第47話 ダンジョン街
この小さい街は、ダンジョンまでの経由地だったりするのだろうか。
しばらく考えたが分からなかったため、蓮さんに尋ねてみることにした。
「ここってダンジョンではないんですか?」
「いや、ダンジョンで合ってる。この街はダンジョンの上に造られた街で、いわゆるダンジョン街と呼ばれている場所なんだ」
「へー。ダンジョン都市っていうのは創作上でたまにありますが、そんなような感じの場所なんですね」
「ダンジョンには冒険者が集まってきますからね。ここは、その冒険者目的で集まってきた商売人たちによって造られた街なのです」
「ということは、ここだけでなく他のダンジョンも街のようになっているんですかね?」
「すみません。他は分からないです。ただ、ここは王都から一番近いダンジョンですので他のダンジョンよりも需要が高く、それに伴って街として形成されている節がありますので、もしかしたらここが特別な可能性は非常に高いです」
「なるほど。シーラさんは色々と詳しいですね」
疑問に全て答えてくれたシーラさん。
蓮さん達も、なぜ街があるのかまでは知らなかったみたいで、シーラさんの話に興味深そうに頷いていた。
そんな雑談をしながら歩いていると、正面に唯さんと将司さんがいるのが見えてきた。
二人はフル装備であり、ファンタジー色が強い恰好ながらも様になっていてかっこいい。
私には絶対に似合わないのが着なくとも分かる。
「やっと来ましたね。佐藤さん、ダンジョンへようこそ」
「今日は俺達がしっかりと案内するから!」
「唯さん、将司さん。おはようございます。今日はよろしくお願いしますね」
二人に軽い挨拶を済ませてから、宿に荷物だけ置いて、早速ダンジョンに潜ることになった。
本当は道具屋とかにも行ってみたかったのだけど、今日は蓮さん達が貴重な時間を割いて案内をしてくれるため、個人的な我儘は言っていられない。
「それじゃレッツゴー! 今日は十階層を目標に潜るからね!」
「分かりました。頑張ってついていきます」
「いやいや、無理しないペースで行くから大丈夫。基本的に戦闘は俺達で行うから、佐藤さん達はダンジョンの雰囲気になれることに注力してほしい」
気合いを入れている私に、そう優しく声を掛けてくれた蓮さん。
馬車に揺られている間はワクワクが勝っていたのだけど、実際にダンジョンの入口を目の当たりにすると緊張が大きく勝ってきている。
ガッチガチになりながらも、蓮さん達の後を追って進んで行くと……ダンジョンが見えてきた。
ダンジョンは大きな穴のような感じで、地下に下っていく形で進むらしい。
明かりは意外にもしっかりしており、先人たちがキチンと整備してくれているのが分かる。
「……き、緊張してきました。シーラさんは平気そうですね。ダンジョン攻略は何度目なんですか?」
「私もダンジョンに入るのは初めてですよ。ですが、ダンジョンにはずっと憧れていましたので、楽しみの方が勝っている状態です」
「えっ、シーラさんも初めてだったんですか? ダンジョン街について詳しかったので、てっきり何度かダンジョンに訪れているのかと思っていました」
「ダンジョン街には何度かお使いで来ましたが、ダンジョンに入るのは初です。ただ、調べに調べていますので知識には自信がありますよ」
そう自信満々に宣言した通り、普段から攻略を行っている蓮さん達よりも道に詳しかった。
シーラさん曰く、ダンジョンの低階層の地図は出回っているようで、全て頭の中に叩き込んであるそう。
道中で現れた魔物は蓮さん達が倒し、シーラさんの案内のお陰で迷わずに進めたため、一切の苦もなく快適にダンジョンを進むことができている。
今のところ攻略感は一切ないけれど、ダンジョンがどういった場所なのかは何となく分かってきた。
「明かりもしっかりありますし、今のところ現れる魔物も裏山と大差ないですね。歩きにくいこと以外は、思っていたよりも楽かもしれません」
「ちっちっち、佐藤さん! その考えは甘いぜ! ダンジョンにはモンスタールームっていう、大量の魔物がいる場所が突如して現れるからな! 油断していると命を落とすぜ!」
「そうそう! それも結構な確率で遭遇するからね! 低階層はまだいいけど、深く潜るにつれて絶望感が半端ないんだよ!」
「美香が逃げ出したのも、モンスタールームが怖くなって――という節がありますもんね」
「だって、本気で命の危険を感じるんだもん! ……そりゃまだ死にたくないからさ」
ローグライク系のゲームでいうところのモンスターハウス的な要素だろうか。
確かに今のところは人数有利もあって、余裕を持って戦えているけど、魔物の方が数が多くなったら私は一気に命の危険に晒されることになる。
油断しかけていた気持ちを引き締め直し、集中し直して歩みを再開した。
——が、結局モンスタールームに遭遇することはなく、順調なまま目標であった十階層に到着。
とにかくシーラさんの案内が良かったという感想しかない。
「ありゃりゃ、もう十階に着いちゃった!」
「過去最速かもしれないな。シーラさんの案内が的確すぎる」
「本当ですね。佐藤さんがいるから、もっとゆっくりとしたペースになると思っていたのですが……シーラさん、凄いです」
「ありがとうございます。ただ、皆さんが戦闘を行ってくださったお陰ですので」
そう謙遜しているけど、初めて訪れたダンジョンでここまで正確に場所を把握できているのは凄まじいとしか言いようがない。
地図を読みながらでも、私は迷う自信しかないからな。
「それで……階層ボスはどうする? 倒す予定なかったけど、体力が有り余ってるからいけそうな感じがしてる」
「行こうよ! 佐藤はシーラさんに守ってもらって、私達が戦えば行けると思うし!」
「へー、階層ボスなんていうのもいるんですね」
「十階層のボスはミノタウロス! 一撃は怖いけど、当たらなければなんてことない魔物だ!」
「私達はもう五十体以上討伐しています。ちなみにレアドロップなんていうのもありまして、ミノタウロスのレアドロップである“捻じれた牛角”は、そこそこの値段で売れますよ」
「運が絡む面白い要素があるんですね。どの魔物にもレアドロップはあるんですか?」
「ううん。一部の魔物だけ! ちなみにフロアボスはどの魔物にも存在していたはずだよ!」
せっかくフロアボスに挑むのであれば、レアドロップなるアイテムを見てみたいところ。
ただ通常ドロップは魔力塊らしいので、どちらかといえば通常ドロップの方が嬉しいのが何とも言えない。
そんなことを考えつつ、私達は十階層のフロアへと足を踏み入れた。
大きな一つのフロアとなっていて、そのフロアの真ん中には牛頭の魔物が立っている。
大きさは三メートル強の人型。
筋肉ムキムキで見るからに危険な香りしかしない上、身長と同じくらいの斧を持っていた。
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