第409話 スライムの数
新年度が始まり、あっという間に1週間が経過した。
徐々に忙しくなり始め、畑の広さを改めて実感するようになったが、畑を全面使っても作業は回せており、今のところ問題はない。
新しい作物を育てる楽しみもあり、毎日楽しく農作業を行うことができている。
宿のほうも、今のところクレーム1つなく営業できており、再開初日から連日大賑わいだ。
外から訪れる人も増え、辺境の村とは思えないほどの活気にあふれている。
レティシアさん曰く、この村の近くで商売をやらせてもらえないかという話がかなりの数寄せられているようで、やり方次第では一気に観光地化することも夢ではないらしい。
……とはいえ、今はまだ人手不足が否めず、風呂敷を広げすぎると収拾がつかなくなるのは目に見えている。
そのため現在は、レティシアさんに審査をお願いし、信用できると判断した商人の方を数人だけ選び、試験的に商売をしてもらうという方向で動いている。
宿ももう1棟建ててもいいと思っているし、規模を拡大していくことを考えると、今はとにかく人手が足りないなぁと強く感じる。
今後の方針についてあれこれ考えながら、私は仕事終わりに1人で川沿いを歩き、ライムのもとへ向かった。
ライムとはちょくちょく会ってはいるものの、昨年完成したスライムの住処にはまだ行ったことがないからね。
確か、この先に作ったとシッドさんが言っていたはずだけど……。
きょろきょろと辺りを見回しながら歩いていると、川沿いに大きなアスレチックのような建物が見えてきた。
「もしかして……あれがスライムの住処?」
楽しそうな場所にしてあげてほしいとは頼んだものの、まさかここまでアスレチック要素満点の場所になっているとは思っていなかった。
それに、なんというか――妙に活気があるように思える。
私の記憶では、スライムの数はそれなりに多かったけど、あんな大きな施設を埋めるほどではなかったはずだ。
首を傾げながら、私は早足でスライムの住処――いや、スライムパークへと近づいた。
スライムパーク近くの川では、複数の小さなスライムたちが水鉄砲をどこまで飛ばせるかの勝負をしている。
そのスライムたちにも見覚えがないため、やはり確実に数が増えているようだ。
「あっ、ライム。私に気づいて出迎えに来てくれたんですか?」
水鉄砲勝負を眺めながら歩いていたところ、スライムパークからライムがぴょこんと現れ、お出迎えをしてくれた。
銀色の体はさらに磨きがかかっており、だんだんとメタルチックなボディになっている。
この色のスライムを見ると、どうしてもドラクエのメタルスライムを思い出してしまう。
ライムを倒したら、経験値がたくさんもらえるのかもしれない。
「初めて来ましたが、すごくいい場所ですね。住んでいて純粋に楽しそうです」
ライムも気に入っているのか、嬉しそうにピョンピョンと飛び跳ねた。
全体的に高さのある設計で、飛び降りられる場所も無数にあり、スライムならではの独特な構造になっている。
落下ダメージもないのはもちろん、腰痛や肩こりとも無縁だろう。
スライムのぷよぷよボディは本当に羨ましい。
「そういえば、スライムの数が一気に増えましたが、どうしたんですか? 繁殖した――ってわけではないですよね?」
ゼロではないだろうけど、それにしても増えすぎている。
そんな私の疑問に対し、ライムはポヨンポヨンと体を揺らしながら、懸命に説明しようとしてくれているが……何を言いたいのか、さっぱり分からない。
ライムは知能も高く、私の言葉を理解してくれているのだが、いかんせん私が汲み取れない。
マッシュも喋れないものの、ジェスチャーが分かりやすく、さらに絵も下手ながら描けるからね。
今回も通訳として、マッシュを連れてくるべきだった。
「ライム、せっかく伝えようとしてくれているところ申し訳ないですが、全く分かりません」
ライムはショックを受けたように体を細長く伸ばし、そのままシュンとしぼんでしまった。
感情はしっかり伝わってくるのに、意思疎通ができないのはやっぱり悲しい。
「ライムは悪くないので大丈夫ですよ。理由についてはまた後日教えてもらうとして、今日はスライムパークを軽く案内してもらってもいいですか?」
気を取り直し、私たちは言葉を交わさずとも楽しめるスライムパークの見学をすることにした。
ライムの上に乗り、落下移動を体験しながら、アトラクション気分でスライムパーク内を案内してもらったのだった。





