第54話 待ちに待った春
クリスマスパーティーから一週間が経過した。
段々と暖かくなり始めており、積もっていた雪も完全に溶けた。
裏山にはまだ雪が残っているが、別荘前の平原の雪は完全になくなったため、今日から農業を再開することができる。
待ち遠しかったが、冬の期間も充実していたため、良いリフレッシュ期間だったのではと個人的には思う。
今日から気持ちを新たに、ガンガン作物を育ててNPを稼ぎたい。
「シーラさん、おはようございます。今日から改めてよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします。農業を再開できるの楽しみですね!」
「ですね。まさかここまで待ち遠しいと思うようになるとは思っていませんでした」
「それは私も同じです。冬期間のダンジョン攻略も楽しかったですが、今の方が何倍もワクワクしてますから」
楽しみにしてくれているのが伝わってくるシーラさんと一緒に朝食を食べた後、すぐに外へと出た。
まだ寒さは残っているが、晴れているため気持ちの良い天気。
さて、何を育てるかだが……一度も育てたことのない作物を育ててみようと考えている。
ということで、早速だがNPを使って、購入できる苗の種類を増やす。
所持NPから3000NPが消費され、野菜の苗の一覧に新たな種類の苗が増えていた。
増えていたのは、モアフル、シーアステラ、ブライトボイスの三種類で、値段は一律10NPとクラックドラフよりも高い。
それと、この世界の作物ということもあり、どれも聞き馴染みのない野菜ばかりだ。
基本的にはNPに変えるため、どの作物でも変わらないと思うのだが……どれが一番効率良くNPを稼げるかを確認するため、三種類とも購入して育ててみることにしよう。
それぞれ20株ずつ購入し、成長速度と土の質のスキルをlv2にしてから、早速畑に植えていくことにした。
今日まで節約していたのに、僅か十分足らずで既に10000NPほどを使ってしまっているが、NPは増えていくし問題ないだろう。
何なら、現在の所持NPが10788とかなり残っているし、人手を増やす目的で新しい従魔を増やしてもいいかもしれない。
勢いでポチリかけたが……10000NPはまだ取っておいたほうがいいとギリギリで思い直し、魔物の購入は諦めた。
日本の作物の苗も購入したいし、明日、明後日の分の苗代も取っておかないといけない。
それから今回購入した作物の成長速度が遅かった場合、所持NPが少ないと確実に困ることになるからな。
浮かれて衝動買いしそうになったことを反省しつつ、私はシーラさん、それからマッシュと共に苗を植えていくことにした。
昼過ぎくらいには植え終え、水やりまで終わってしまった。
まだ畑の3分の2が空いている状態のため、このまま作業をしたくなるが……例のごとく収穫が大変になるため今日はここまで。
「佐藤さん、あっという間に終わってしまいましたね。久しぶりなのに少し物足りません!」
「私も同じ気持ちです。作物が育ったら収穫も行わないといけないので、これ以上できないのがもどかしいですね」
「そこは重々承知しています。――ので、スレッドが耕してくれた場所に何か植えませんか? 異世界の作物を植える予定的な話をしていましたよね?」
完全に頭から抜けていたけど、シーラさんの言葉で思い出した。
日本の作物はNPに変えないし、スキルで作った畑ではなく自力で耕した畑で育てようと思っていたのだ。
スキルの畑とは違って育つのに時間がかかる訳だし、確かに今から植えるべきだろう。
「完全に忘れていました。時間もありますし、色々と植えてみましょうか」
「はい! 植えてみましょう」
私はタブレットを取り出し、何の野菜を育てるかを決める。
今の時期を考えると、春の野菜を植えるのがいいんだよな?
何となくは分かるけど、自信がないため……まずは家庭菜園の本を買おうかな。
漫画だけでなく、役立つ本を買おうと前々から決めていたため丁度いい。
ついでにレシピ本もポチり、二冊の本が一瞬で手元に届いた。
漫画よりも値が張り、一冊600NPもしたが勿体ないということはないはず。
早速、家庭菜園の本を開き、今の時期の作物を調べる。
えっーと、トマト、キュウリ、ナス、ニンジン、ダイコン。ジャガイモなんかが育つようだ。
トマトはマストで植えるとして、その他の5種もほどほどに植えよう。
後は私の好きなアスパラガス、オクラ、ピーマン、ショウガ、それからメロンも植えようかな。
本を読んで何を育てるか考えているだけで、あっという間に時間が過ぎていってしまうため、パパッと気になった野菜の苗や種を購入していく。
異世界価格で値段が高いため、数は抑え気味でトマトのみ多めに購入して買い物は終了。
ちなみにニンジンやダイコンといった単作の作物は、種から育てた方がいいとのことで種を購入。
逆にトマトなどの連作の作物はこれまで通り苗を購入した。
「色々な種類のものを買いましたね。それにしても……どういう原理なのか本当に不思議です。いきなり現れますよね? 魔力は消費されているのですか?」
「原理は私にも謎でしかないですし、魔力が消費されているのかも分からないです。そもそも魔力を感じたことがないんですよね」
「そういえば、佐藤さんは魔法が使えないのでしたね。思い返してみたら、佐藤さんの魔力自体が微々たるものでした。ということは……佐藤さんのスキルは魔力によるものではない可能性が非常に高いですね」
私の情けない能力のお陰で、スキルが魔力依存ではないことが判明した。
結果としては、“神の力”という曖昧な結論に終わったけど、実際に野菜をポイントに変えて異世界のものを購入するなんて能力は神様の力以外あり得ないだろう。
「私もそう思います。神様とか一切信じていなかったのですが、この世界に来てからは神様に助けられっぱなしです。何かしらお供えものとかした方がいいんですかね?」
「別にいらないのではないでしょうか? 既に佐藤さんも野菜を納めていますし、きっとwin-winの関係なんだと思いますよ」
そうなのだろうか?
確かに異世界のものはレートが高いし、そう考えると神様にいい様に使われているだけの気もしてきた。
あまり気にすることはせず、これまで通り過ごすのが一番か。
「まぁ何かあれば、向こうからコンタクトを取ってきますよね。私達は何も気にせずに野菜を育てるとしましょう」
「ええ、そうですね。今回、佐藤さんが購入した野菜も育つのが楽しみです」
「どれも美味しい野菜だと思いますので、育ったら収穫祭をしましょう」
「いいですね! 佐藤さんのお料理楽しみにしています!」
とびきりの笑顔でそう言ってくれたシーラさん。
特にメロンは驚くだろうし、早く食べさせてみたい。
シーラさんの反応を楽しみにしつつ、私達は気を取り直して野菜の苗と種を植えることにした。
収穫できるのは早くて一ヶ月先くらいだろうし、こちらは気長にゆっくりと育てていくとしよう。
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