第479話 リザードマン族の決断
ゴさんたちと共に、リザードマン族の村へとやってきた。
ジャバルさんとは会話したものの、リザードマン族の村に来るのはかなり緊張する。
襲われることはないと思っているけど、念のためヤトさんにはドラゴンの姿になってもらった。
ヤトさんがドラゴン姿で目立つこともあってか、リザードマン族の村の入口には、既に大勢のリザードマンたちの姿が見えている。
武器は携帯していないように見えるし、好戦の意思はないはずだ。
「サトーさん、待っていた」
真ん中にいた年配のリザードマンの方の後ろから姿を現したのは、見知った顔のジャバルさんだった。
リザードマンは似ているようでしっかりと特徴があり、ジャバルさんは黒っぽいウロコに右の犬歯が異様に発達している。
「ジャバルさん、歓迎してくださりありがとうございます。戦いの意思はないようで、ホッとしました」
「あれだけの温情をかけてもらって、攻撃するなんて非礼はしない。村の中でもしっかりと話し合いをさせてもらい、この間に結論も出して待っていた」
「既に結論まで出してくれていたんですね。それで、リザードマン族はどうするのでしょうか?」
リザードマン族の後ろに見える村は、想像していたよりも文明的であり、どことなく東南アジアチックな雰囲気がある。
文化も根付いていそうだし、巨人族と同じくこの場所に残り、農業に専念すると思っていたんだけど……。
「俺たちは全員でサトーさんの村に移住させてもらうことにした。本当に受け入れてくれる場合のみの話ではあるが」
「……えっ? 全員で移住することで合意が取れたんですか?」
「サトーさんの迷惑でない場合の話だがな。若い世代はまだしも、年老いた者の中には巨人族を嫌っている者がいるのが事実。何かしらの切っ掛けで争いに発展したら、サトーさんに合わせる顔がない。そこで、距離を取るためにも全員で移住することを決めたんだ。……大丈夫だろうか?」
私から提案はしたものの、本当に移住してくるとは予想していなかったため、驚いて言葉が出てこない。
けど、移住してくれるのであれば、私としては嬉しい限りだ。
「もちろん大丈夫です。私が提案したことですからね。ただ、場所を貸し出すことはできますが、村を一から作ってもらうことになります。それでも大丈夫ですか?」
「ああ、その点については問題ない。サトーさんに迷惑はかけないと約束する」
ジャバルさんの宣言に、何人かのリザードマンたちが頷いている。
多分だけど、今頷いたリザードマンたちは言葉を理解できる方たちだと思う。
「でしたら、私も歓迎します。ちょうど人手もほしいと思っていたので、みなさんが来てくれるなら嬉しい限りです」
「そう言ってもらえて本当に助かる。問題は起こさないと誓わせてもらう」
「ぬっはっは! 問題を起こそうと思っても、お主らじゃ簡単に制圧されるだけじゃから心配はいらんぞ! 佐藤のところには強者が集まっておるからな!」
「文明の発展も群を抜いていたもんな! あの祭りは本気で驚かされた!」
ドラゴン姿のヤトさんがそう言い、何度も頷きながらゴさんが同意を示してくれている。
確かに問題を起こされても対処できるんだろうけど、平和にやっていきたいため、絶対に問題は起こしてもらいたくないところ。
「問題が起きても対処はできるかもしれませんが、平和にやっていきたいので、くれぐれも争いごとは起こさないでくださいね」
「その点は俺に任せてくれ。人間の言葉も、ゆっくりではあるが教えていっているところだ」
「それは本当に助かります。リザードマン族については、ジャバルさんにお任せしますね」
元々リーダーを務めていたみたいだし、ジャバルさんに任せれば問題ないだろう。
人間の言葉も話せる上に、リザードマン族の中で一番強いみたいだしね。
「それで、我々はいつ向かえばいいのだ?」
「いつでも構いませんよ。先に動ける方だけ来て、村作りを行ってもいいですし、皆さん一斉にやって来ていただいても大丈夫です」
私がそう告げると、モスキート音のようなものを発し、相談をし始めたリザードマン族の皆さん。
ここから村までは距離があるし、私的には別々で来るのがいいとは思っている。
「――サトーさん、まずは若い者たちだけで向かわせてもらうことにした。村がある程度の形になり次第、全員が移住するという形でも大丈夫か?」
「もちろん大丈夫です。それでは村の場所なんですが……」
「佐藤さんの村の場所なら、俺が案内してやるよ! こっちも何人か移住する計画があったし、そのタイミングで一緒に向かおうぜ!」
「……いいのか?」
「もちろんだ! 敵だったが、これからは敵じゃねぇしな!」
私たちの村まで、リザードマンたちを案内してくれるというありがたい提案をしてくれたゴさん。
今回の会話で、もう何も起きないと悟ったのかもしれない。
何にせよ、ここ最近も訪れていたゴさんが案内してくれるなら安心だ。
「ゴさん、ありがとうございます。それではゴさんと連絡を取ってから、一緒に来てください」
「分かった。サトー、リザードマン族を救ってくれてありがとう」
ジャバルさんのお礼に合わせるように、一斉にリザードマン族の皆さんが頭を下げてきた。
私が救ったわけではないし、長い間抗争していたのに寛大な対応をしてくれたゴさんたち巨人族の方々のお陰なんだけど……ここで説明するのは違うよね。
私はお礼を受け入れつつ、軽い談笑をしてから、一足先に村へと戻ることにしたのだった。





