第46話 馬車での移動
本格的な冬に突入してから、一週間が経過した。
この間はとにかく剣を振り続けており、ライムとマッシュはもちろん、シーラさんにも協力してもらって戦闘技術を磨いた。
そのお陰もあって、素人に毛が生えたくらいは戦えるようになったため、これでいつ蓮さん達がやってきても大丈夫。
そう思い始めた中——タイミング良く、本当に蓮さんと美香さんが私達を迎えに来た。
「佐藤さん。約束通り、ダンジョンを案内するために来たぞ」
「寒いから早く出てきて!」
朝食を食べ終え、コーヒーを飲んで落ち着いていた時にそんな声が外から聞こえてきた。
慌てて外に出てみると、少し雪を被っている蓮さんと美香さんの姿があった。
「この雪の中、本当に来てくれたんですね。ありがとうございます」
「案内するって約束したからね! 近くで馬車を止めてるから、準備ができたら馬車まで来て!」
「分かりました。すぐに準備を整えて向かいます」
この雪の中で馬車……?
と、疑問は浮かんだものの、考えるだけ無駄のため急いで準備を行うことにした。
いつ来てもいいように荷物をまとめていたため、着替えるだけで準備は終わり、シーラさん、それからライムとマッシュを連れて外へと出てきた。
しっかりと施錠をし、これで大丈夫……なはず。
忘れ物がないかだけが不安になるけど、そんなに長期間滞在する訳でもないし大丈夫だろう。
スレッドは暗い時しか動けないというデメリットがあるため、今回はお留守番。
ダンジョンという常に暗い場所であり、戦闘向きのスレッドは連れていきたかったのだけど……連れて行くまでが大変ということで断念。
スレッドに不在の間は家を守ってもらうとして、私達は馬車へと向かった。
「うわぁ……。馬車……ではないですね」
「佐藤さんは見るのが初めてですか? これはスノーディアという雪の中の移動を得意とする魔物です」
「ファングディアと同じく、一応ディアではあるんですね。初めて見ました」
シーラさんが軽く説明してくれたが、馬車を引いていたのは馬ではなく、立派な角をつけている化け物。
一応ディアらしいが、裏山で見かけたファングディアと同様に、鹿とは似つかない容姿をしている。
「ささ、乗って乗って! すぐに出発するよ!」
「忘れ物は大丈夫か? 出発したら戻れないからな」
「大丈夫です。いつでも出発してください」
「了解! それじゃレッツゴー!」
美香さんの元気な掛け声と共に、馬車はゆっくりと動き出した。
ちなみに馬車の中は意外にも温かく、かなり快適。
と、思っていたのだけど……速度が徐々に上がっていき、相当な速度で走っているのが揺れから伝わる。
外が見えていないから正確な速度は分からないけど、馬車の何倍もの速度で走っているはず。
「……こ、これ相当速いですよね? 大丈夫なのでしょうか?」
「大丈夫! この速さもスノーディアの売りだから! 意外と値が張るんだよ?」
「佐藤さんの反応は毎度ながら新鮮で面白いです」
「シーラさんは慣れているんですか?」
「ええ。冬の移動は基本的にスノーディアの馬車ですので。ライムとマッシュも楽しそうにしてますよ」
横を見ると、確かに子供のように楽しそうにしているライムとマッシュ。
あまり感じたことがなかったけど、私は臆病な性格をしているのかもしれない。
「私も楽しめる側になりたかったです。そういえば、唯さんと将司さんはいないのですか?」
「二人はダンジョンで待ってるぜ。四人で迎えに行っても狭くなるだけだし、俺と美香だけで迎えに来たんだ」
「なるほど。確かに唯さんと将司さんまで来ていたら、二台必要になりますもんね」
「そういうこと! 二人も迎えに来たがっていたんだけどね!」
それから馬車の中で雑談をしながら、揺られること約二時間。
どうやら目的地に着いたらしく、馬車が止まった。
王都までは普通の馬車で三十分。
今回のスノーディアの馬車は倍以上のスピードが出ていた中、二時間以上かかったということは着いた場所が王都ではないことが分かる。
恐らくだけど、ダンジョンまでそのままやってきたのだろう。
ゲームやアニメでは何度も目にしてきたダンジョン。
この世界では一体どういうものなのか、楽しみにしながら馬車から降りると……目の前に広がっていたのは小さめの街。
一面雪景色でありながらも人の数は多く、かなり賑わいをみせていた。
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