第462話 違和感
村の中を歩き回っているんだけど、不自然なほどに人がいない。
可能性として考えられるのは、狩りに出かけていることか、リザードマンと抗争が起こったこと。
「誰もいませんね。何だか嫌な予感がします」
「わらわもじゃ。……どうする? 帰るか?」
「原因不明のまま帰れません。生地を売っていた場所に行ってみましょう。女性の方なら、いらっしゃるかもしれません」
「うーん……わらわは帰ってもいいと思うんじゃが」
毎回思うけど、ヤトさんはかなりビビり。
凄い力を持っているんだし、もっと堂々としてもいいと思うんだけどね。
……いや、堂々とはしているか。
「あっ、やっぱり生地のお店にはいるようですよ。中で人影が動いたのが見えました」
「襲撃されて、全員殺されたとかではないみたいで安心したのじゃ! でも、こんなことならシーラも連れてくるんじゃったな!」
「それはそうですが、急すぎたので難しかったです。とりあえず話を聞いてみましょうか」
私とヤトさんは、生地のお店へと入らせてもらうことにした。
中には大勢の巨人族の女性の方がおり、何となく避難しているようにも見える。
「こんにちは。覚えていますか? 以前、生地を頂いた者なんですが……」
「わらわはヤトじゃ! ゴから話は聞いたことがあるじゃろう」
私のことは覚えていないようだったけど、ヤトさんの名前を出した瞬間、ピンときてくれたみたい。
前回も対応してくれたおばさんが応じてくれた。
「あんた、ヤトさんかい! 悪いが、村の男連中はティーブレイクに行っているよ」
「ティーブレイクにですか? この感じだと、狩り……ってわけではなさそうですね」
「ああ。リザードマンが襲撃の準備をしているという情報が来てね。迎え撃ちに行ったのさ」
「やっぱりリザードマンとの抗争なのじゃ! 佐藤、危なくなる前に帰るのじゃ!」
「その方がいいよ。今回は切羽詰まっていた様子だったからね」
村の様子からしてそうかと思っていたけど、今回は大規模な抗争になるみたい。
怖いけれど、このまま見過ごすことはできない。
「情報をありがとうございます。皆さんは大丈夫なんですか?」
「私たちは大丈夫さ。男連中ほどではないけど、それなりに戦えるからね。それに、いざとなったら逃げる準備もできている」
生地屋のおばさんはそう言いながら、後ろを親指で指した。
そこには荷物がまとめられており、本当にいつでも逃げられる準備が整えられていた。
「それなら良かったです。危険が及ぶ前に逃げてください。私の村に来てくださって構いませんので」
「名前を知らないけど、ありがとうね。有事の際は遠慮なく頼らせてもらうよ」
私は巨人族の女性の方々に頭を下げてから、生地屋を後にした。
ここからの動きだけど、ゴさんたちの様子を見に行きたい。
私はただの足手まといになるだけだろうが、ヤトさんがいたら戦況が一変する可能性を秘めているからね。
「佐藤、もしかして帰らないのかのう?」
「ゴさんも友達ですからね。友達は見捨てられません」
「……ぬうぅ。確かに、わらわもゴとは友達じゃ! 様子だけ見に行くかのう」
「ええ、行きましょう。本当に危険と判断したら引きますので、空から近づきましょう」
再びヤトさんの背に乗り、空からティーブレイクに近づいてみることにした。
少し怯えているヤトさんを励ましながら、ゴさんたちの姿を追う。
段々と音が聞こえてき始め、音を頼りに近づいていくと……大きな湖の近くで、巨人族が戦っている姿が見えた。
上空からだから戦況がよく分かるけど、既に戦いは終盤の様相。
そして、立っている人の数を見る限りでは、ゴさんたちがかなりの優勢に思える。
まだ戦意の残っていそうなリザードマンの姿も見えたけど、ここから負けることはないと思う。
「ヤトさん、一気に降り立ちましょう。多分ですが、ヤトさんの登場で抗争が終わります」
一瞬、嫌そうな素振りを見せたものの、覚悟を決めたようで、争っている真ん中に降り立ってくれた。
急に現れた黒い大きなドラゴンに、全員の動きが固まる。
「ゴさん、助けに来ました! それからリザードマンの皆さん! 降伏するのであれば、命までは取りません!」
私はヤトさんの背中から、そう大声で叫ぶ。
勝手に場を収めようとするのはどうかとも思ったけど、これ以上の争いは無駄な被害を生むだけ。
リザードマンが言葉を理解できなかった場合だけが怖かったけど、私の言葉を理解したのか、手にしていた武器を地面へと落としてくれた。
やはり、ヤトさんの登場で心をポッキリと折ることができたみたいだ。
「おお! ヤト様に佐藤さんじゃねえか! 手助けに来てくれたのか!」
「村の女性から話を聞いて、飛んできたんです。すみません。勝手に仕切ってしまいまして」
「いいや、ありがてぇ! みんな! 重傷者から先に怪我人を運べ! 1人も死なすんじゃねぇぞ!」
ゴさんが指示を飛ばし、倒れている巨人族の方が運ばれていく。
念のため持ってきた【ハイヒール】の魔法玉を渡しておこう。
「ゴさん、重傷者にはこの魔法玉を使ってあげてください。【ハイヒール】が込められています」
「ありがてぇが大丈夫だ! パッと見た限りでは、死にそうな奴はいなそうだったからな! ……で、抗争を止めたわけだが、リザードマンの処遇はどうする気なんだ?」
ゴさんにそう言われ、視線を向けると、武器を捨てたリザードマンたちが私の言葉を待っているようだった。
リザードマンも思っていた以上に人に近かったこともあり、つい抗争を止めてしまったけど、ここから先のことを何も考えていない。
思えば、巨人族とリザードマン族は長年の因縁関係らしいし、対応を間違えたらゴさんたちから反感を買うかもしれない。
……とはいえ、争いは良くないことだし、私はしっかりと場を収めることに全力を注ごう。





