第450話 漫画の発売日
ゴさん達が巨人族の村へ帰ってから、僅か3日後。
王都に滞在しているレティシアさんから私の下に手紙が届き、どうやらクリスさんから『ニールマート』宛てに大量の漫画が送られてきたとのこと。
いよいよであり、この漫画を売るのが私の大きな仕事だ。
タイミング的にも、夏に向けて農業を一時中断する予定だったことから、私はしばらく王都に滞在し、漫画を売ることに専念したいと思う。
ということで、ニクスに馬車を動かしてもらい、急いで王都へと向かうことにした。
漫画を描いているということを秘密にしている以上、村のみんなには何も言えていないものの、作者を秘密にしたままシーラさんには協力してもらうことにした。
さすがに私一人では心許ないし、ユーザー目線で見ることができるシーラさんの手は借りたいからね。
「随分と急で、凄く嬉しそうにしていますね。私はまだ何も知らないのですが、王都で何かあったのですか?」
「はい。実はですね、私が……監修していた漫画が届いたみたいなんです。今回はその漫画を売るために、王都で戦略を練る会となっています」
監修という言い方は仰々しいと思ってしまったけど、情報を伏せなければいけない関係上、この伝え方が最善だと思った。
「へー! 漫画を監修していたんですか? 娯楽室にある漫画を複製して売るというのとは、また違うんですよね?」
「違いますね。完全にオリジナルの漫画になります」
そう言うと、シーラさんはパチパチと拍手をしてくれた。
自分のことのように喜んでくれており、隠し事をしていることが申し訳なくなってくる。
「凄いです! さすがは佐藤さんですね。まさかこの世界で漫画を誕生させてしまうとは思ってもいませんでした。描いたのも佐藤さんなんですか?」
「いえ、私は描いていません。ちょっと事情が複雑でして、誰が描いたのかまでは言えないのですが……申し訳ありません」
「隠し事をされているなんて思いませんので、気にしなくても大丈夫ですよ。でも、その漫画を読むことはできるんですよね?」
「もちろんです。シーラさんにはユーザー目線での意見をもらいたく、今回はご協力をお願いしたんです」
「なるほど。重要な役割に少し緊張しますが、ユーザーとしての目線で意見させていただきます」
やはりシーラさんは頼もしすぎる。
何でもかんでもシーラさんを頼ってしまっているのは申し訳ないけど、私にとっては一番欠かせない人物となっているからね。
そうこう漫画の話をしていると、あっという間に王都に着いてしまった。
もう少し話したかったけど、実物を見ながら補足していけばいいと思う。
馬車をいつものところへ止め、ニクスにはお留守番をしてもらってから、私たちは早足で『ニールマート』に向かった。
別に早足でなくとも数分ぐらいしか変わらないんだけど……楽しみという心情から、つい早足になってしまっている。
すぐに『ニールマート』に辿り着いた私たちは、そのままの勢いで扉を開けると、レティシアさんとベルベットさんの姿があった。
ベルベットさんを呼びに行こうと思っていただけに、既にいてくれているのはありがたい。
「あら、佐藤とシーラ。早かったわね」
「はい。レティシアさんの手紙をもらって、急いでやってきましたので」
「その大量の箱の中、全てが漫画なんですか?」
「ええ、そうどす。昨日の晩にクリスさんから送ってきはりました。中身、確認してもろてもよろしいやろか?」
レティシアさんにそう促されたため、私は一通り箱の中身を確認した。
全てにちゃんと漫画が敷き詰められており、ワクワクすると同時に不安にも駆られてくる。
4人での話し合いや馬車の中では、売れない理由がないと思っていたのに、こうして大量の漫画を目の当たりにすると非常に怖い。
1冊も売れなかった場合、ここにある全ての漫画を在庫として抱えることになるからね。
「……佐藤も怖くなったの? 私もちゃんと怖いから安心して」
「売れると信じていたんですが、この量を見ると震えますね」
「私なんか、まだ自信がないからね。売れなかったら、携わってくれたみんなに申し訳なさすぎる」
ベルベットさんの手は小刻みに震えていた。
……これはいけないな。
ベルベットさんは既に面白い漫画を描いてくれたし、売り出すことを提案したのも私。
そんな私が怖がっちゃ駄目だし、これ以上ベルベットさんに負担をかけさせるのもよくない。
「大丈夫ですよ。私も一瞬心配になりましたが、良いものは絶対に売れますから」
「佐藤は本当に凄いわね」
「凄いのはベルベットさんです。――んん、とりあえず作戦会議を練りましょうか! シーラさんは読んでみてもらえたら嬉しいです」
「いいんですか!? 早速読ませてもらいます」
コソコソ話を止め、気を引き締め直して作戦会議を行うことにした。
みんなの作戦を一通り聞きつつ、私のインフルエンサー作戦も話して、これからどうするかを3人で練ったのだった。





