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38歳社畜おっさんの巻き込まれ異世界生活~【異世界農業】なる神スキルを授かったので田舎でスローライフを送ります~  作者: 岡本剛也
第4章

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第445話 不審者


 部屋の中には縛られている人がおり、私が見たことのある人物だった。


「この人は本戦出場者の方ですよ! ヴェレス、本当に不審者なんですか?」

「そうだったのですか? ただ、不審者なのは間違いありません。大会中に色々な場所に出入りしていましたし、実際に鞄やポケットの中からは、盗んだと思われるものも出てきました」


 捕らえられた人を見て、ヴェレスさんが間違えて捕らえたのかと思ったけど……。

 今の話を聞いた限りでは、本当に不審者というか窃盗犯で間違いない。


 この方の名前は分からないけど、予選を突破した一人で、怪しい裏稼業っぽさが滲み出ていたこともあり、大会前から注目していた。

 ただの窃盗犯だとは思っていなかったけど、私から避けるようにしていたし、この方の行動を思い返してみたら不思議ではない。


「そうだったんですね。今は気絶しているんでしょうか?」

「はい、気絶させております。起こしますか?」

「お願いします。暴れた場合もお願いします」

「任せてください」


 ヴェレスさんは優雅にお辞儀をしてから、窃盗犯の方の顔を軽く掴んだ。

 すると、窃盗犯の方は飛び起きるように目を覚まし、ヴェレスさんの顔を見て恐怖に慄いている。


「おはようございます。ここがどこだか分かりますか?」

「お、お前は何者だ! こんな化物を飼っているなんて俺は聞いていないぞ!」

「ふふふ、化物とは失礼ですね。また少し怖い思いをしますか?」


 純粋な笑顔だから余計に恐ろしい。

 再び窃盗犯の方の顔を掴もうとしたところを、私が呼び止める。


「ヴェレス、ちょっと待ってください。そちらの方とお話がしたいです」

「かしこまりました。嘘はなく話すのですよ。うっかり悪夢を見せてしまうかもしれません」

「ひ、ひぃ!」


 ヴェレスさんに一体何をされたのか分からないけど、窃盗犯の方の顔は恐怖で引き攣りきっている。

 この流れだと少し話しづらいけど、とりあえず名前と目的を尋ねよう。


「私のことは知っていると思いますが、模擬戦大会の主催者の佐藤です。あなたは本戦の出場者の方ですよね? お名前はなんでしたっけ?」

「お、俺はコルドだ」

「コルドさんですね。ヴェレスの話によりますと、盗みを働いていたとのことですが本当でしょうか?」

「……………………」

「嘘は駄目ですよ?」

「ほ、本当だ」

「理由は何でしょうか? 単純に盗みを働きたくて近づいたんですか?」


 そんな私の質問に、再び沈黙したコルドさん。

 ただの窃盗なら、ここで沈黙するのはおかしい気がする。


「何か理由があるんですね。誰かに依頼されたとかでしょうか?」

「……そうだ。裏の経由で、ここの物を盗んでこいと依頼された」

「裏の経由とは何でしょうか? 誰からの命令かは分かりますか?」

「い、いや。本当に知らねぇんだ! 依頼を受けたのはダニエルっていう情報屋からだが、ダニエルも末端の人間だと思う」


 何だか凄まじい犯罪の臭いがしてきた。

 ただの窃盗だったらまだ良かったんだけど、大きな犯罪に巻き込まれかけているんだったら嫌だな。


「なるほど。ちなみにコルドさん以外にも、依頼を受けた方はいるんですか?」

「あ、ああ。知っているので言うと二人。ただ、どちらも予選落ちして既に帰っている」

「その二人の情報も詳しく教えてください」


 何となくだけど、これ以上は何も知らない気がする。

 これまでが平穏だっただけに、こういったことがあると嫌でもピリついてしまうな。


 それだけ、この別荘近辺が栄えてきた証拠でもあるんだと思う。

 光あるところに影ができてしまう。

 肝に銘じないといけないな。


「――こんなところでしょうか? それでは、また眠っていてください」

「あ、悪夢は嫌だ!」


 コルドさんはそう叫んだものの、ヴェレスさんが顔を掴んだ瞬間に眠ってしまった。

 ドラクエでいうラリホーみたいな、対象を眠らせる魔法を使えるのだろうか?


「佐藤様、こんなところになります」

「本当に不審者でしたね。捕まえてくださり、ありがとうございました」

「いえいえ。この場所は私の安息の場所でもありますので。害をなそうとする不届き者は許しません」


 そう語るヴェレスさんの目は本気だ。

 気に入ってくれたのは嬉しいし、非常に心強いんだけど……行きすぎないかだけが少しだけ怖い。


「それで、この窃盗犯についてはどうなされますか?」

「王都に連絡をして、引き取りに来てもらいます。ベルベットさんやドニーさんがいますので、すぐに来てくれると思います」

「分かりました。それでは、あとは佐藤様にお任せいたしますね。私が必要になったら、いつでもお呼びください」

「はい。頼らせていただきます」


 笑顔で頷いたヴェレスさんと別れ、私はベルベットさんの下へ向かうことにした。

 本当はドニーさんの方が良さそうだけど、まだ勝ち残っていたからね。


 それにしても……やはりヴェレスさんの力は凄まじいな。

 コルドさんもギリギリながら予選を突破したわけだし、弱者ではないからね。


 そんな相手を赤子の手を捻る感覚で圧倒していたし、模擬戦大会に参加していたら圧倒的優勝候補だったと思う。

 参加できないことを残念に思いつつ、私はベルベットさんに今回の件の報告を行ったのだった。



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