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38歳社畜おっさんの巻き込まれ異世界生活~【異世界農業】なる神スキルを授かったので田舎でスローライフを送ります~  作者: 岡本剛也
第4章

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第419話 魔王の領土


 洗濯機に入ったかのように、ぐるぐると視界が回り続ける。

 上下左右が分からなくなりつつも、正面を進むミラグロスさんに必死でついていく。

 1分ほど歩き続けると、ようやく前方に光が見えてきた。


「着いた。お疲れ様。……佐藤さん、大丈夫?」

「だ、大丈夫です。少しだけ目を回してしまいました」


 初めてのワープ体験だったけど、ひどく目を回すということが分かった。

 ただ、1分ほど回され続けるだけで安全に辿り着くのだから、便利なことには間違いないんだけど……体調が優れていないときは嘔吐するであろうレベルで辛い。


「最初は目を回すよね。でも、慣れれば何ともないから」

「そうなんですね。早く慣れたいところです」


 正直、一生慣れることはなさそうではある。

 私だけでなく、シーラさんも目を回しているようなところだけは少し安心。


「それで、ここはどこなんでしょうか? 私たちはもう魔王の領土にいるんですか?」


 目頭を押さえながらそう尋ねたシーラさんに対し、ミラグロスさんはゆっくりと頷いた。


「もう魔王の領土。というか、私たちの住んでいるティルガンシアって街の中」

「街の中なんですか。ワープゲートって凄いですね」

「その分、大量の魔力が必要だけど。……私の家と街の中。先にどっちが見たい?」

「ミラグロスさんの家は近いんですか?」

「ん。ここは私の家の物置だから。家は隣にある」


 どちらが先に見たいかでいえば、もちろん街の中なんだけど、魔族の街にいきなり向かうのは少しだけ怖い。

 まずは慣らすという意味も込めて、ミラグロスさんのお家から窺わせてもらおうかな。

 顔見知りであるゼパウルさんとファウスティナさんもいるだろうしね。


「なら、まずはミラグロスさんのお家から紹介してもらってもいいでしょうか?」

「もちろん。それじゃ案内するからついてきて」


 ミラグロスさんについていくように、埃っぽい物置を出る。

 物置を出た目の前に、ミラグロスさんのお家があったんだけど……とにかく大きい。

 王城ほどではないけど、家と分類される中で限界の大きさだと思う。


「すごく大きなお家ですね。ミラグロスさんもお嬢様だったんですか?」

「そんなんじゃない。変なこと言ってないで行こう」


 いいところのお嬢様ではありそうなんだけど、あまり呼ばれたくない呼び方なのかもしれない。

 以後気を付けようと心に留めておきつつ、ミラグロスさんについてお家の中に入ると――頭を下げて出迎えてくれたのは執事とメイド。


 執事さんの方は白髪の男性で、渋いながらもダンディーな方。

 メイドさんは私よりも若干年上であろう、ふくよかな女性の方。

 どちらも額の部分にねじれた角が生えており、人間っぽいけど人間ではないことが一目で分かる。


「ミラグロス様、おかえりなさいませ」

「セバス、様はつけなくていいって言ってるでしょ」

「これは失礼しました。お嬢様、そちらにいる方が人間のご友人の方ですか?」

「お嬢様も……もういいや。そう、佐藤さんとシーラ。丁寧に接して。あと自己紹介も」

「かしこまりました。はじめまして。アバスカル家で執事をしております、セバスと申します。よろしくお願いいたします」

「同じくアバスカル家でメイドをしているマーサと申します。よろしくお願いしますね」


 深々と頭を下げながら、丁寧な挨拶をしてくれたセバスさんとマーサさん。

 そんな二人を見て、私も慌てて自己紹介を行う。


「はじめまして。ミラグロスさんの友人の佐藤と申します。本日はお邪魔します」

「佐藤さんに仕えているシーラと申します。よろしくお願いいたします」


 私とシーラさんも頭を下げ合い、挨拶を行った。

 シーラさんの私に仕えている発言は気になったものの、ここで訂正すると色々とややこしくなるため、ひとまずスルーすることに決めた。


「それでは応接室にご案内いたします」

「あー、大丈夫。このまま父の部屋に行くから」

「このまま向かうのですか? お嬢様、旦那様にご確認はされておりますか?」

「してある。みんな集まってるから大丈夫」


 ミラグロスさんは面倒くさそうにそう言い残すと、スタスタと歩き始めてしまった。

 私は少し困り顔をしているセバスさんとマーサさんに会釈をしてから、先を進むシーラさんの後を追う。


「執事さんとメイドさんがいるって凄いですね。出迎えられたときはびっくりしました」

「家が大きいから、その管理のために仕方なく雇ってる感じだよ。セバスとマーサが死んで、兄の代になったら家も小さくする予定だから、執事とメイドがいるのもあと少しだと思う」

「そうなんですか? 他人事の考えですが、お家を小さくしてしまうのももったいない気がしてしまいます」

「佐藤さんも、ここに住んだら絶対に分かる。広すぎるのは超不便」


 ミラグロスさんの切実な話を聞きながら歩いていると、大きな扉のある部屋へとたどり着いた。

 どうやらここが、ミラグロスさんのお父さんの部屋らしい。


「――ん? 誰だ?」


 ミラグロスさんがノックをすると、部屋の中から返事があった。

 声の感じ的には非常に落ち着いた雰囲気があり、ゼパウルさん、ファウスティナさん、ミラグロスさんの中では、ミラグロスさんに一番近い印象を受ける。


「ミラグロス。佐藤さんとシーラを連れてきたから入る」


 そう言ってから、部屋の扉を開けたミラグロスさん。

 どんな方なのか期待と不安が入り交じりながら……私も部屋の中へ入った。



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