第41話 溜まったNP
あっという間に一ヶ月が過ぎた。
相変わらず、私とシーラさん、それからマッシュで畑仕事を行っており、夜はスレッドが働いてくれている。
人手を増やすことも考えていたけど、今の畑の規模なら何とか回せているため、この一ヶ月はNPを貯めることに専念した。
そのお陰もあって、今の所持NPは38597。
これだけNPがあれば何でも出来てしまいそうな気がする。
実際に色々な選択肢を取れるのだけど……一つだけ懸念点がある。
その懸念点はというと、徐々に気温が下がり始めていること。
この世界に転生してきたばかりの時は、半袖で丁度良い気温だったけど、今では長袖でないと寒くて震えるくらいの気温。
早朝や夜は更に冷え込んでおり、アウターを着込まないとやっていけなくなるぐらい寒くなっているのだ。
いつまでも安定して農業を行えると思っていた私にとっては衝撃的であり、この気温の低下を意味することは冬が近いということ。
寒くて布団から出たくない気持ちを押し殺し、私はブルブルと体を震わせながらリビングに向かう。
先に起きていて、温かいコーヒーを淹れてくれているシーラさんに感謝しつつ、私は今日までずっと聞けずにいたことを尋ねることにした。
「シーラさん、もしかしてなんですが……この国に冬ってありますか?」
「はい、もちろんです。来月には雪も降り始めると思いますよ」
やはり冬が存在したようだ。
雪が降り始めたら、もちろんのこと農業はできない。
【異世界農業】で作り出した畑は作物が育ちやすいとはいえ、雪が止むまでは何も育てることはできないだろう。
そうなると、必然的にNPを得られる手段がなくなるということ。
これは私にとって大打撃といっても過言ではない。
「寒くなってきたとは思っていましたが、やはり冬があるのですね……」
「随分と落ち込んでいますが、何か不都合でもあるのでしょうか? もしかして寒さが苦手——とかですか?」
「確かに寒いのは苦手ですが、雪が降ってしまうと作物を育てられなくなるんですよ。ですので、雪が降る期間は農業ができなくなります」
「ええー!? そ、そうなのですか? 雨が降っていても大丈夫でしたので、てっきり雪でも大丈夫かと思っておりました」
「雪は作物が育たなくなりますね。ですので、冬の期間は何もできなくなります」
一応、雪の中で育てるキャベツというのは聞いたことがあるけど、知識がないと育てるのは不可能だと思う。
とりあえず……冬の期間はおやすみになりそうだ。
「それは……本当に残念ですね。どこか別の場所でやれたりはしないのですか?」
「どうでしょうかね。洞窟のような場所があれば、そこに畑を作ることもできなくはないでしょうが……」
裏山を探せば、小さな洞窟は見つかると思う。
スキルによって農地を作れるため、その洞窟内に農地を作ることは可能だろうけど、ここから通うとなるとかなり厳しいものがある。
雪の積もった山を歩き、農地を作った洞窟まで移動。
そこから農業して、帰りも雪の積もった山を歩かないといけないとなると……私には少々厳しい。
「やっぱり難しいですか?」
「難しいと思います。私もNPを増やすためにももっと作物を育てたいんですけどね。ちなみにですが、冬の期間はどれくらいなのでしょうか?」
「2~3ヶ月ってところですね。佐藤さんは、この冬の間は何をするのですか?」
「今日、冬が存在するという事実を知ったので何も考えていません。……ただ、せっかくですので色々やってみたいとは思っています」
「色々ですか……楽しそうですね。私もお供してもよろしいですか?」
「もちろんですが、シーラさんは実家とかに帰らないのですか? 私のいた世界では冬の時期は実家に帰るという風習があったので、よければ家に帰るとか――」
「帰りません。多分ですが、二度と戻らないと思います」
シーラさんには珍しく、強い口調で断ってきた。
詳しいことは聞いていないのだけど、これは何か深い事情がありそうだ。
貴族といえばドロドロとした家族関係ってイメージが強いし、シーラさんは喋りたくない様子のため深くは立ち入らないようにしよう。
「そうなんですね。王城にも戻る予定はありませんか?」
「はい。王城にも戻りません」
「なるほど。でしたら、冬の時期も一緒に何かやりましょうか」
「ええ。佐藤さん、よろしくお願い致します」
シーラさんが残るということは、戦闘系の何かを考えてもいいかもしれない。
それこそ、ダンジョンに一度行ってみるというのもアリ。
模擬戦を行った時のシーラさんは楽しそうだったし、やはり戦闘自体は好きなようだからね。
私が何もできないのが問題ではあるけど、ライムとマッシュがいればパーティとしては安定するはず。
もしもの場合は、ベルベットさんや美香さんに助力をお願いしよう。
「それでは雪が降り始めるまでは農業の方を頑張りましょうか」
「はい。頑張りましょう」
気を取り直した後、朝食を取ってから外で畑仕事を行った。
この世界には天気予報もないため、いつから雪が降ってくるか分からないのだが……とにかく雪が降らないことを願いつつ、畑仕事に専念したのだった。
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