第431話 進化ラッシュ
魔族の本は一通り読んだらベルベットさんに貸すことを決め、私たちは魔力塊を持って従魔たちの下へ向かうことにした。
これまでにないくらい大量の魔力塊であり、入手場所が魔王の領土だったことが影響しているのか、黒光りしていて質の高さが伺える。
「色が綺麗なだけでなく、凄く大きいですよね。質が高いということなんでしょうか?」
「そうだと思いますよ。質の高さで喜んでくれるかは分かりませんが、ライムたちにプレゼントするのが楽しみです」
「喜んでくれたら嬉しいですね。あわよくば、進化も見てみたいです」
シーラさんのその言葉に、私は力強く頷く。
最近は進化らしい進化をしていないからね。
レベル1から10までと、レベル50から60までの成長速度が違うということなんだろうけど、そろそろみんなの進化が見たい。
労いの気持ちもあるけど、進化することも期待しつつ……まずはマッシュの下へとやってきた。
「あっ、マッシュとモージが畑にいますね。今日の業務は終わっているはずですが、何をしているんでしょうか?」
「最近、マッシュがモージから魔法を教わっているみたいです。佐藤さんが魔法にハマったのをきっかけに、マッシュも真剣に取り組み出したみたいですよ」
よく見てみれば、確かにモージから水魔法を習っているように見える。
最近は遠出ばかりしていたため、魔法の練習ができていなかったけど、モージに負けていられないな。
「私もモージから教えてもらいたいです。……魔法では負けられません」
「ふふ、応援してますので頑張ってくださいね」
私は拳を強く握り、すぐに魔法の練習に移りたくなった。
……けど、今は絶対にその時じゃない。
「――と、完全に話が逸れかけましたが、今は魔力塊をプレゼントしないとですね。マッシュとモージのところへ行きましょう」
魔法の練習をしているところ申し訳ないけど、一時中断してもらって近くに来てもらった。
マッシュもモージも首を傾げ、なんで呼ばれたのか分かっていない様子だったけど……袋から取り出した魔力塊を見て、ぴょんと飛び跳ねた。
「ミラグロスさんたちから頂いた魔力塊です。今度会った時はお礼を言ってくださいね」
マッシュはぶんぶんと首を縦に振り、モージは口元からよだれが垂れてしまっている。
宝石みたいな綺麗さはあるけど、全くもって美味しそうではないんだけど、魔物たちのご馳走なのだから本当に不思議だ。
とりあえず、マッシュとモージに、袋の半分の魔力塊をさらに半分にしてプレゼントした。
手渡した瞬間、勢いよく食べ始め、美味しさにぴょんぴょん飛びながら食べている。
「ふふふ、可愛いですねー」
「はい。見ているだけで癒やされます」
可愛いマッシュとモージの食事シーンに癒やされていると……急にモージの体が光り輝き始めた。
これまで一度も進化したことのなかったモージの進化。
癒やされていた気持ちを切り替え、モージの変化に注視する。
「モージが進化し……ましたか?」
「ん、んー? 私にも光っていたように見えました。……けど、どこが変わりました?」
私とシーラさんはお互いに顔を見合わせる。
光ったことを意に介さず、魔力塊を食べているモージを見ているけど、変化した箇所が本当に分からない。
「あっ、佐藤さん! モージの首元の毛が3色になっています!」
「あれ? 元々3色じゃなかったでしたっけ?」
「いえ、絶対に2色でした!」
シーラさんがここまで自信満々に言っているということは、本当に三色になったんだとは思う。
……けど、進化にしては地味だなと思ってしまうなぁ。
「モージは進化していないと思っていましたが、こうやって見た目では分かりにくい進化をしていたんですかね?」
「その可能性はありますね。私も今回は光ったところを見て変化に注視したから気づけましたが、光ったところを見ていなかったら気づけませんでしたから」
「何はともあれ、モージも進化できて良かっ――」
そこまで言いかけたところで、今度はマッシュが光り輝き始めた。
怒涛の進化ラッシュで気持ちが追いついていないけど、ひとまず思考を停止してマッシュの進化に注視する。
光が収まり、現れたのは……傘の部分が赤と黒のグラデーションで綺麗になったマッシュ。
つるんとした光沢感もあって、つい触りたくなるフォルムをしている。
「おお、マッシュも進化しましたね」
「マッシュは変化が分かりやすくてありがたいです」
「一目で分かりますもんね。それにしても、やはりミラグロスさんから頂いた魔力塊は、凄い質が高いものだったんじゃないですか?」
「進化ラッシュですもんね。100%の確率で進化していますし、他の従魔たちも楽しみです」
マッシュとモージが全ての魔力塊を食べ終えるのを見守ってから、次の従魔の下へと向かうことにした。
気持ち的には、進化してどう強くなったのかまで確認したかったところだけど、今は時間がないからね。
どう変化したかはまた後日確認するとして、今日中に配り終えるためにも、大急ぎで次の従魔の下へ向かったのだった。





