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第60話 ボロボロの人


 クロウを従魔にしてから、害鳥がほとんど寄り付かなくなった。

 実際に狩っている姿を見ていないんだけど、クロウが目を光らせているため被害は今のところゼロ。


 ちなみにクロウに小屋は必要ないようで、別荘の横で丸くなって眠っている。

 寝ている最中も目を光らせてくれているらしく、夜の間はスレッドが活動を始めるため、畑は昼間よりも安全な状態。


 植えたモアフルが実った時にどうなるかはまだ分からないけど、この調子なら害鳥のことは考えなくても済む気がしている。

 クロウのお陰で、私はルンルン気分で朝食の準備をしていると――別荘の扉が叩かれた。

 

 クリスマスパーティー以来の久しぶりの来訪。

 ベルベットさんのような気もするし、蓮さん達のような気もする。


 どちらでも大歓迎のため、私は急いで扉を開けて招き入れようとしたのだが……。

 訪ねてきたのは、ベルベットさんでも蓮さん達でもなかった。


「すまないが、水を少し分けてくれないか?」


 見たこともないボロボロの兵士であり、死にかけといった様子のお姉さん。

 怪しさしか感じないのだけど、流石に無下にすることはできない。


「分かりました。少し待っていてください」


 私はすぐに家の中に戻り、シーラさんにボロボロの兵士が訪ねてきたことを報告しつつ、コップに水を入れて訪ねてきた兵士の下に戻った。


「こちらお水です。お飲みください」

「ありがとう。恩に着る」


 兵士のお姉さんはそう言うと、私が持ってきた水を美味しそうに飲み干した。

 まだ動けるような感じではないはずなのだが、水を飲んで少し元気が出たようで、無理やり体を起こすと頭を下げてから立ち去ろうとした。


 向かう方向は王都とは真逆。

 関わらない方が良さそうな雰囲気しかないが、このまま見過ごすことはできない。

 

「……あの、少し休んでいきますか? 応急処置くらいならしますよ」

「いや、何も持ち合わせていないから、これ以上は迷惑をかけることはできない」

「気にしないで大丈夫です。このまま死なれたら、私も寝覚めが悪いので」

「……そういうことなら、少しだけ休ませてもらってもいいか?」

「ええ、どうぞ。上がってください」


 私はボロボロの兵士を家の中に招き入れた。

 シーラさんは警戒しまくりではあるけど、ただの勘だが多分悪い人ではないと思う。


「こんな田舎なのに、凄いちゃんとしている家だな。お前が建てたのか?」

「お前というのは止めてください。私はシーラ。こちらは佐藤さんです」

「す、すまない。これからは名前で呼ばせてもらう。アタシはルーア。ルサンソ共和国で騎士をやっている……いや、やっていた者だ」


 ルサンソ共和国……この王国とは別の国から来たって感じなのだろうか。

 それと、わざわざ言い直したということは、元騎士って認識で間違っていないはず。


「ルーアさんですね。よろしくお願いします。この家は王様の別荘なんです。今はお借りしている状態でして、どうやって建てたのかまでは分かりません」

「王様の別荘……? シーラか佐藤のどちらかが王族とかなのか?」

「いえ、私は異世界人なんです。それで優遇してもらい、この別荘をお借りしているという状況ですね」

「異世界人。……聞いたことあるな。勇者の逸材とかなんとかって奴だよな?」

「そうですね。まぁ私はただ巻き込まれただけの一般人なのですが」


 シーラさんが話し過ぎということで、私の服の裾を引っ張って止めようとしてきたけど、特段隠すほどのことでもないからな。

 他国の人だから、話してはいけないというのはあるのかもしれないけれど。


「一般人で巻き込まれたってことは、色々と大変な経験をしているのか」

「どうなんですかね? 向こうにいた頃よりもこちらの世界での方が楽しめていますので、大変という感じはしていません。それよりもルーアさんは何があって、ここに辿り着いたのですか?」

「全てを話すと長くなるから端折らせてもらうが、さっきも話した通りルサンソ共和国で騎士をやっていた。ただ、隊内で色々と揉めたせいで一月ほど前に騎士を事実上のクビになり、他国で冒険者にでもなろうと出国したんだが……国境から王都までの道のりを間違えたのか、迷ってしまって彷徨っている内にここに辿り着いたんだ。二日ぐらい水も碌に飲めなかったら、本当に助かった」


 話が本当なのであれば、おおよそ予想通りの内容。

 迷っていたこともあって、たまたまここに辿り着いたのだろう。


「一つ質問してもよろしいですか? 兵士をやっていたということは腕に自信があるのですよね? なんでそんなにボロボロになっているのか教えてください」


 シーラさんは警戒を解いておらず、少し冷たいトーンでそう質問した。


「普通に魔物にやられただけだぞ。この辺りの魔物は確かに弱いようだが、国境付近の魔物は手強い魔物が多かった。一人で移動していたから標的にされ、追い回されている内にボロボロになった挙句に道に迷ったって訳だ。……警戒させてしまって悪いな。少し休ませてもらったらすぐに出ていくから」

「……いえ。こちらこそ疑ってすみません。嘘はついていないみたいですね」

「ああ。本当に今はただの無職だ。もう一つだけお願いがあるんだが、王都の場所を教えてくれると助かる。早急に仕事を探さないといけないからな」


 仕事をクビになり、行く場所もない状態。

 何かの縁だし、働き口がないならここで働いてもらうのもありなのではとも思ったけど、シーラさんが許さなそうだ。


「王都までの道は後で教えます。それで、王都で仕事が見つからなければ、またここに来てください。お給料は渡せませんが、畑仕事を手伝ってくれれば3食宿付きで泊めますので」

「それはありがたい提案だな。王都に行って、何の職にもつけなかったら頼らせてもらう」


 この条件ならば受け入れても問題ないだろう。

 シーラさんには睨まれている気もするけど、働き手は少しでも欲しいのが今の現状だからね。


 それからルーアさんともうしばらく談笑したあと、傷を負っていた部分の手当てを施し、王都まで道を教えた。

 ルーアさんは何度も私達に頭を下げた後、滞在時間一時間ほどで王都に向けて去っていってしまった。


「佐藤さん! 明らかに怪しい人を家の中に招き入れるなんて、流石に無警戒すぎますよ! この世界は平気で盗賊とか山賊がいる世界なんですからね!」

「す、すみません。悪い人ではないと思えたので、つい招き入れてしまいました」

「……まぁ、誰にでも優しいところが佐藤さんの良いところではありますけど、それにしてももう少し警戒してください」


 ルーアさんが帰ってから、しっかりとシーラさんに怒られてしまった。

 盗賊や山賊と聞くと、確かに私が無警戒過ぎたな。


「はい。今後はもう少し注意します」

「分かってくださればいいんです。……それと、デレデレしすぎでしたよ。綺麗な人だから招き入れた訳ではないですよね?」


 ジト目でそう尋ねてきたシーラさん。

 確かにルーアさんは綺麗だったけど、下心で助けた訳ではない!……と思う。


「違います。本当に善意で助けただけですよ」

「……それならいいのですが」


 まだジト目のままだけど、何とか納得はしてもらえた様子。

 とりあえずルーアさんについては、また訪ねてきたらその時に考えるとして、今は気を取り直して農作業を行うとしようか。




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一日二話投稿のモチベーションとなりますので、この小説を読んで少しでも「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、ブクマと↓の☆☆☆☆☆から評価頂けましたら幸いです <(_ _)>ペコ


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