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第48話 フロアボス


 見るからに危険な魔物であり、私が目の前に立ったら、きっと数秒であの世へ送られてしまうだろう。

 膝がガクガクと震え始めたが、私以外のみなさんは余裕の表情であり、ライムやマッシュも全く怖がっている様子はない。


「ふ、フロアボスというだけあって……ふ、雰囲気がありますね」

「ミノタウロスは弱いよ! さっきも言ったけど、攻撃が当たらなければ何も怖くないからね!」


 美香さんは震えている私にそう言うと、散歩にでも行くような軽やかな足取りでミノタウロスに近づいていった。

 私は止めようとしたのだけど、言葉が出るよりも先にミノタウロスが美香さんに殺意を向け――両手に握っている斧を振り下ろしてきた。


 油断し切った美香さんに振り下ろしてきたため、完全に脳天に直撃したと思ったのだが……。

 振り下ろされた斧はすり抜けるように美香さんを外し、思い切り地面にぶつかった。


 一瞬、ミノタウロスが外しただけかと思ったけど、美香さんが僅かな移動だけで躱したことが分かった。

 体捌きが軽やかすぎて、斧の方からすり抜けたと錯覚しただけ。

 そして、そこからもう一発斧が振られたが、美香さんは斧による攻撃を楽々と躱し、ミノタウロスの懐へと潜り込んだ。

 

「おしまいっと!」


 そんな掛け声と共に拳を突き出したと同時に――巨体のミノタウロスが吹っ飛んだ。

 細い女性である美香さんの拳によって、三メートルを超す筋骨隆々のミノタウロスが吹っ飛ぶ。

 まるでアニメや漫画のような光景に、私は呆気に取られながら拍手を行った。

 

「本当に楽々と倒してしまいました! 美香さん、凄いですね!」

「いやいや、これぐらい普通だって! それにまだ終わってないから!」

「そうそう。意外にタフなんだよな」


 吹っ飛んだミノタウロスに視線を向けると、確かに立ち上がろうとしていた。

 美香さんの一撃が強烈だったことは、離れた場所にいた私でも分かったぐらいだが……お腹部分が若干変色しただけで、まだまだ動けそうなミノタウロス。


「将司が抑えてください。私の魔法で仕留めます」

「また俺が盾役かよ! いっつも地味な役割!」

「騎士職だったんだから仕方ないだろ。唯のサポートをしてくれ」

「分かってるよ!」


 唯さんは何やら長い詠唱を始め、その間の時間稼ぎとして将司さんが起き上がろうとしているミノタウロスの前に向かった。

 将司さんも180センチほどと高身長の部類に入ると思うのだが、ミノタウロスと並ぶと小さく見える。


 ……けど、決して将司さんが負ける気配がしない。

 そして、そんな私の予感が正しいことを証明するように、将司さんはミノタウロスと一対一で戦い始めた。


 先ほどの美香さんのように避けるのではなく、強烈なミノタウロスの斧攻撃を真正面から受けている将司さん。

 素人目でも押しているのは明らかに将司さんが押しており、単純な力比べで勝っている様子。


「準備できました。合図を出しますので、将司は逃げてくださいね」

「OK! いつでもいいぞ!」

「それではいきます。【フレイムエクスプロード】」


 溜めた魔力が解き放たれ、ミノタウロスを中心に大爆発が巻き起こった。

 眩い光がフロア全体を照らした後、熱風が私のところまで届いた。

 次第に光りが落ち着き始め、ミノタウロスがいた位置に視線を向けたけど……ミノタウロスの姿がない。

 

「ミノタウロスが……消えた?」

「消えたんじゃなくて、唯の魔法で木っ端微塵になっただけだな。……普段はミノタウロス相手にこんな大技を使わないんだけど、みんな佐藤さんの前だからかっこつけてる」

「蓮、それは言わない約束です。途端に恥ずかしくなりますから」

「あの巨体の魔物を消し飛ばした。……本当に凄いです! 本当に四人は勇者なんですね」


 惜しみない拍手を送りながら、私は四人を盛大に褒めちぎる。

 誇張とか一切なく、本当に目の前でアニメやゲームを見ている感覚だった。


「流石に最後は派手にやりすぎたけど、これがダンジョン攻略だな。少しは佐藤さんの役に立てたかな?」

「本当にありがとうございました。楽しかったですし、ダンジョン攻略というものが理解できました。明日からは私達だけで潜れると思います」

「役に立てたなら良かった! ……まぁ本当は佐藤にダンジョン攻略をしてほしくないんだけどね。死んだら嫌だし」

「ですね。私達が常に護衛したいぐらいです。ただ……シーラさんがいれば、低階層なら何とかなると思いますので、くれぐれも佐藤さんを守ってあげてください」

「はい。この命に代えてもお守り致します」


 理由は【異世界農業】が重要だからだろうけど、みんなが私の心配をしてくれていることに少し感動してしまう。

 とにかく絶対に死なないように、そしてシーラさんの足を引っ張らないようにしないといけない。


「あっ、ドロップアイテムは魔力塊だ! 残念でした!」

「私は魔力塊も嬉しいんですけどね。頂いてもいいですか?」

「もちろん。俺達は使わないからな。……よし、それじゃ少し早いけど戻ろうか」


 こうして私達は来た道を引き返し、ダンジョンから脱出した。

 帰りも危険は一切なく、非常に快適なままダンジョン攻略一日目を終えることができたのだった。



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一日二話投稿のモチベーションとなりますので、この小説を読んで少しでも「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、ブクマと↓の☆☆☆☆☆から評価頂けましたら幸いです <(_ _)>ペコ


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お手数だと思いますが、ご協力頂けたら本当にありがたい限りです <(_ _)>ペコ

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