第422話 ワープゲート
大量の魔力塊までは許容できたものの、家宝はさすがに頂くことはできない。
「感謝してくれていることは十分伝わりました。ただ、ワープゲートだけは渡しちゃ駄目です」
「いいや、一度受け取ると言ったのだから受け取ってもらうぜ」
「ん。こっちも譲れない」
そこから約30分ほど、押し問答を行ったんだけど……全く折れてくれなかった。
このままでは一生話し合いが続いてしまうと悟った私は、折衷案として返却をすることを前提に一時的にお貸ししてもらう――ということで話をつけた。
「――ですので、とりあえずは貸してもらうという形で受け取ります。ただ、絶対に返却します」
「分かった。とにかく受け取ってくれて良かった」
「やっと全部渡せた。受け取ると言ったのに、こんなに渋るとは思ってなかった」
「ええ、予想以上に時間がかかりました。佐藤さんは頑固なところがありますね」
「まぁ結果オーライってとこだろ。最終的には受け取ってくれたわけだしなァ」
何だか私が意固地になったことになっている。
家宝をプレゼントしようとする方が、絶対に変なはずなんだけどなぁ……。
「それで、佐藤さんはここからどうするのだ? すぐに帰る予定なのか?」
私が腕を組んで首を捻っていると、ゴッドフリードさんがそう尋ねてきた。
せっかくやって来たわけだし、ティルガンシアの街を見て回りたいと思っているけど、見て回れる状況なのかが一番の問題。
「ティルガンシアの街を見て回りたいんですが、私が見て回ることは可能なんでしょうか? 魔族と人間は敵対関係にありますし、人間を嫌っている方がいたら行かない方がいいのかなとも思っています」
「もちろん、人間を嫌っている魔族もいるだろうが……基本的には問題ない。佐藤さんのことについては、街の者には説明しているからな。感謝している魔族の方が圧倒的に多い」
「ん。私がついていれば、襲われるってことは絶対にない。ティルガンシアを見たいなら、私が案内する」
「そうそう。佐藤さんに盾突く恩知らずな奴がいたら、俺がしっかりと分からせてやるぜ?」
「いやいや。嫌悪感を抱いてしまう方がいてもおかしくありませんし、暴力さえ振るってこなければ、見逃してあげてください」
年配の方とかは、負の感情を捨てきれなくてもおかしくないからね。
地球でも他国との問題は色々と難しかったし、逆に反発してしまうことを考えたら、力で強制はしてほしくない。
「佐藤さんがそう言うなら、穏便に済ますしかねぇなァ。とはいえ、佐藤さんに嫌悪感を抱いている人間はいないから心配しなくていいと思うぜ?」
「それなら嬉しいんですが……。とりあえず、今日はティルガンシアの街を見させていただきたいと思います」
「分かった。そういうことならば、今日はここに泊まって、明日帰るといい。部屋の準備もしておこう」
ゴッドフリードさんはそう言うと、どういう手段を取ったのか分からないが、セバスさんが部屋へと招き入れられた。
声に出して呼んだわけではないため、正確には招き入れたのかどうかも分からなかったんだけど、当たり前のような態度で指示をしているからね。
ゴッドフリードさんが何かしらの方法で、セバスさんを呼んだことは間違いないと思う。
テレパシー的な手段があるのかな、なんてことを考えていると、どうやら手配が完了したみたい。
「セバスが客室を用意してくれる。今日はそこに泊まるといい」
「ゴッドフリードさん、何から何までありがとうございます」
「礼などいらない。娘や息子がお世話になっているからな。今日はもてなさせてもらう」
「ありがたいですが、本当にお気遣いはいりませんから」
そう言ったものの、ゴッドフリードさんは気合いを入れているようだし、もてなす気満々に見える。
楽しみではあるけど、ワープゲートも貸してもらってしまったし、さすがにもてなされてばかりだ。
「部屋の準備に時間がかかるだろうから、荷物をこの部屋に置いて、街に行ってみよう。私が案内する」
「ミラグロスさん、よろしくお願いします」
「なら、俺は食料でも取ってくるとするかァ」
「私はセバスたちのお手伝いをしてきます」
部屋を早々に出ていったゼパウルさんとファウスティナさんを見送ってから、私たちもゴッドフリードさんの部屋を後にした。
「色々と面倒くさくてごめん。流れでここに泊まることになっちゃったし」
「謝る必要はないですよ。泊まることができて嬉しいですし、面倒くさいなんて思っていないですからね」
「それなら良かった。父が気合い入れていたし、きっともっともてなしてくると思う」
「これ以上は本当に大丈夫なんですが……既に申し訳ない気持ちがありますし」
「後ろで静観していましたが、本当に色々と貰っていましたもんね。あそこまで困惑している佐藤さんを久しぶりに見ました」
ワープゲートと聞かされた時は本気で焦ったからね。
何とか丸く収まった気はするけど、貸してもらうだけでも負担が大きい。
「それだけ佐藤さんの功績は大きいってこと。街を見れば分かると思うよ」
「そうなんですか? 正直、自覚がないんですけど……魔族の街を見られるのは楽しみです」
今のところ、会ったことがある魔族はアバスカル家の皆さんだけ。
魔族ごとに容姿の違いがあるのかも分からないけど、セバスさんやマーサさんがミラグロスさんたちと似たような容姿をしているし、見た目にはそんなに違いはないのかもしれない。





