第438話 大会開始
記念すべき第1試合は、一昨年のチャンピオンであるライム対ワルフさんという好カード。
ワルフさんは招待枠ではないため、昨日の予選から参加してくれていた。
予選ではガロさんに敗れてしまったものの、難なく通過していたし、相手がライムじゃなかったら優劣がつかないくらいの強さを持っている。
ただ……過去の優勝者であり、直近で色々と旅をしながら強くなっているライムには手も足も出せず、自慢のパワーを見せる場面もなく敗れてしまった。
ライムが一昨年のチャンピオンとして会場を温めてくれたお陰で、第2試合以降も大盛り上がり。
様々な会場で同時に試合が行われていたこともあり、全ての試合を追うことはできなかったものの、1回戦から非常に楽しませてもらった。
特にフリースさん対シルヴァさんの試合は、1回戦にしてはもったいないくらいハイレベルで、拮抗した内容だった。
そして結果も3-2のギリギリでのフリースさんの勝利であり、フリースさんはファンが多いこともあって会場が揺れるぐらい沸いていた。
単純な実力ではシルヴァさんが勝っていたものの、今大会の特殊な試合会場にアジャストしていたのがフリースさんであり、その差が結果として現れたと思う。
ちなみにギミックは大きなものではなく、足場が泥、草が生い茂っている、棒がいくつか立っている――といった小さなものだ。
とはいえ戦いにくさは絶対に感じるだろうし、環境への適応速度が勝利への鍵になることは間違いない。
そんな中、フリースさんは参加者の中ではいち早くやってきて、色々と確認もしていたからね。
初参加時は適当な気持ちだった感は否めなかったけど、剣聖が無様な結果を残し続けられないというプライドもあってか、今大会への意気込みは一番だと思う。
関わりはあまりないけど、本気で向かってくれる人は応援したいという気持ちが湧いてくる。
……と、1回戦から熱戦を演じたフリースさんばかり語ってしまったけど、他のカードは基本的に番狂わせはなく、みんな順当に勝ち上がってくれた。
やはり予選から参加の方の成績は振るっておらず、全勝組――知人以外での唯一突破したのは例のフードの男性のみ。
試合は見ることができなかったものの、ジョエル君を下しており、その実力が高いことを証明している。
フードの男性については、後で実際に戦ったジョエル君に尋ねるとして、もう2回戦が始まるみたいだ。
今大会は参加者も多いため、2回戦も1回戦同様に同時多発的に行われていく。
私は今、第1試合が行われていた会場にいるけど、シーラさんの試合が見たいため移動することにした。
シーラさんは棒がいくつも立っているギミックの会場で試合らしく、対戦相手はイザベラさん。
ルチーアさんもそうだけど、ダークエルフは運動能力に長けており、超近接戦を得意とする、ゴリゴリ攻めてくるタイプだ。
相性的には悪くないと思っているけど、棒のギミックがどう試合に影響するかが読めない。
「あっ、佐藤さん。見に来てくれたんですね」
「はい。1回戦は見られなかったので来ました」
「ありがとうございます! 勝ちますので見ていてください」
「……なんか、かませ犬として扱われているみたいで嫌。シーラを倒して、見に来てくれた佐藤の前で恥をかかせてあげるから」
「そんなことにはなりません」
イザベラさんの言葉に、好戦的な笑顔を見せながら返答したシーラさん。
理屈ではないけど、私はその笑顔を見て大丈夫だと思ってしまった。
試合は予想していた通り、イザベラさんがガンガン攻撃を仕掛け、主導権を無理やり取りに動く形。
ただ、シーラさんもこの動きを予想していたようで、近づこうとするイザベラさんに対し、試合会場に立っている棒を上手く使って距離を取っていた。
棒のせいで上手く戦えていないイザベラさんと、棒を使って上手く立ち回っているシーラさん。
フリースさんの時もそうだったけど、今大会の勝敗にはギミックが大きな鍵となっている。
そして、ギミックを上手く利用したシーラさんが終始圧倒し、イザベラさんに何もさせず完勝した。
立ち回りも戦い方も素晴らしかったな。
「ふふ、私の勝ちですね。イザベラさん、ありがとうございました」
「くぅー……悔しい! 棒が邪魔すぎるって!」
イザベラさんは棒を恨めしそうに軽く叩いているけど、こればかりは仕方がない。
活用したシーラさんが上手かったなぁ。
2人の感想も程々に、すぐに次の試合が行われるようだ。
マッシュ対シャノンさんという気になるカードであり、こちらの試合も非常に楽しみ。





