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第63話 戦いのセンス


 獲物が罠にかかるのを待っていたかのように、ドニーさんの鋭くて速くて重い一撃がシーラさんを襲った――のだが……。

 シーラさんは大きく一歩後退し、ドニーさんの攻撃を軽々と躱してみせた。


 ベルベットさん対ドニーさんの戦いを見て、どうやらドニーさんの攻撃範囲を完全に見切った様子。

 躱した後も間合いギリギリを出たり入ったりしながら翻弄し、攻撃を仕掛けてきたら避けに徹するという行動を取り始めた。


「目も、動きも良いみたいだが……避けてるだけじゃ勝てないぜ?」


 避け一辺倒のシーラさんに対し、そう挑発紛いの発言をしたドニーさんだったが、スタイルを変えるつもりはないようで剣が触れあわないまま結構な時間が流れた。

 このまま日が暮れるまで続くかとも思われた試合だったが……何かを掴んだようで、シーラさんが攻撃する素振りを見せた。


「ようやく戦う気になったか。それともスタミナ切れか?」

「スタミナ切れではありません。動きを見切りましたので、攻撃をさせて頂きます」


 そんな宣言を行ってから、これまでの距離を探るような摺り足ではなく、突っ込んでいったシーラさん。

 ドニーさんは不敵に笑いながら、急に突っ込んだシーラさんに慌てるようすもなく、完璧なタイミングで剣を合わせた。


 ドニーさんの鋭い一撃に加え、シーラさんも勢いよく突っ込んでいることから、大怪我をしてしまうのではと私は肝を冷やしたのだが……。

 そんな私の心配を嘲笑うかのように、シーラさんは急停止してドニーさんの一撃をスレスレで回避。

 そのまま急発進し、いともたやすくドニーさんの懐に潜り込んでみせた。


「チッ! 本当に見切ってたのかよ」


 常に余裕そうだったドニーさんの表情がここにきて崩れた。

 そんな表情の変化が表した通り、ここまではドニーさん優位で進んでいた試合が、懐に潜り込んだことで一気にシーラさんペースへと変わった。


 ドニーさんにとって嫌な位置を取り続け、手数重視で攻撃を繰り出しているシーラさん。

 体が大きいということは戦闘の全てにおいて圧倒的有利なものだと思っていたけど、超至近距離では小回りが利かないためか常に後手に回らされている。

 そして……ドニーさんに対策される前に、一気に試合を決めにきたシーラさんの無呼吸の連撃によって有効打を3発叩き込み、下馬評をひっくり返してシーラさんの勝利で決着がついた。


「……くっそ。……マジで悔しい。完全にやられた」

「ありがとうございました。嘘偽りなく、これまで戦った相手の中で一番強かったです」


 悔しそうに歯噛みしているドニーさんと、そんなドニーさんとは対照的に嬉しそうで清々しい表情のシーラさん。

 それにしても本当に凄い試合だったな。


「お二人共、お疲れ様でした。まさかシーラさんが勝つなんて……。本当に凄いです」

「ありがとうございます。勝ちはしましたが、ドニーさんが動かないというハンデをくれたので勝てただけです」

「いやいや、別にハンデじゃなく本気で戦ったぞ。俺は目が悪いから、近づいてくれるのを待つしかないってだけだ。……シーラ、お前何者なんだ?」

「私はただの従者です」

「だから、ただの従者がこんなに強い訳ないでしょ! まさかドニーも負けるなんて思わなかったわ! 前にも聞いたけど、なんで雑用係なんかやっていたのよ!」

「前にもお答えしましたが、色々と事情があったのです」


 ドニーさんやベルベットさんの驚きっぷりを見ても、シーラさんがめちゃくちゃ強いことが分かる。

 もう少し早くシーラさんが世間に見つかっていれば、戦闘職に就くという夢も容易く叶えられたのだと思うと、シーラさんが不憫に思えてしまう。

 ただ、そうなっていたら、私の護衛として付いてきてくれることはなかった訳だし、私にとってはありがたいことになってしまっているのも何とも言えない感情。


「ずっと強いとは思っていましたけど、やはりシーラさんはめちゃくちゃ強いんですね」

「俺もそれなりに腕に自信があるからな。既に引退したとはいえ、1対1の試合形式なら未だにトップ層以外には勝てる自信がある」


 それはそうだろう。

 体格とリーチは天賦の才を持っていて、筋力と技術もトップクラス。

 

 目が悪いという明確な弱点はあるものの、実力は最上位に位置していると模擬戦を見て私は強く感じた。

 そんなドニーさんに勝ってしまったということは、シーラさんは王国内でもトップクラスの実力を持っているということになるのか。


「お褒め頂き、ありがとうございます」

「希望があるなら、俺の方から王国騎士団への推薦も可能だぜ。それ以外ではA級冒険者パーティやクランの伝手もあるから頼ってくれて構わない。シーラはまだ若いし、田舎でスローライフを送るのはまだ早いだろ。余計なお世話かもしれないが、その腕を十分に振るうことができる環境に行くべきだ」

「ドニーさん、本当にありがとうございます。少し前の私なら飛びついていたと思います。……が、私はここを離れるつもりはありません」

「そうか。止めはしないがもったいないと思ってしまうな」

「そうでもありませんよ? そうですね……。ドニーさんにはライムとも模擬戦をしてみてほしいです」


 私はドニーさんの話を聞きながら、一人心臓をバクバクとさせていたのだが、シーラさんがあっさりと誘いを断ってくれたことにホッと胸を撫で下ろす。

 シーラさんが王都に戻ってしまう覚悟はできていたつもりだったけど、こうしてその時に直面すると、やはり行ってほしくないという気持ちが強いことを痛感させられるな。


 私が何もしていないのに心臓が痛くなっている中、シーラさんの勧めでどうやらライム対ドニーさんが行われるらしい。

 ライムも強いとはいえ、ドニーさんには流石に勝てない。


 結果の分かっている試合を見るよりも、未だにドキドキしている心臓をなんとかしないといけない。

 シーラさんに私の気持ちを悟られないようにするため、トイレを装って少し離れた場所で落ち着かせるとしよう。



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