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第67話 再訪


 ベルベットさんとドニーさんが王都に帰ってから、1週間が経過した。

 この1週間は4人+マッシュで植えた作物の収穫で忙しく、休む間もなく農作業の日々を送っていた。


 4人で作業を行うともちろん作業が早いのだけど、帰ってしまってからが大変になりがち。

 そんなこんなもあって、頭からとある人物のことがすっかり抜けていたのだが……その人は夜に突然訪ねてきた。


「あの……佐藤はいるか?」


 聞き覚えのある声が外から聞こえ、私が外に出てみると……そこにいたのは以前ここを訪ねて来たルーアさんだった。

 そしてルーアさんだけでなく、ボロボロの女性を2人連れている。


「ルーアさん、こんな夜にどうしたんですか? それと、その後ろの人たちはどなたでしょうか?」

「こんな時間にいきなり訪ねてきて本当にすまない。この2人は冒険者の荷物持ちをやっていた……一応冒険者だ」

「ポーシャです」

「ロイスです」


 2人はルーアさんの言葉に続くように自己紹介をしてくれた。

 荷物持ちというと、冬季のダンジョン攻略で私が行っていたような仕事だろうか。


 魔物がドロップしたアイテムや、道中に落ちているアイテムを回収する役割なのだが、こんなにボロボロになるような仕事ではなかったはず。

 ……いや、違うな。

 

 傷らしい傷を負っている訳ではなさそうだし、体や服が汚れているだけのようだ。

 このことから察するに、お金を稼げずに服を買うどころかお風呂にも入れないような状況ってことなのだろう。


「お二人は冒険者の方なんですね。ということは、ルーアさんも冒険者になれたのですか?」

「ああ。なったはなったが……待遇があまりにも酷くてな。まず女というだけで荷物持ちからスタート。仕事なんて他にないから私も渋々こなしたが、報酬が銅貨3枚だけってことにブチ切れて速攻で辞めてきた」


 酷すぎた待遇にまだイライラしているようで、言葉に怒気が混じっている。

 冒険者といえば、色々と自由な職業ってイメージだけど、ルーアさんの話を聞く限り、この世界の冒険者は私が思っているような職業ではないようだ。


「後ろのお二人も一緒に辞めてきたんですか?」

「酷すぎる待遇だったから、二人には無理を言って連れてきた。私が勝手なことをしたのに他人任せで申し訳ないんだが……この近くに住まわせてはくれないだろうか?」

「「お願いします」」


 ルーアさんが頭を下げた後、ポーシャさんとロイスさんも頭を下げてお願いしてきた。

 ルーアさんだけなら何とかなったかもしれないが、まさかもう2人増えるとなると、受け入れると即答することはできない。


 そもそも寝泊まりする場所も限られているし、ここに住んだとしてもお金を稼ぐ手段が限られている。

 人手は常に不足しているし、農業を手伝ってもらいたい気持ちはあるけど、現状だと給料を支払うことができないんだよなぁ。


 シーラさんや蓮さん達は異世界料理のみ、ベルベットさんは漫画、ドニーさんはコンタクトレンズと物で対価を支払っているが、ルーアさん達はこの世界の通貨が欲しいはず。

 だけど、私の手元にあるのは、冬季にダンジョンで稼いだ白金貨2枚だけ。


「受け入れてあげたいところですが、寝る場所が足りない状態なんです。それから、この辺りだと働き口もないんですよ」


 私がそう伝えると、絶望した表情を見せた3人。

 うー……。この表情を見てしまうと、無下に断ることはできない。


「ふ、普通に考えたらそうだよな。急に押しかけてしまってすまない」

「――ですが、泊まるところは狭い部屋。その上で農業を手伝ってもらいますが、しばらくの間はお金は支払えず、対価は食事のみ。この条件で大丈夫であれば、3人を受け入れられます」

「食事さえ何とかしてくれるなら、私達はそれで構わない! 佐藤、本当に大丈夫なのか?」

「ええ、万全な状態では受け入れられないということですので。食事のみでも我慢できるのであれば、いつでも受け入れられます」

「本当に感謝する。とりあえず、ポーシャとロイスが回復するまでお世話になりたい」

「分かりました。とりあえずお風呂に入ってきてください。私はその間にシーラさんに相談致しますので」

「分かった。遠慮なく借りさせてもらう。……佐藤、本当にありがとう」

 

 シーラさんに相談せずに受け入れてしまったため、ここからは全力で説明と説得をしないといけない。

 怒られることを覚悟しながらも、3人を受け入れたことで広がる未来に私は内心ワクワクしてしまっている。



 リビングでくつろいでいたシーラさんに事情を説明し、予想していた通り怒られてしまったが……必死の説得によって何とか分かってもらえた。

 心配で厳しく言ってくれるだけであり、シーラさんは本当に優しい人。


「ここで受け入れるのは分かりましたが……その後はどうするのですか? ずっとこの別荘で寝泊まりさせる訳にはいきませんよね?」

「ええ。ですので、近い内に王都へ行って、家を建てられる人を呼びたいと思っています」


 NPを使って簡易テントを購入することも考えたのだが、テントも優れているとはいえ家には敵わない。

 それにこの世界で賄えることは、この世界で賄った方が良いことは30倍という相場から考えても分かりきっているからな。


「むむ……大工さんを呼ぶということですか」

「そうです。後はNPだけでなく、この世界のお金を稼ぐことも本格的に考えたいと思っていますね。今のところは農業しかできませんので、3人には開墾したところに新たな畑を作って野菜を育ててもらい、その野菜を王都に売るルートを作りたいと考えています」


 前に目標を立てた通り、いずれは日本のものを推したリゾート地としてお金を稼ぎたいと思っているが、今はまだその段階に達していない。

 もしかしたら超簡易的な漫画喫茶ぐらいなら開けるかもしれないけど、今のところのお客さんはベルベットさんぐらいしか期待できないからな。


「王様からのサポートもあったので、これまでは特にお金を必要としていませんでしたが……3人に関係なく、お金はあった方がいいですもんね。それに関しては私も賛成です」

「ということですので、近々王都に行ってきたいと思います。3人の教育をして、ちゃんと仕事ができるようになったら王都に行きましょう」


 以前までは、お世話ができなかったため、全て収穫し終えたタイミングでしか外出はできなかったが、3人を受け入れたことでいつでも遠出をすることができる。

 王都くらいなら遠出とはいえないかもしれないが、それでも気軽にここを離れられるのは3人を受け入れた大きなメリットの1つだと思ったのだけど……。


「……すみません。今回、私はついていけません。受け入れたことに今更反対をするつもりはありませんが、まだ信用し切れていないというのが本心です。ですので、私は残って3人の監視兼、農作業をさせてもらえばと思います」


 まさかのシーラさんに断られてしまった。

 近い距離ではあるし、38歳なのも含めて1人で行けと言われたらそれまでだけど、異世界となると未だに少し不安。


 ……ただ、許可も取らず勝手に受け入れた訳だし、ここは私一人で王都に行って交渉してくるべきだろう。

 治安が悪いと言われている異世界だけど、王都はまだマシなように見えたし大丈夫……なはず。


「……分かりました。不安がないと言ったら嘘になりますが、1人で王都に行けるようになった方がいいとは思うので、今回は1人で王都に行ってきたいと思います」

「お願いします。何かあれば、王様かベルベット様に相談して頂ければ、きっと助けてくれると思いますので」

「はい。王都にはドニーさんもいますし、何かあれば助けてもらいます!」


 少し想定とは違ったけど、初めての1人ということで少し楽しみな部分もある。

 ……まぁ圧倒的に不安の方が大きいけど。


 ただ、これまで全てシーラさんに任せっきりにしていたし、色々な意味でもこれは良い機会だと思う。

 3人が慣れてからのため、もう少し先にはなると思うけど、今からしっかりと準備をしておこうと思う。



※作者からのお願い


一日二話投稿のモチベーションとなりますので、この小説を読んで少しでも「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、ブクマと↓の☆☆☆☆☆から評価頂けましたら幸いです <(_ _)>ペコ


つまらないと思った方も、☆一つでいいので評価頂けると作者としては参考になりますので、是非ご協力お願いいたします!


お手数だと思いますが、ご協力頂けたら本当にありがたい限りです <(_ _)>ペコ

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