第447話 売り込み方
模擬戦大会が無事に終わった翌日。
王都へと連れて行かれたコルドさんの件は気になりつつも、今日は気持ちを切り替えて、漫画の件について話し合う。
ベルベットさん、ローゼさん、クリスさんが集まる機会は少ないため、この機会を逃すことはできない。
大会に参加したベルベットさんとローゼさんは、まだ大会気分から抜けていないと思うけど、どうするのかをしっかりと決めておかないといけないからね。
「ベルベットさん、ローゼさん、おはようございます。昨日で模擬戦大会は終わったのに、残ってもらってすみません」
「……大丈夫です。漫画のことですもんね?」
「ふぁーあ。色々と面倒ごともあったせいで、昨日は全然眠れなかった。……でも、漫画のことなら絶対に話し合いに参加するわ」
ローゼさんもベルベットさんも見るからに気合いが入っており、熱量を持って取り掛かってくれていることが嬉しい。
そんな2人の熱量と努力に応えるためにも、今回の1作品目から大ヒットにしたいところ。
「ありがとうございます。クリスさんが来る前に確認をしたいのですが、販売価格は銀貨3枚。そのうち銀貨2枚をクリスさんに渡し、残りの銀貨1枚を3人で分け合うって形で相違はないですか?」
「うん、私はそれで問題ないわ」
「……私も問題ありません。何なら報酬なしで、銀貨2枚で売ってもらってもいいくらいに思ってます」
「いや、さすがにそれは駄目です。戦略としてはアリかもしれませんが、2人にはしっかりと対価をもらっていただきたいので」
銅貨3枚でも少なすぎるくらいだし、売れたらもっとお金が入るようにしたいとは思っている。
まぁベルベットさんもローゼさんも、お金よりも売れ行きだって本気で思ってそうだけどね。
「なら、銀貨3枚で異論はない。ちゃんと売れるように頑張ってね」
「……売るなら、売れてほしいです」
「そこは私とクリスさんが全力で頑張ります。なので、2人は面白い続きを書いてください」
こちらの話がまとまったところで、クリスさんを呼ぶことにした。
やってきたのはクリスさん1人であり、推薦枠で来ていたイリマさんとミルキーさんの姿はない。
「あら、もう集まっていたの? 遅れてごめんなさい」
「いえ、最終確認をしていたので全然大丈夫です。イリマさんとミルキーさんはもう帰ったんですか?」
「ううん。この辺りをブラついていると思うわ。ご飯に感動していたから、畑を見て回っているんじゃないかしら?」
どうやらまだ帰ってはいないようだ。
国を跨いでやって来てくれたみたいだし、楽しんで行ってくれたら嬉しい。
「それなら良かったです。おもてなしをしたいと思っていましたが、バタバタしていて、もてなす時間が取れませんでしたので」
「勝手に連れてきただけだから、気にしなくて大丈夫よ。それよりも本題に入りましょう」
軽い雑談をしてから、いよいよ本題に入る。
ベルベットさんとローゼさんの表情が強張ったのが分かった。
「そうですね。売値はやはり銀貨3枚でお願いします。こちらの取り分は1冊につき銀貨1枚。クリスさんは銀貨2枚を上手く使って、生産と報酬を渡してあげてください」
「本当に銀貨1枚でいいの? 私は売る側も兼ねているから、売値が銀貨3枚でいいのはありがたすぎるけど」
「銀貨3枚で大丈夫よ。お金よりも売りたいから」
「……ですね。大ヒットさせてください」
「ここまで魂が籠る仕事は久しぶりね。任せておいて。必ず大ヒットさせるから」
クリスさんは自信満々にそう言って、ベルベットさんとローゼさんと握手を交わしていった。
3人ともプロって感じがして、凄くかっこいいな。
「私も頑張りますので、何でも言ってください」
「もちろんそのつもり。佐藤さんには王都での売り込みをしてもらうつもりだからよろしくね」
「私が王都担当なんですね。任せてください」
「ちなみに、王都での売り込みが一番重要だから。人の多さはもちろんのこと、流行りも王都から生まれることが多いからね」
そんな何気ない一言に、思わず生唾を飲んでしまう。
絶対に大ヒットさせると豪語していたものの、プレッシャーがかかると途端に緊張してしまう。
「ふふふ、冗談よ。まぁ本当に国内で一番人が多い街だし、流行りも王都から始まることが多いのも本当だけど、レティシアと協力すればそう難しくないわ」
「レティシアさんですか? 確かに超有能な方ですもんね」
「ええ。私の方でも言っておくから、佐藤は気楽に売り込んでちょうだい。異世界流のやり方でやってくれると嬉しいかも」
異世界流の売り込み方……か。
動画やWEBの広告だったり、インフルエンサーに案件を飛ばすのが主流になっていたから、試せそうにない。
何かテレビのような媒体があれば、広告を打つことも有効だと思うんだけど、この世界には存在しないからね。
無難なところでいうと、人気店に置かせてもらうことか……あとは異世界のインフルエンサーに頼むのは効果的かもしれない。
もちろん、異世界のインフルエンサーといえば冒険者。
有名冒険者にお金を払い、マーケティングの一環を担ってもらうのは、日本流の広告の打ち方と言えると思う。
「その顔は何か思いついた顔?」
「はい。私にできそうなことは全て試させてもらいます」
「よし。なら、条件は揃ったわね。4人で力を合わせて、一大ブームを巻き起こしましょうか」
私たちは円陣を組み、気合いを入れた。
今後のためにも絶対に売れてほしいし、私も全力で動くとしよう。





