第50話 ダンジョンでの成果
ダンジョン街にやってきてから、あっという間に2ヶ月が経過した。
初めて訪れた日から、私達は毎日ダンジョンに潜り続けている。
ただし、最高到達階層は依然として10階層であり、直近の10日間はフロアボスであるミノタウロスに挑みはしたものの、進捗自体はないといった感じ。
正直、シーラさんの能力が高すぎるということもあって、進もうと思えばもっと深くまで進むことができたと思うけど……。
私達の本業はあくまでも農業であり、無理をして命を落とすのはもちろん、怪我をするのも馬鹿らしいという判断から、10階層までに留めていた。
それでも毎日ダンジョンに潜ったということもあり、お金自体はかなり稼ぐことができた。
特にライムとマッシュの食費と宿代がほとんどかからないのが大きく、合計で白金貨2枚を稼ぐことに成功。
その他にも麻袋一杯に魔力塊を集めることができたし、冬の期間の過ごし方としてはベストだったと思う。
ただ……この二ヶ月間で私は一匹も魔物を倒すことが出来ず、荷物持ちとして常に動いていた。
魔物を倒せなかったことだけが唯一の心残りだけど、冬は来年もある訳だし、この一年間で少しでも強くなれるように努力すればいいだけ。
来年は魔物を一匹でも狩れるようになっていることを目標に据え――私達はダンジョン街を離れて別荘に戻ることにしたのだった。
二ヶ月ぶりの別荘。
薄暗くジメッとしたダンジョンに潜り続けていたこともあって、随分と久しぶりな気がする。
ちなみにもう雪は降っていないのだけど、まだ雪は若干積もっており、あと二週間ほどは雪が残っていると思う。
この雪が溶けたら農業が再開できるため、今からワクワクが止まらない。
ダンジョンに籠もっていたお陰で、NPもほとんど消費していないし、冬に入る前に貯めていたNPは、クリスマスパーティー分以外は全て農業のために使おうと思っている。
そして、そのクリスマスパーティーなのだが、来週ここで行う予定。
本当はクリスマスの時期に行いたかったが、わざわざ移動しにくい冬の時期に行うこともないし、ダンジョンの攻略も行っていたため、時期をズラして行うことを向こうで決めた。
ベルベットさんにもダンジョン街から手紙を送っており、来ることができるという返事も貰えている。
せっかくのパーティーであり、期間も一週間あるため、なるべく盛大に行いたいところ。
本当は一人一人にプレゼントでも送りたいと思っていたけど、流石にそこまでの余裕はないため、美味しい料理とデザートを作るつもり。
飾り付けなんかもシーラさんに手伝ってもらって準備したいと思う。
そんなことを考えながら、私は二ヵ月ぶりの別荘に入ったのだが……かなり綺麗な状態で驚く。
埃なんかも溜まっているかと思っていたけど、もしかしたらスレッドが夜に別荘の様子も見ていてくれたのかもしれない。
ずっと一人で待たせてしまっていたし、暗くなったらまずはスレッドに顔を見せに行かないとな。
それと、ダンジョンで手に入れた魔力塊の半分はスレッドにプレゼントしよう。
「やはりここは安心しますね。それと……反射的にお腹が空いてきてしまいます」
「宿に台所がついていなかったので、日本の料理を一切食べられなかったですもんね。二ヵ月は長かったですし、私もお腹が空いてきました」
「ということは、今日の夜は異世界料理が頂けるのでしょうか!?」
「ええ。何より私が食べたいので、久しぶりに腕を振るって作りたいと思います」
「ありがとうございます! 実は言いますと……異世界料理を食べた過ぎて、別荘に戻ることを提案しようとここ二週間くらい悩んでいたんです。やっと食べられると思うと――ついニヤけてしまいます!」
シーラさんは本当に嬉しそうな表情を浮かべている。
ここまで楽しみにしてくれているのであれば、とびきり美味しい料理を作ってあげたいな。
クリスマスパーティー以外は農業に使うと決めたばかりだが、今日は二ヵ月頑張った記念として奮発しよう。
私は頭の中で何を作るか考えながら、私は早速台所に立った。
トマト料理にこだわらなくてもいいため、せっかくなら私が一番好きだった料理にしよう。
タブレットを操作し、からあげの材料とチャーハンの材料を購入。
作るのはもちろん、唐揚げチャーハン。
家の近くにあった中華屋さんの唐揚げチャーハンが、私が働いていた時の唯一の楽しみだった。
味は近づけないとは思うけど、唐揚げもチャーハンも自炊でよく作っていたため、それなりのものはできるはず。
記憶を思い出しながら、私は唐揚げとチャーハンの調理を開始した。
両方とも簡単な料理のため、こだわる部分は唐揚げが冷めないようにすることだけ。
なるべく同時に完成するように時間配分しつつ、パラパラのチャーハンと皮で肉汁を閉じ込めた唐揚げが完成。
何十回と作ってきた料理なだけあって、両方とも非常に美味しそうに作ることができた。
本当は中華スープも作りたかったんだけど、思いのほかNPがかかってしまうことから諦めざるを得なかった。
一杯当たりで計算すれば安いのだが、初期費用が高くなってしまうというのが非常に手を伸ばしにくい要因。
そんなことを考えつつ、私はお皿にチャーハンと唐揚げを綺麗に盛りつけ、リビングで待っているシーラさんの下まで運んだ。
「うわー、めちゃくちゃ美味しそうな匂いです! これはなんという料理なのですか?」
「ご飯ものがチャーハンという料理で、まん丸のお肉が唐揚げです。どちらも得意料理なので美味しいと思いますよ」
「佐藤さんの料理がまずかったことがないので、全く心配していません! それでは……早速食べていいですか?」
「ええ。冷めないうちに食べましょう」
食前の挨拶を済ませてから、まずはチャーハンから口の中に掻きこむ。
うん、抜群に美味しい!
ご飯はしっかりとパラパラモチモチとしていて、味付けは若干薄味ながらも止まらない癖になる味。
具材が少ないのはネックだけど、この具材の少なさも若干の薄味も唐揚げを見越してのもの。
口が唐揚げを欲したところで、まん丸の唐揚げにかぶりつく。
――最高に旨い!
溢れんばかりの肉汁が弾け出て、短い時間だったけど常温で漬けたことでしっかりと染みている。
二ヶ月間、日本の料理を食べることが出来ていなかったスパイスも含めてだけど、今回が異世界に来て一番の料理を作れたかもしれない。
「こ、これは……食べる手が止まりません! 外はカリッと中はジュワッとしている唐揚げと、癖になるチャーハンの相性が抜群すぎます! 久しぶりの異世界料理ということもありまして、涙が出そうになるくらい美味しいです!」
「喜んでもらえて良かったです。私もこの唐揚げチャーハンがこの世界に来て、一番美味しく作れた料理と思っていました」
二人で唐揚げチャーハンを褒め称えながら、勢いよく食べ進めていく。
結構な量を作ったはずだけど、私もシーラさんもあっという間に食べ終えてしまった。
やっぱり唐揚げとチャーハンの相性は抜群だと再確認できたな。
「はぁー、美味しかった……! 本当に幸せです」
「久しぶりの料理は沁みますね。次はクリスマスパーティーですね。腕を振るう予定ですので楽しみにしていてください」
「はい! 本当に楽しみにしています!」
こうして別荘に戻ってきて最初の食事を終えた。
そこからは特に何もする訳でもなく、ダンジョン攻略で疲れた体を癒すように、リビングでダラダラと過ごしたのだった。
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