第448話 巨人族の来訪
4人での話し合いを終えてから約1週間が経過した。
お祭りムードはとうに消え、気温も上がってきたことで段々と夏を感じる。
今年は模擬戦大会の時期が例年よりも遅かったこともあり、夏を感じるタイミングに違和感を覚えるものの、私の感覚に関係なく夏はやってくる。
そろそろ種や苗植えを止めて、夏の作物に備えなくてはいけない――そんなタイミングで……数人の巨人の方々がやってきた。
遊びに来てほしいと伝えてはいたけど、まさかこのタイミングでの来訪とは思っていなかったな。
もう少し到着が遅かったら、畑には何も作物がない状態になっていただろうし、ギリギリ間に合ったという感覚だ。
「おー! 本当に佐藤さんがおったな! 言われた通り、遊びに来させてもらったぞ!」
「ゴさん、遊びに来てくれたんですね。遠路はるばるお疲れ様です」
ゴさんの他には、長髪の巨人のラーさんもいる。
決勝戦で勝利したボさんの姿はないため、村はボさんに任せて、最高戦力でやってきてくれたのかもしれない。
「いやぁ、遅くなって悪かった! リザードマン共の動向を見計らってからじゃないと、遠征することができないからズレ込んでしまった」
「いえいえ。遅いなんて思っていませんし、こうしてやってきてくれただけで嬉しいです」
「……本当に歓迎してくれているんですね。私はてっきり、ゴ村長がお世辞を真に受けたのだとばかり思っていました」
「佐藤さんはそんな方じゃないって言ったろう! ……まぁ俺もお世辞だと言われ過ぎて、こうして話すまでは不安だったけどな! がっはっは!」
胸を撫で下ろすポーズを見せた後、豪快に笑ったゴさん。
確かに、ゴさん以外には伝えていなかったもんね。
内容的にも怪しいと思われてもおかしくないし、私を信じてやってきてくれたのは良かった。
「お世辞なんかじゃないので安心してください。それよりも、どうしますか? 旅路でお疲れのようでしたら、まずは休めるところを案内します」
「いいや! 疲れていないと言ったら嘘になるが、ゆっくりしていられる余裕もないからな! 本当は1週間くらい滞在させてもらいたいところだが、すぐにでも農業を教えてもらって、巨人族の村に帰りたいと思っている!」
せっかく来てもらったのに、それは非常に残念。
とはいえ、リザードマンと揉めているという話だったし、長居している余裕がないんだと思う。
私の本音を言うのであれば、リザードマンたちとも交流を行い、リザードマン側にも農業を広めたいところだけど……。
話が通じるかどうかが怪しいため、まずは巨人族の方々の食料難を解消することだけを考える。
「分かりました。それでは早速畑を案内しますね。ゴさんは農業について、どれくらい知っているんですか?」
「作物を育てるってざっくりとした知識だけだな! わざわざ育てようと思ったことは一度もない!」
「私達、巨人族の男は生産よりも戦いを好みますからね。農業をしようなんて考えたことすらありませんでした」
「それでは、本当に1からお伝えした方がよさそうですね」
すぐに帰りたいとのことだったけど、数日で教授し切れるか不安になってきた。
そもそも農業に向いている性格でもなさそうなのがネックだけど、ここで育てている作物を食べてもらえれば、絶対にやる気になってくれるはず。
そんな考えからスキルの畑へとやってきた私たちは、まずゴさんたちに実っている野菜を食べてもらうことにした。
スキルの畑に成っている作物は全て異世界産の作物だけど、食べられないことはないからね。
「こちらが私たちの育てている作物になります。生だと美味しくないですが、1つ食べてみますか?」
「そんなに簡単に食べてもいいのか? 食べてもいいなら食べてみたい!」
「もちろんです。ただ、本当に美味しくないですからね」
ゴさん以外の方も手を挙げたため、私は全員分の野菜を収穫して渡した。
育てている中では、唯一生で食べられる野菜ではあるものの、本当に美味しくはない。
どんな反応をするのか見ていると、一番最初にかぶりついたゴさんが渋い顔を見せた。
続いた皆さんも微妙だったようで、表情はパッとしていない。
「んー……。本当に美味しくはないな! 決して食べられなくはないが!」
「ですね。若干の青臭さが気になります」
ゴさんとラーさんの言葉に同意するように、全員が大きく頷いた。
「そうだと思います。こちらがベーシックな作物になるのですが、生では基本的に食べないですね」
「料理をすれば食べられるようにはなるのか?」
「はい。調理法によりますが、美味しくなるものもありますよ。それで、奥の畑で育てている作物なんですが……生でも美味しい野菜となっております」
今の野菜を食べたばかりだからか、私の言葉にもそんなにテンションが上がっていない様子。
ハードルを下げてもらうために、まずこちらの世界の作物を食べてもらったんだけど、下げすぎてしまったかもしれない。
私は少しだけ申し訳なく思いつつも、このお陰で地球の野菜を食べた時のインパクトは絶大なはず。
巨人族の皆さんの反応を楽しみにしつつ、奥の畑へと移動した。





