第458話 契約内容
子供を受け入れている時点で好印象であり、アランさんは人当たりも良いからね。
私としても、この依頼が成立しそうで嬉しい。
「依頼内容、報酬金額ともに好印象なようで良かったです。それでは依頼を引き受けてくれるということでよろしいでしょうか?」
「ああ。喜んで引き受けさせてもらうよ。ちなみに、パーティメンバー全員が漫画の内容を把握する必要があるのかい?」
「いえ、内容については把握していただかなくて大丈夫です。漫画が売られている場所だけ知っていれば、オールオッケーですので」
「ほー、本当に緩い感じなんだね。分かった。依頼を正式に受けさせてもらうよ」
私はアランさんと握手を交わし、依頼を成立させた。
報酬については、1ヶ月後に成果報酬として支払う取り決め。
途中で辞めたくなった場合は辞めることも自由だが、その際は報酬が支払われないことになっている。
アランさんが散々言っていたように、縛りもほとんど設けていないから、途中で辞めるってことはないだろうけどね。
「契約期間なのですが、3ヶ月更新でも大丈夫でしょうか? 最低でも3ヶ月は依頼させていただき、費用対効果によって続投するかどうかを決めさせていただきたいと思っています」
「ん? 3ヶ月と言わず、1ヶ月更新で構わないよ。僕としても未知な部分が多いし、何なら効果が薄いとまで思っているからね」
「いえ。最低でも3ヶ月は依頼させていただきます。期待以上の効果が出た場合には、次の更新で報酬を上げることも考えていますので」
「更新だけでなく、報酬が上がる可能性まであるのかい? ……最初の変わった依頼内容から察していたけど、随分と策士みたいだね。これはこちらもやる気が出てくるよ」
割と当たり前の内容を伝えたつもりだけど、目の色が変わったアランさん。
お金はいくらあっても足らないと言っていたし、娯楽系よりもお金関連の方がやる気が出るタイプみたいだ。
「割と普通の内容だと思うんですが……。さらにやる気になってくれたなら良かったです。それでは、ひとまず1週間。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく頼むよ。全力でプロモーションさせてもらうからね」
私は再びアランさんと握手を交わしてから、アランさんの部屋を後にした。
1階に降りると、ジョシュ君が待ち構えていたため、持参していた漫画本を手渡すことにした。
「ジョシュ君、出迎えてくれてありがとうございました。こちら、よろしければ読んでみてください」
「ん? これは本か? んー……俺は本は嫌いなんだよなぁ」
「こら、佐藤さんに失礼だよ。それに、ジョシュでも読める本だから」
「えっ? じゃ、じゃあ読んでみる……」
優しいアランさんに注意されたからか、目を丸くさせて本を抱きかかえたジョシュ君。
私のプレゼントで、大好きなアランさんから注意を受けさせてしまったのは申し訳ないな。
「それと、こちらはお菓子です。皆さんと分けて食べてください」
「えっ、お菓子!? お菓子は嬉しい!」
ジョシュ君に、漫画と一緒に隠れて購入した日本のお菓子を渡した。
お菓子の方は本気で喜んでくれており、ほっこりした気持ちになる。
チョコ菓子を選んだし、味もきっと気に入ってくれるはずだ。
あとは漫画も気に入ってくれたら嬉しいんだけど、まぁおまけ程度に考えておこう。
そんなこんなありつつ、アランさんと合流したレイチェルさんに見送られ、私は【ドランクバンク】を後にした。
【超越する愛】、【ドランクバンク】共に依頼をお願いすることができたし、ひとまず私の仕事はこれで終了。
あとは月日が流れるのを待ち、2組のパーティが宣伝してくれた効果を期待するだけ。
異世界でも、プロモーションやマーケティングが成立するのかは単純に興味深いし、成立するのであれば他のものでも活かせるかもしれない。
そんなことを考えながら、私は『ニールマート』へと戻ってきた。
『ニールマート』には数名ではあるけどお客さんがおり、邪魔をしないようにそーっとバックヤードへと向かう。
「戻りました。無事に依頼を引き受けてもらえましたよ」
「さすがは佐藤さんです。私は今日も露店市で売ってきたのですが完売しました。『ニールマート』も客足が増えましたし、今のところ順調そのものですね」
シーラさんは地道に、実売とお客さんを増やしてくれたようだ。
そしてベルベットさんは、『ニールマート』のカウンターに立ち、自ら店員を務めている。
漫画売り場に分かりやすく目を引くポップや、『ニールマート』の看板に漫画の主人公を描いていた。
後者に関しては、後で店主さんに怒られそうだけど、そのおかげも相まってのこの客足だと思う。
『ニールマート』にお客さんがいるところなんか、漫画を売り出すまでは見たことがなかったからね。
実際に、クリスさんの案内役として機能させているお店だから、わざと客が来ないようにしていた節はあるんだろうけど。
どんどんとポップな感じにしていっていいのかという疑問はありつつも、漫画を売りたいという気持ちはクリスさんも同じだろうから大丈夫だろう。
私の打ったプロモーションが機能すれば、もっと客足が増えるだろうし……店員を増やすことも考えないといけないかもしれないな。





