第43話 ピザ
「お疲れ様でした。お陰様で午前中に全ての作業が終わりました」
「えっ、もう終わりなの? せっかく慣れてきたところだったのに!」
「確かに! 意外に楽しかったし、俺はまだまだ働けるけどな!」
「身構えていましたが、楽しいまま終わりましたね」
午前中のみということもあり、まだまだ元気な四人。
まだ働けるという申し出はありがたいが、NPを使用して畑を拡張しないと働きようがない状態。
これから冬が来るというタイミングで畑の拡張にNPを消費するのは愚行だし、今日はこれ以上やることがない。
「もうやってもらう作業もありませんので、順番にシャワーでも浴びていてください。私はその間にご飯をお作りします」
「本当に日本の料理が食べられるのか。未だに実感が湧かないな」
「俺も! 食べたら泣いちまうかもしれないわ!」
見るからにウキウキの四人に先に戻っていてもらい、私は後片付けをしながら何を作ろうか考える。
これまで作ったオムライスやドリアでもいいのだけど、大人数作ると考えると少し大変。
そうなると……作る料理は限られてくる。
「佐藤さん、今日は何の料理を作るのでしょうか? それと……私も頂けるのですか?」
「もちろんですよ。シーラさんにも食べて頂きます」
「ありがとうございます! 今日はずっとそればかりを考えていました」
「シーラさんだけ食べさせないなんてことはないので安心してください。それと…今日はピザという料理を作る予定です。この世界にはありませんかね?」
「ピザ……ですか? 聞いたことはありませんね。どんな料理なのですか?」
「生地の上にソースと具材とチーズを乗せて焼く料理ですね」
「あー、ビンコットみたいな料理でしょうか?」
「ビンコットという料理を知らないのですが、多分似たような料理だと思います」
ピザっぽい料理はきっとあるだろうし、それがビンコットなる料理なのだろう。
ただ、シーラさんの表情が浮かないことから、ビンコットはさほど美味しい料理ではないようだ。
「きっと佐藤さんが作るビンコット……いえ、ピザはきっと美味しいのでしょうね。食べるのが今から楽しみです」
「好きな料理の一つですので、私も食べるのが楽しみです」
お互いに顔を見合わせて笑い、片付けを済ませてからキッチンへと向かった。
ちなみにだけど、ピザは人生で一度も作ったことがない。
ただ、ピザ作りの動画は何度も見たことがあるし、きっと作れる……はず。
自信はほどほどにしかないのだが、とにかく調理を行う。
まずはピザ生地作りから。
準強力粉、砂糖、ドライイースト、水、そしてオリーブオイルを適量加えたものをとにかく混ぜ合わせる。
そして混ぜ合わせたものに塩を加え、更によく捏ねていく。
混ぜている最中は不安しかなかったけど、予想以上に生地っぽくなっているな。
捏ね終えたものを丸くし、常温で放置。
その間にオーブンを温めつつ、具材を切っていく。
用意した具材はトマトとバジルとベーコンのみ。
具材をシンプルにした分、チーズには少しお金をかけた。
やはりピザといえばチーズが命であり、モッツァレラチーズとカマンベールチーズをふんだんに使用すれば、他が多少駄目でもきっと美味しくなるはず。
私はそう願いつつ、具材の準備が整ったところで生地も良い感じに寝かせることができた。
ピザっぽく丸く伸ばして、耳の部分は少し分厚めに。
そして、自家製のトマトソースに先ほど用意した具材を乗せ――チーズをこれでもかというほど乗せる。
後はこれをオーブンで焼けば、ピザが完成するはず。
予想以上に簡単で驚いているが、見た目は既に抜群に美味しそう。
ワクワクしながらオーブンに入れ、しばらく待っていると……良い匂いが香り始めた。
ベーコンとチーズの焼けた良い匂い。
焦げないようにだけ気をつけ、完全に焼けたタイミングでオーブンから取り出す。
チーズのとろけ具合も相まって、めちゃくちゃ美味しそうに仕上がった。
これで不味いということはないだろう。
ここまで上手いこと続きだと、私は意外と料理の才があるのかもしれない。
「ピザが焼き上がりました。もう一枚焼こうと思っていますので、先に食べていてください」
「うっわ! 本当にピザだ! それも……めちゃくちゃ美味しそう!」
「佐藤はピザも焼けるの!? 材料があったとしても、私絶対に作れないんだけど!」
「この匂いだけで泣きそうです。本当に食べていいんですかね?」
「はい。遠慮なく召し上がってください」
「佐藤さん、本当にありがとう。この恩はマジで忘れない」
各々が感謝の言葉を口にした後、一斉にピザを口にし始めた。
唯さんなんかは本当に涙を流しながらピザを食べており、ここまで喜ばれると少し怖くなってくるくらい。
ただ冷静に考えて、この世界に転移してからずっと微妙に美味しくない料理を食べ続けていたんだもんな。
決して過剰な反応ではなく、私も定期的に日本の料理が食べれていなかったら同じような反応をしていたと思う。
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