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38歳社畜おっさんの巻き込まれ異世界生活~【異世界農業】なる神スキルを授かったので田舎でスローライフを送ります~  作者: 岡本剛也
第4章

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第408話 新年度の朝


 いよいよ今日から新年度が始まる。

 待ちに待っていただけに、私自身も非常に楽しみ。


 スキル強化については、すでに昨日のうちに終えてあり、残っていたNPをほぼすべて使い切って強化にあてた。

 畑が一回り大きくなっているため、より効率よくNPを貯められるようになったはず。


「佐藤さん、おはようございます。いよいよ新年度の朝を迎えましたね」


 自室を出て階段を下りると、すでに準備万端のシーラさんが待っていた。

 私も早く起きたはずなんだけど、それよりもさらに早く目を覚まして準備をしていたようだ。


「シーラさん、おはようございます。ずいぶんと早いですね」

「楽しみにしていましたので。佐藤さんも早く準備を済ませてください」

「ちょっと待っていてくださいね」


 目を輝かせているシーラさんに見つめられながら、私は準備を行う。

 非常に気にはなるものの、あまり意識しないようにして準備を終えた。


 早めに起きてすぐ準備をしたこともあり、シーラさん以外はまだ誰も起きてきていない。

 初日は仕事量も少ないため、ゆっくりしていてもいいくらいなんだけど……この状況でゆっくりするという選択肢はない。


「うぅ……朝はまだ冷えますね」

「でも、気持ちが良いです。それと、畑が広くなりましたね。スキルの畑以外も広くなっていて、いい感じに大農園に近づいていると思います」


 別荘を出ると、辺り一面が農地で埋め尽くされており、まさに大農園と呼ぶにふさわしい光景が広がっている。

 川の近くには田んぼもあり、裏山には果樹園があるからね。


 私的には、もう大農園といっても差し支えないのではと思ってしまうけど……。

 シーラさんは、まだまだ大きくするつもりのようだ。


「どこまで大きくしたら大農園なんですかね?」

「分かりませんが、今の3倍くらいの大きさじゃないでしょうか? “大農園”と言うからには、乗り物で移動しないと管理できないくらいにしたいです」

「夢が大きすぎますね。龍人族の方たちの畑も合わせれば、当てはまりそうな感じがしますけど……」

「いやいや、まだまだです。目標は大きいほうが楽しいですから」


 笑いながら話すシーラさんに、心の中で同意する。

 今でも十分に大農園だと思いながらも、上限を設けずに拡大していきたいという気持ちもある。


 そんな他愛のない会話をしながら、私とシーラさんは苗植えや種まきを進めていく。

 NPを使って品揃えも充実させたため、今年は新しい作物をいくつか植えることにした。


 しっかりとどこに何の作物を植えたかを覚えておきながら、成長速度、収穫のしやすさ、NP効率を記録していく。

 味も気になるところではあるけど、この世界の作物は大抵まずいため、食用としての期待は一切できない。


「うぅ……もう作業が終わってしまいそうです!」

「畑を広くしたといっても、初日は畑の4分の1の種まきと苗植えだけですからね。日の出とともに作業を始めたので、こんなものだと思いますよ」

「毎年思いますけど、早すぎます。……スキルの畑以外もやっていいですかね?」

「それは駄目です。自分たちの持ち場だけで留めましょう」


 みんなが来る前に作業が終わりかけてしまい、シーラさんが嘆いている。

 もっと仕事がしたいという、なんとも変わった嘆きではあるものの、こればかりは認めるわけにはいかない。


 一人が頑張りすぎると、他の人にも「頑張らなければ」という圧力が生まれてしまうからね。

 ブラックな労働環境を生まないためにも、残業は一切認めていない。


「じゃあ、もう終わりなんですかね? 朝に終わってしまう仕事って悲しすぎます」

「徐々に仕事量が増えていきますし、今日だけですよ。みなさんの応援に回りましょうか」


 シーラさんと一緒に別荘へと戻り、みんなと食卓を囲んだあと、今日の業務を終えた私たちはサポートへ回ることにした。

 とはいえ、他の仕事量も少なく、午前中にはすべての作業が終了したため、私は宿の様子を見に行くことに決めた。


 『サトゥーイン』も今日から営業を再開しており、満員という大盛況で初日を迎えることができている。

 それだけでなく、休業中も宿泊予約が殺到していたらしく、2カ月先まで全室埋まっているとレティシアさんが言っていた。


 本来なら、まばらな客入りから徐々に増えていくのが理想的だったのだが、初日からピークというのはルーチアさんたちに負担をかけてしまっている。

 長期休暇明けの繁忙ほど、大変な仕事はないからね。


「みなさん、応援に来ました。問題なく回せていますか?」

「あっ、佐藤さん! 今のところ問題なし!」

「いきなり大賑わいだが、まだ回せているな。今日は受付だから、まぁ問題なく回せている」

「大変なのは明日から。部屋の片づけも入るから……」


 小さく呟いたルナさんの言葉に、同意するようにみんなが頷いた。

 今日は大丈夫そうだが、明日からが本番になりそうだ。


「業務に慣れるまで、応援を呼んだほうがいいですか? 畑のほうはしばらく楽なので、1週間ほどは人手を貸せると思います」

「あっ、借りた――」

「駄目だ。冬に長期休暇をもらったんだから、私たちだけで働く。勘を戻すまでは大変だが、できない仕事ではないからな」


 ソアラさんが要請を受けようとしたが、ルーチアさんが即座に却下した。

 それに対する反対意見も出ていないし、応援は不要という判断のようだ。


「本当に大丈夫ですか? お客様に迷惑がかかってしまうのが1番いけませんからね?」

「大丈夫だ。そもそも人数もしっかり割いてもらっているし、もう素人ではないから、私たちだけで回せる」

「分かりました。それではよろしくお願いします」


 ルーチアさんの言葉からプロとしての誇りを感じたため、私は素直に引き下がることにした。

 明日は応援の代わりに差し入れを持ってくることを決め、今日は宿の中を軽く見回ってから別荘に戻ることにしたのだった。



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