第446話 ボロボロでヘロヘロ
ベルベットさんに報告をしたあとで試合会場に戻ると、どうやら決勝戦が行われるみたいだ。
準決勝は既に終わってしまっており、見たかったけどこればかりは仕方がない。
コルドさんを少し恨みつつ、準決勝の試合結果から確認することにした。
第1試合は蓮さん対ガロさん。
蓮さんはボロボロの状態ながらも何とか勝ち上がってはいるが、既に疲労困憊となっていた。
対するガロさんは、比較的余裕な状態。
とはいえ、既に闘士を引退しており、一昨日の予選から参加しているため、見えない疲労は溜まっているはず。
どちらが勝つか予想がつかないカードだったけど……どうやら蓮さんが3-2の辛勝を収めたらしい。
草木の生い茂った会場での試合と書かれているため、ガロさんの本領を発揮しにくい場所だったのも影響していたんだと思う。
それでもボロボロの状態で勝ち上がったのは凄いし、準決勝でさらにボロボロになっているのも気になる。
もう1つのカードは、ライム対ジューゾーさん。
ミスディレクションの使い手であり、謎めいた予選突破者だ。
ライムにも対抗できるんじゃないかと密かに考えていたが、結果は順当にライムの3-0での勝利。
変則的な攻撃はライムの十八番でもあるし、結果からもジューゾーさんが翻弄されまくったことが分かる。
この試合結果により、決勝戦は蓮さん対ライムに決まったようだ。
ライムは去年に引き続き決勝戦まで勝ち進んでおり、決勝の対戦カードは2年連続の“勇者”相手。
去年は美香さんに負けてしまったため、雪辱を果たすために気合いが入っているはず。
そんなライムに対し、ボロボロでヘロヘロの蓮さん。
美香さんからライムの情報を叩き込まれているようだけど……右耳から入って、そのまま左耳から抜けているように見える。
アールジャックさんとの死闘から決勝戦まで勝ち上がっただけでも凄いからね。
蓮さんの奮闘にも期待したいところだったけど……。
自由に暴れ回るライムに抵抗する術も力もなく、決勝戦とは思えないほどの速度でライムが勝ってしまった。
指示をしているのに動かない蓮さんに、美香さんが怒っているけど、こればかりは仕方がない。
私は準決勝でガロさんを負かしたことを褒めてあげたいと思う。
「模擬戦大会の勝者はライムー! 大きな拍手をお願いします!」
決勝戦は盛り上がりに欠けたものの、去年のリベンジを果たしたライムには大きな拍手が送られた。
正直な話、美香さんには滅法弱いものの、ライムが強すぎる節がある。
成長速度も半端ないし、進化する度にグンと強くなるからね。
他の従魔たちはあまり成績を残せなかったものの、模擬戦大会だから出場できていない従魔もいる。
来年からは、人と魔物を分けてもいいかもしれない。
そうすれば、アッシュやクロウといった従魔たちも参加できるようになるからね。
毎回決勝戦に顔を出すライムを見て、そんな構想を練りつつ、私は閉会の挨拶を行った。
それから成績を残した方への賞品の授与と、優勝者予想の的中者へお菓子を渡した。
これまで模擬戦大会を見てきた方はライムの強さを分かっているため、今大会は的中者が爆増。
多めに用意していたお菓子が全てなくなってしまったものの、喜んでもらえたし良かったと思う。
その後はお疲れ様会を行い、解散……って予定だったんだけど。
ヴェレスさんが捕らえたコルドさんの引き渡しがある。
「佐藤さん、捕まえた盗人ってのはこいつで間違いないんだな?」
「はい。直接本人から聞きましたので、間違いありません」
「これだけ強者が集まっている中、よく窃盗を働こうと思ったわね。まぁ窃盗犯が出るとは思ってなくて、危うく成功させてしまうところだったけど」
「俺も完全に油断していました」
ドニーさんとベルベットさんが確認に来てくれ、コルドさんは王都からやってきた兵士たちに連れられていった。
窃盗犯1人に過剰すぎる人数の兵士が来たのは引っかかったものの、冷静に考えたら王女様であるベルベットさんがいるのだから当たり前か。
「これからコルドさんはどうなるんですか?」
「事情聴取を行って、指示を出したやつらを根こそぎ引っ捕らえるつもりだ。情報の正確さによっては刑が軽くなるが、まぁ数年は牢で暮らすことになるだろうな」
ちゃんと対処してくれるようで一安心。
話した限りでは、そこまで悪い人には見えなかったものの、ヴェレスさんがいなかったら態度も違っただろうからね。
「それで佐藤に1つ提案があるんだけど、いい?」
「もちろんです。どんな提案でしょうか?」
「王都の兵士を何人かここに送ろうと思っているの。もちろん兵士の費用は国が全て払うわ」
「えっ? いいんですか? 守ってくれるならありがたいですが……」
勝手に作った村に、国の予算を使っていいのかという気持ちになってしまう。
隔離されているということもあるけど、正直税金とか全く支払っていないからね。
「もちろん構わないわ。この村の存在は王都にとっても、国にとっても大きくなっているから。そして何より、私がここが危険な目に遭ってほしくないの」
「ベルベットさん、本当にありがとうございます。本当に大丈夫なようでしたら、ぜひお願いします」
「許可してくれて良かったわ。私とドニーで選抜した兵士を送るから、もう少しだけ待ってて」
ありがたい提案をしてもらい、不安だった気持ちも少し解消された。
転移してきた当初からそうだけど、ベルベットさんには本当に頭が上がらない。
この感謝を少しでも返すため、漫画は絶対に大ヒットさせたいな。





