぇだろ! それよりもプレゼントした剣はどうだ? いい感じに使っているか?」
「はい、毎日振っています。ただ、一向に強くなる気配はありませんけど」
「使ってくれているならプレゼントした甲斐もあるってもんよ! 強くならねぇのは知らねぇけどな!」
「頑張って少しでも強くなります。ありがとうございます」
豪快に笑っているロッゾさんに対し、私は改めてお礼を伝えた。
「それで、今日は何の用でここに来たんだ? 剣を買いに来たって訳ではないんだろ?」
「はい。実は大工さんを探していまして、ロッゾさんならこの街にいる大工さんのことを知っているんじゃないかと思って訪ねてきたんです」
「大工? そりゃもちろん知っているぜ! なんつったって、俺の兄が大工。しかも棟梁だからな!」
おお! 頼る人が王族以外ではロッゾさんしか思い当たらず、藁にも縋る思いでやってきたのだけど、まさかロッゾさんのお兄さんが大工の棟梁だったとは運がいい。
紹介してもらえれば、いきなりだけど家を建ててくれる大工さんを見つけることができるかもしれない。
「それ、本当ですか? ぜひとも紹介してもらいたいんですが!」
「紹介するのは構わないが、引き受けてくれるかは怪しいところだぞ? 兄貴は俺とは違って、一等地に店を構えているからな! 面倒くさい仕事は大金を積むか、美女の依頼しか引き受けねぇってのをよく聞く!」
「そ、そうなのですか? ロッゾさんからもお願いしてもらえたりは……」
「無理無理! 俺と兄はそもそも仲良くねぇしな! 昔から俺は武器、あいつは建物ばっかり作ってて、どっちのが良いかでよく喧嘩していたからよ! 俺の頼みでも一切聞きやしねぇ! 紹介はできるが、そこから依頼を引き受けさせるかは佐藤さんの腕次第だな!」
上がったテンションが一気に下がってしまった。
王都から離れている別荘周辺の建築は面倒くさい依頼でしかないだろうし、私は決して大金を持っている訳でも美女でもない。
NPで何とかできる方法を探るか、それとも別の大工さんを探す他ないかもしれないかもしれない。
「交渉の腕はないのですが、とりあえず紹介してもらってもよろしいでしょうか」
「もちろん! それじゃ店を閉めた後に紹介するから、夕方くらいにまた来てくれ!」
「分かりました。それではまた後でよろしくお願い致します」
私はロッゾさんに深々と頭を下げてから、お店を後にした。
今はお昼前であり、夕方まで時間はたっぷりある。
交渉の材料がないかを考えながら、食材を売る場所も並行して探そう。
初っ端から大変だけど、全て駄目でしたという情けない報告はしたくない。
必死に頭を回転させながら、私は王都の街を散策することにしたのだった。
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