第39話 食の探求
ベルベットさんが来て、あっという間に六日目。
今日は全力で取り組み、お昼休憩も取らなかったことで、お昼過ぎには全ての畑仕事を終わらせることができた。
暗くなってしまう前にベルベットさんは帰ってしまうため、最後のご馳走を今から作る予定。
それにしても……本当に時間が経つのが早い。
会社員時代は毎日時計を見ながら、早く時間が過ぎてくれと願っていたし、入院してからも暇すぎて一日が経つのが本当に遅かった。
時間が経つのが早いということは、今の生活がそれだけ楽しいという証拠であり、一緒に居てくれているシーラさんやベルベットさん、それからライムやスレッド、マッシュにも感謝をしなくてはいけない。
「ねぇ! 何を感慨深そうに突っ立っているのよ。朝も控えていたし、お腹が空きすぎて限界だから早くご飯が食べたいわ!」
「急かすようで申し訳ありませんが、私もベルベット様と同意見です。早く佐藤さんのご飯が食べたいです!」
「すみません! すぐに作りますので、お風呂にでも入っていてください」
立ち止まって色々と思いに耽っていたところ、二人にドヤされてしまった。
特にシーラさんの目が本気だったため、私は急いで台所に行って調理を行うことにした。
今日作るのは、オムライスに使った残りの米、それから鶏モモ肉、玉ねぎ、しめじ、牛乳にトマト。
そして、チーズをふんだんに使って――ドリアを作る。
こちらもトマトベースのご飯になるけど、牛乳を使ってのホワイトソースも作るため、ミートソーススパゲティやオムライスとはまた違った味わいになるはず。
この別荘には大きなオーブンが常備されていることから、ドリアとピザだけはずっと作りたいと思っていた。
今回はお米があるからドリアにしたが、近い内にピザを作ってみたいな。
そんなことを考えながら調理を始め、あっという間に下準備が整った。
既にご飯も炊き方も分かっているし、不安な要素が一切ないまま後は焼くだけの状態となっている。
購入したチーズをケチらずに大量に乗せ、オーブンに入れて時間をセット。
シーラさん曰く、魔動のオーブンらしいので、焦げないように火力だけには気をつけつつスイッチオン。
ドリアが焼き上がるのを眺めながら、付け合わせのミネストローネも作っていく。
万能なトマトに感謝しながら、ミネストローネを作り終えたタイミングで――ドリアも焼き上がった様子。
香ばしいチーズの香りが食欲をそそり、私のお腹がぐぅーと鳴った。
「完成しました。たっぷりチーズのドリアとミネストローネです」
「うわー……本当に美味しそうですね! 早く食べたいです!」
「うっわ! オムライスに続いて、これも本当に美味しそう。佐藤、あなた料理人でもやっていたの?」
「いえ、この程度の腕じゃ料理人なんてできません。ただ、この世界よりかは幾分か料理がし易い環境だったので、その影響はあるかもしれません」
日本では材料はなんでも手に入ったし、プロの料理人のレシピがネットで楽々手に入れることができた。
それどころか、作っている様子を動画で見ることまでできたからな。
今思えば、プロの料理人が自らのレシピを公開するなんて、かなりハチャメチャなこと。
今更ながら惜しみなくレシピを公開してくれていた人達に感謝をしつつ、食前の挨拶を済ませてドリアを頬張った。
美味しい! 抜群に美味しいな。
トマトの風味のあるご飯と、そのご飯の上にかかっているホワイトソース。
そして、ケチらずにふんだんに乗せたチーズが最高にマッチしていて、我ながら完璧な仕上がりになっている。
「はふっ、あっつい! ……けど、凄く美味しいわ! やっぱり佐藤は料理人になるべきね。お城で食べるどんな料理よりも美味しいもの」
「最高に美味しいです! この料理が食べられるだけで、生きていて良かったぁってなります!」
「そう言って頂けて光栄です。私の腕っていうよりも、食材の質が良いだけなんですけどね」
「謙遜しなくていいわよ。こんな短時間でこんなに美味しい料理。食材があったとしても私は作れないもの」
「私も無理ですね! 佐藤さんは天才です!」
褒めてもらえるのは嬉しいが、褒められすぎると逆に恥ずかしくなってくる。
ただまぁ、二人の嬉しそうな顔を見れただけでも、NPを奮発して作った甲斐はあった。
それからオムライス同様、三人共にあっという間にドリアを完食。
ミネストローネも美味しかったが、こちらはもうワンパンチ欲しかったというのが本音。
「はぁー、至福のひと時でした! ドリアもミネストローネも美味しかったです。佐藤さん、ご馳走様でした」
「何度も言うけど、本当に美味しかった。あまり食に興味はなかったんだけど、佐藤の料理のせいで目覚めてしまいそうで怖いわね」
「ぜひ目覚めてくれたら嬉しいです。そして、全国の美味しい料理を集めて、是非ここに持ってきてください」
「私も食べてみたいです! 全国各地の美味しい料理!」
「うーん。それも面白そうだけど、佐藤の料理以上の美味しい料理が見つかるとは思えないのよね……」
腕を組みながら、色々と考えてくれている様子のベルベットさん。
確かにこの世界の食材は微妙なものが多いが、どこかにはきっと美味しい食材が眠っているはず。
ゲームやアニメのファンタジー世界では、魔物を食材として扱う――なんて場面もある訳だしね。
この世界では魔物を食べるという文化はないようで、探求すれば見つかりそうな気配はしているんだけどなぁ。
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