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第42話 冬前


 冬の過ごし方について話し合った五日後。

 日に日に寒くはなっているけど、未だに雪は降っていない。


 私とシーラさんは寝起きの日課となっている、温かいコーヒーを飲みながら体を温めつつ目を覚ます作業を行っていると……扉がノックされた。


 来訪者といえば、ベルベットさんか美香さん達のどちらか。

 どちらか分からないが、寒い外で待たせるのも悪いため、私は急いで扉を開けた。


「うぅー……さっぶい。いきなりで悪いけど中に入れてもらっても大丈夫か?」

「佐藤、急に来てごめんね。早朝に出発して来たんだけど、外が寒すぎて!」

「どうぞどうぞ。中に入ってください」


 訪ねて来たのは美香さん達だった。

 今日は全員で来たようで、後ろには寒そうにしている将司さんと唯さんの姿もある。

 雰囲気的にも悪くなさそうだし、美香さんがあの後も問題なくやれているようで一安心。


「おはようございます。今日は全員で来たのですね」

「シーラ、おはよう! うん、今日はみんなで来た。この間はありがとう」

「いえいえ、私は何もしていませんので。あの後、気まずい空気とかになっていませんか?」

「うーん……。全部本音で話したから、なってないよ!」

「それなら良かったです」

「心配してくれてありがと!」


 シーラさんは聞きづらいことでもズバズバと聞いていく。

 私はヒヤヒヤしながら聞いていたのだが、気まずい空気とかにもなっていないようで良かった。


「それで、今日は何か用事があってきたんですか? それとも単純に遊びに来た感じでしょうか?」

「遊びに来ただけ! いつでも遊びに来ていいって言ってたから!」

「美香が大丈夫って言ってたから来たんだけど、一気に四人で押しかけて大丈夫だったか? 佐藤さん達が迷惑なら、すぐに帰るけど」


 蓮さんが気を使ってそう言ってくれたのだが、後ろで寒そうにしている将司さんと唯さんは絶望的な表情を見せた。

 早朝の一番寒い時間帯にやって来て、そのままとんぼ返りは辛すぎるだろう。


「全然迷惑なんかじゃありませんよ。ただ……その代わり、畑仕事を手伝ってくれると助かります」

「畑仕事ですか? 私達、やったことないんですけどできますか?」

「そんなに難しいことじゃないので大丈夫だと思いますよ。畑仕事を手伝って頂けたら、日本料理を振舞わせて頂きます」

「それマジか! 俺は絶対に手伝うぜ!」 


 立ち上がってガッツポーズを見せたのは将司さん。

 今さっきまで寒そうに震えていたのが嘘のように、一気に元気になった。


「俺ももちろん手伝う。ここに来た目的の一つはトマトが食べたかったっていうのがあるから。ただ……佐藤さん、四人分も食べさせてもらって大丈夫なのか」

「ええ。いつ来ても大丈夫なように貯めていましたので、気にしないで大丈夫ですよ」

「やったー! トマトが本当に美味しかったからなぁ! またトマトが食べられるのは嬉しい!」

「トマトだけで涎が出そうになるとは、この世界に転移するまでは想像もしていませんでした」

「確かに! どちらかといえば、俺は生のトマトは好きじゃなかったからな!」


 日本の料理が食べられると知り、一気に活気づいてきた蓮さん達。

 ……ただ、トマトのみに焦点が当てられているのが気になる。

 トマトを使った料理ではあるけど、しっかりと日本の料理を振舞うつもりなのだけどな。


「一つ誤解があるようですが、生のトマトではなくちゃんとした料理を作るつもりですよ。トマトを軸にしてほしいのはありますが、別にトマトを使わない料理も作れます」

「……え。生のトマトが食べられるだけじゃないのか!?」

「美香と蓮が生のトマトって言っていたのですが……その話、本当ですか?」

「確かに美香さんにはトマトしか振舞っていませんでしたが、別の食材も買うことができますので料理を作ることができます」

「てっきりトマトだけかと思ってた! 偶然ポケットに種が入っていて、トマトだけは育てられるって認識だったもん!」


 美香さんには説明したと思っていたけど、上手く伝わっていなかったようだ。

 とにかく嬉しそうにはしてくれているし、良いサプライズになったようだし結果オーライか。


「とりあえず……簡単な料理なら作れますので、畑仕事を手伝って頂けると幸いです」

「もちろん手伝わせてもらうよ。それと……言われていた魔力塊も集めてきた。売る以外の使い道がないし、こっちも貰ってくれ」


 蓮さんはそう言うと、麻袋に入った魔力塊を渡してくれた。

 日が経っていないし、まだ集めきっていないと思って畑仕事をお願いしたのだが、まさかの魔力塊を渡されてしまった。


「もうこれだけの魔力塊が集まったのですか?」

「ああ。ダンジョンを攻略していれば、魔力塊は勝手に集まっていくからな。一ヶ月分でこれくらいの魔力塊は集められた」

「そうなんですね。てっきり集められていないと思って畑仕事をお願いしたんですが、魔力塊を渡してくれるなら手伝わなくて大丈夫ですよ。この家の中でゆっくりしていてください」

「いえ、絶対に手伝わせて頂きます。トマトだけならまだしも、日本の料理が食べられるのであれば――これっぽっちの魔力塊では対価に見合いません」

「そうそう! やる気マックスだし、ガンガン働かせてもらうぜ!」


 軽くお断りしたのだが、唯さんと将司さんは断固として拒否。

 蓮さんと美香さんも激しく頷いているし、これは手伝わせてしまう流れになってしまった。


「ありがとうございます。そういうことでしたら、手伝ってもらってもよろしいですか? あと、ちなみにですが……あくまで家庭料理の域を出ていないですからね。料理の腕にはあまり期待しないでください」

「料理の腕なんて期待してないよ! 日本の料理が食べられるってだけでやる気に満ちてるんだから!」

「そういうこと。佐藤さん、よろしく頼む」


 こうして、蓮さん達と一緒に畑仕事を行うこととなった。

 お決まりのマッシュとライムに驚き、そして紹介も済ませてから、全員で畑仕事に取り組む。


 四人への指導係はシーラさんが担当してくれ、私とマッシュで先に仕事をこなす。

 一通り教え終わった後は各々仕事に取り掛かってくれ、手際はそこまでよくないのだが……四人というのが非常に大きい。


 溜まっていた作業がどんどんとなくなっていき、私とシーラさんとマッシュで一日かけて行う仕事が、なんと午前中の内に終わってしまった。

 “日本の料理”にやる気を見せてくれたのもあっただろうけど、この広い畑が初めて狭く感じた瞬間でもあった。



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