第436話 大会の朝
漫画の件で盛り上がっている中、着々と準備が進んでいき、今日は模擬戦大会当日。
昨日は予選が行われ、勝ち残った16名が本戦出場となっている。
去年も参加してくれたシャノンさんやハリー君も参加してくれ、無事に予選を勝ち上がっている。
更に、噂を聞きつけて参加してくれたスピンさんとアールジャックさん。
そしてガロさんも予選を通過し、楽々と本戦への出場を果たしていた。
この3名に関しては、出場してくれるなら推薦枠として招待していたんだけど……。
特に連絡がなかったこともあり、予選からの出場となってしまった。
予選会でこの3名と当たった方たちは不運すぎるし、少しだけ申し訳ない気持ちはあるものの……どちらにせよ、勝てなければ優勝はないからね。
運が悪かったと割り切って、1人の観客として楽しんでもらいたい。
「佐藤さん、おはようございます。いよいよ模擬戦大会の本戦ですね。私にとっては1年の集大成を見せる場なので緊張します」
リビングで思い詰めた表情をしていたシーラさんが声をかけてきた。
確かに年々大きな大会にはなっているけど、カジュアル大会には変わりないし、気負わずに挑んでもらいたいところ。
「シーラさん、おはようございます。気負わなくても大丈夫ですよ。カジュアル大会ですし、楽しむことが大事ですから」
「ありがとうございます。なるべくリラックスして挑ませて頂きます」
そうは言っているものの、相変わらず体を強張らせているシーラさん。
こればかりは緊張するなと言われても難しいか。
下手に声を掛けたら逆効果になってしまいそうな気がしたため、私は笑顔で頷きながら離れることにした。
本番までには気持ちを作ってくれるだろうし、シーラさんに任せたほうがいいはず。
ということで、速めに別荘から出てきた私は、本戦出場者のみんなに声をかけることにした。
まずは初参加組の方々への挨拶を行おう。
まだ朝が早いということもあり、外に出てきている人は少ないものの、初参加組の方はこの時間から準備をしている人が多い。
まずは……予選を突破した方に声をかけよう。
「おはようございます。昨日は凄かったですね」
「ああ、おはよう。……君は主催者の方か。レベルの高い大会を開催してくれて感謝する」
この片目の隠れた忍者っぽい格好の方は、昨日の予選で全勝突破した強者。
組み合わせに恵まれたというのはあるだろうけど、予選で全勝したのはアールジャックさんとガロさん、それからこのジューゾーさんだけだからね。
「いえいえ、ジューゾーさん含めて参加してくれる方のお陰ですから。それで1つお聞きしたいのですが、ジューゾーさんは冒険者なのですか? 昨日、色々な方に聞いたのですが、ジューゾーさんを知っている方がいなかったので気になっていたんです」
予選を全勝突破できる実力者なら、名前が知れていないとおかしいからね。
格好もかなり奇抜だし、無名なのが気になりすぎていた。
「……冒険者のようなものだな」
「やっぱりそうだったんですね。他国から来たんですか?」
「う、うむ。遠いところから来させてもらった」
急に歯切れも悪くなり、返答も曖昧。
多分、冒険者ですらなさそうだけど、詮索はしないほうがよさそうだ。
「そうだったんですね。格好も奇抜なので他国の方だと思っていました。今日は楽しんで、優勝を目指して頑張ってください」
「ああ、手加減せずに優勝させてもらう」
再び独特なストレッチを始めたジューゾーさんから離れ、別の参加者の方に挨拶を行っていく。
ジューゾーさんほど面白い参加者はいないものの、予選突破者の中で1人だけ気になっている方がいるんだよね。
予選をギリギリ通過した方で、目立っていなかったんだけど……雰囲気が非常に怪しい。
背は私より低く、フードを深く被った中年の男性。
服装や装備を見ても、何となくで応募してきた軽ノリ参加者なんだけど、時折見せる身のこなしの軽やかさが常人ではない。
雰囲気も怪しいし、裏の方の臭いがプンプンとしている。
こうして話しかけようか迷っている最中も、私の視線に気づいているようで、逃げるように遠ざかってしまうしね。
本当に裏の方だったときが怖いため、1人のときは話しかけられないが、色々な意味で注目の人物だ。
予選突破者はこんなところであり、残りは私が声を掛けた推薦枠の方々。
去年の参加者でお馴染みの方がほとんどだけど、唯一、クリスさんにお任せした推薦枠の方だけがはじめまして。
結局クリスさんは前乗りしてくれていたが、推薦枠の方はギリギリまで来なかったからね。
大会が始まる前にお話しておきたいし、クリスさんを探して紹介してもらうとしよう。





