第58話 従魔探し
諦め、ブライトボイスのみを育て始めてから、更に二週間が経った。
ブライトボイスのみにしたことで、害虫や害鳥の被害は今のところほぼゼロ。
モアフルやシーアステラより利益が悪いとはいえ、クラックドラフを育てていた頃よりも格段に収入が上がっている。
……ただ大きな問題点があり、ブライトボイスのせいで私の手がズタボロだということ。
害虫、害鳥を寄せ付けなくなったはいいものの、その代価として私の手も傷だらけになっている。
シーラさんは鍛えられているから、私のように傷だらけではないのだが、それでも爪の間に棘が刺さって痛がっている姿を何度か目撃した。
新しく増えた3種類の作物は本当に一長一短。
しばらくはブライトボイス1種でいこうと思っていたけど、そろそろ手が限界を迎えてしまうため、予定よりも少し早いが害鳥対策の魔物を購入し、育てる作物をモアフルに変えたいと思っている。
「シーラさん、緊急会議で申し訳ありません」
「謝らなくても大丈夫ですよ。この会議の理由は分かっていますから。……害鳥対策の従魔を購入するのですよね?」
「はい、その通りです。私の手が限界を迎えてしまうので害鳥対策をして、ブライトボイスから手を引きたいと思っています」
「心の底から賛成です。鍛えている私ですら、ときどき棘が刺さりますから。早いところ害鳥対策を行って、モアフルかシーアステラを育てましょう」
害鳥対策にNPを費やすことを合意した私とシーラさんは強く頷き合った。
ちなみに現在のNPは約16000NP。
農業を再開してから一ヶ月ほどで、7000NPほど貯めることができた。
害虫、害鳥の被害がなければ、10000NPは固かったことを考えると歯がゆくなってくる。
たらればを考えていても仕方がないし、今回はその害鳥対策を行うための投資。
シーラさんが王都にまで戻り、害鳥対策になり得る魔物の候補を探してくれていたため、しっかりとプレゼンを聞いて、従魔にする魔物を選びたいと思う。
「それでは候補を聞いてもよろしいでしょうか? すみません。全て丸投げしてしまって」
「いえいえ。魔物を調べるのは苦ではありませんし、王都までも走ればすぐですから気になさらないでください。それでは今回も3種類の魔物の候補を挙げさせて頂きます」
「はい。よろしくお願いします」
「まず1匹目ですが、ディープカメレオンという魔物です。いわゆる“待ち”の魔物で、周囲に擬態しながら敵を待ち捕食する厄介な魔物です。とにかく体が大きく、害鳥だけでなく、今後害獣が現れた際も捕食してくれると思います」
大きなカメレオンって感じの魔物なのかな。
擬態しながら敵を待ち、近づいてきた敵をそのまま食べる――か。
積極的に狩ってくれるとかではなさそうだけど、この畑だけを守れればいい訳だし、1匹目だけどディープカメレオンはかなりアリ。
唯一の懸念点は、体が大きいとなると食費がかかりそうな点だろうか。
「1匹目から凄く惹かれました。ディープカメレオン、いいですね」
「そう言って頂けて良かったです。続いて2匹目ですが、スパイクスパイダーという魔物です。この魔物は基本的に害虫対策がメインになると思うのですが、罠を張ることも自ら狩りをすることもできる魔物です。ただ、体があまり大きくないこともあって、害鳥はスパイクスパイダーの罠にはかからないと思いますね」
スパイクスパイダーはその名の通り、蜘蛛の魔物だろう。
シーラさんの言っている罠というのは、きっと蜘蛛の巣のこと。
害鳥は蜘蛛の巣にかからないけど、害虫を始末するのには向いているということか。
害虫も厄介ではあるんだけど、害虫はまだ自分たちで対処することができる。
そのため、今のところの優先順位は低いかもしれない。
「害虫も確実に対策を講じないといけないですが、今は害鳥が最優先なので一旦保留ですかね。ただ、候補を挙げてくださりありがとうございます」
「挙げておいてなんですが、私も同意見ですね。それでは最後の候補ですが、ムーンレイヴンという魔物です。鳥には鳥をということで、鳥系の魔物を選ばせて頂きました。知能が非常に高く、狩り能力も申し分ない魔物です」
レイヴンということはカラスだろうか。
……挙げてもらった候補の中では、今のところ一番良いかもしれない。
単純にカラスのフォルムが好きというのもあるけど、一番大きいのは知能が高いということ。
せっかく従魔にするのであれば、コミュニケーションは取りたいからね。
「ムーンレイヴン、かなりいいですね。今のところの第一候補かもしれません」
「私もオススメの一体ですね。知能が高いので非常に厄介で、冒険者からは嫌われている魔物ですが、仲間になったらこれほど頼もしいことはありませんので」
「第一候補はムーンレイヴン、第二候補はディープカメレオン、第三候補がスパイクスパイダーとして、値段を見比べながら最終結論を出したいと思います」
「良いと思います。従魔としてやってくるのが楽しみですね」
「本当に楽しみです。シーラさん、今回も本当にありがとうございました。本当に助かりました」
「いえいえ。また従魔のことで悩んだら、私に相談してください。出来る限りの情報は集めてきますので」
シーラさんは本当に頼りになる。
近い内に日本料理でもてなすことを心に決めつつ、私はタブレットとにらめっこをして、最終的にどの魔物を従魔にするのかを必死に考えたのだった。
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