第460話 頼もしい兄妹
扉を叩いた瞬間、中からロッゾさんの声が聞こえてきた。
中に入っていいとのことなので、遠慮なく入らせてもらう。
どうやら武器作りを行っていたみたいで、ロッゾさんの家の中はサウナのように蒸し暑い。
そんな熱気を浴び、ここにサウナを作るのもありかもしれないなんてことを考えながら、ロッゾさんの下へと向かった。
「んあ? 誰かと思ったら、佐藤さんじゃねぇか! もうちょっとでいいところだから、もう少し待っていてくれや!」
「もちろんです。気の済むまでやってください」
金属を金槌で叩く音が鳴り響いており、恐らくだけど私の声はロッゾさんに届いていない。
この轟音に負けていないロッゾさんの声量に驚愕しつつ、打ち終えるまで待たせてもらうことにした。
「おう、待たせたな! それで、何の用で来たんだ?」
バケツの水を頭から被ったような汗をかいているロッゾさんにギョッとしたが、一々触れていては本題に入れなそうなのでスルー。
私は軽い謝罪をしてから、本題に入らせてもらうことにした。
「お忙しいところすみません。実は、王都で働ける人を探していまして、ロッゾさんに心当たりはないかなと思って訪ねてきたんです」
「ここじゃなくて、王都で働ける人? 佐藤さん、とうとう王都で商売でも始めるんか!?」
「んー……というよりかは、ここで作った作物を売ったり、『サトゥーイン』のお客さんの手続きをしたりと、王都でやることが増えてきちゃったんですよ」
「なるほどな! 必然的に王都でも人手がいるってことか! ——よし、そういうことなら俺に任せておけ! 知り合いなら山ほどいるから、近いうちに声をかけてやるよ!」
まさかの二つ返事で紹介してくれると言ってもらえた。
なんだかんだ、色々と伝手を辿ることになると思っていただけに、これは嬉しすぎるお返事だ。
「本当ですか! ロッゾさん、ありがとうございます!」
「へっへっへ! いいってことよ! 佐藤さんにはいい思いをさせてもらっているからな!」
「人が集まりましたら、新しいDVDをプレゼントさせてもらいます」
「マジかよ! そりゃ気合いが入るってもんだぜ! ……エロがかかってるとなりゃ、確実に集めるためにシッドにも協力を仰ぐか!」
DVDという単語に目の色を変えたロッゾさんは、腕まくりしてそう言うと、走って家から飛び出していってしまった。
……AVとは一言も言っていないんだけど、まぁこの流れならAVを渡さないとおかしいか。
みんなで見られる名作映画がいいかななんて考えていたけど、AVで人材が集まるなら安いもの。
ロッゾさんとシッドさんの好みそうなものを探しておくとして、早くも私の方の用事が済んでしまった。
シーラさんが戻ってくるまでやることもないし、再びまったりしていてもいいんだろうけど……。
走って王都まで様子を見に行ってくれたシーラさんに申し訳が立たないため、私もロッゾさんの後を追って、シッドさんに話をしにいくことにしたのだった。
シッドさんも、ロッゾさんと同じく二つ返事で了承してくれた。
さらに、冒険に行かないときはシッドさんと一緒に働いているブリタニーさんも紹介してくれるみたいで、凄まじい頼もしさ。
ロッゾさん兄妹には、色々とお世話になりっぱなしである。
そろそろ、ロッゾさんたちのご両親にもお礼を言いたいところだけど、ご存命じゃなかったときが怖いため、聞くに聞けずはいる状態。
そんな盤石の状態が整ったところで、王都からシーラさんが戻ってきた。
走ってきたにしては、早すぎる戻り。
「シーラさん、おかえりなさい。王都の様子はどうでしたか?」
「さすがに大きな違いはありませんでしたね。私が来たことに、レティシアさんが凄く驚いていました」
それはそうだろう。
一昨日帰ったばかりでやってきているのだから、レティシアさん目線では何か大事があったと思うのが普通だもんね。
「驚かせてしまった感じになっちゃいましたね。ちなみにですが、新しい従業員はいましたか?」
「いませんでした。雇う気配もなかったように見えましたね」
「やはりそうでしたか。こちらで用意してあげるのがよさそうですね」
「『ニールマート』の店主は大変そうにしていましたので、早いうちにそうしてあげた方がいいと思います。ロッゾさんの方はどうでしたか?」
話を聞く限りではレティシアさんより、先に『ニールマート』の店主の方が音をあげてしまいそうな感じ。
「無事に協力を仰げました。ロッゾさんどころか、シッドさんとブリタニーさんも伝手を当たってみてくれるそうで、確実に人材は集まると思います」
「おおー! やはり頼りになりますね。ロッゾさん兄妹には頭が上がりません」
「私も同じ思いです。とりあえずはロッゾさんたちの返答を聞き、どなたを雇うかを決めていきましょう」
「ですね。漫画が売れるかどうかも心配でしたが、レティシアさんも心配でしたのでホッとしました」
シーラさんの心からの呟きに、私も大きく頷いて同意する。
どちらかといえば社畜精神だったシーラさんが、完全にホワイト企業の精神に変わってくれているのが嬉しいな。





