第37話 従魔たちの実力
全ての力を使い果たし、私はその場に座り込む。
自分にできる全てのことを試したけど、結果としてシーラさんに一発も剣を当てることができなかった。
「さ、佐藤さん、初心者にしては中々の腕だったと思いますよ」
「そうそう。よ、良かったと思うわ」
二人の無理やりな擁護が逆に心に来る。
「無理して褒めなくて大丈夫ですよ。ダメダメだったことは私が一番よく分かっていますので」
「……す、すみません。佐藤さんに剣の良さを知ってもらうつもりだったのですが、逆の結果になってしまいました」
「シーラさんが謝ることはありません。私の実力不足ですし、散々な結果でしたが剣を置くつもりはありませんから」
ダメダメではあったけど、頂いた剣を無駄にする訳にはいかないしね。
これまで通り、隠れてこっそり素振りは行っていくつもり。
「なら、少しでも強くなれるようにお手伝いします!」
「シーラさん、ありがとうございます」
「私も。私に剣の指導をしてくれた先生も呼べるわよ?」
「いや、それは遠慮します。ベルベットさんが気になった部分があれば、直接教えてください」
「佐藤は本当に全てを遠慮するわね」
「これでもかなり恩恵を受けさせてもらっていますよ」
住む場所に食べるもの。
それからシーラさんまでつけてもらっている上、ベルベットさんも良くしてくれているからな。
「……と、話が変わりますが、これで模擬戦は終わりでしょうか?」
「マッシュとかライムは戦えないの? 戦えるなら、少し戦ってみたいけどね」
ちなみにライムもマッシュも模擬戦を観戦しており、二匹して楽しそうに盛り上がっている。
ライムは分からないけど、マッシュは戦えはしそうだけど……どうなのだろうか。
「マッシュ、ライム。お二人と模擬戦をしますか? 遊びのようなものですが、怪我はしてしまうかもしれません」
そう忠告を入れたのだけど、どうやら二匹ともやる気満々。
魔物だけあって、戦うのは嫌いではないのかもしれない。
「マッシュもライムもやる気満々ね。ライムに関しては、どう戦うのか一切分からないけど」
「野生のスライムのイメージは、触れられたらベタつく――ぐらいの印象しかありませんからね。ライムも戦えるか怪しいです」
「とりあえずマッシュからやろう。手加減はしないからね」
それから、マッシュ対ベルベットさんの模擬戦が始まった。
一番戦えるのはマッシュと思っていただけに、善戦してくれると期待していたのだけど……。
単純な体格差で有利を取れず、技術、身体能力的にもベルベットさんに圧倒されてしまい、良いところなく負けてしまった。
細かな動きは良かったと思うけど、少し厳しかったか。
「マッシュ、よく頑張りました。私よりは何倍も戦えてましたよ」
俯いて落ち込んでいるマッシュに声をかけて励ます。
この様子を見る限り、本人はかなり自信があったみたいだ。
「次はライム? やる気満々みたいだけど……大丈夫?」
マッシュが惨敗したところを見ていたはずだけど、やる気満々で前に出てきたライム。
マッシュでボロボロだったし、ライムが勝てるビジョンが見えないのだが大丈夫だろうか。
一切期待していない中、ベルベットさん対ライムの戦いが始まった。
いつものようにぽよんぽよんと楽しそうに跳ねているライム。
模擬戦を理解していないのではと思い始めたタイミングで、この場にいたみんなが徐々に違和感を覚え始めた。
驚くことに……ライムが消え始めたのだ。
実際には消えたわけではなく、体の色を暗くなり始めている景色に同化させたというのが正しい。
目を凝らせば核の部分がギリギリ見えるけど、非常に見えにくい状態。
「えっ! ライムってそんな能力を持っていたの?」
「スライムにはそんな能力は持っていなかったはずで。ダークスライムに進化して身につけたのかもしれません」
二人も驚いており、そんなみんなが驚いている中――ライムが動き出した。
いつものように跳ねるのではなく、滑らせるように移動し始めたのだ。
一瞬でも気を抜くとどこにいるのか見失ってしまい……私はもうライムがどこにいるのか分からなくなってしまった。
対峙しているベルベットさんは、まだ目で追えているようだったけど……。
「あー、急に跳ねたり、早く動いたりしないでよ! ……見失っちゃった」
ライムが変則的な動きをしたようで、ベルベットさんも見失った様子。
簡単にやられると予想していたけど、こうなったら勝敗が一気に分からなくなった。
ベルベットさんはキョロキョロと周囲を確認しているけど、ライムは未だに姿を現さないまま、時間だけが流れていく。
そして、ベルベットさんが一瞬気を抜いたところを狙って――ライムが背後から攻撃を仕掛けた。
攻撃方法は至ってシンプルで、体を硬化させての体当たり。
大した攻撃に思えなさそうだけど、不意打ちということもあってベルベットさんはぶっ飛び転ばされてしまった。
そして、倒れている間にまた闇に紛れ、隙を見逃さずに不意を突いて攻撃。
ベルベットさんはほぼ何もできず、ライムにまさかの敗北を期したのだった。
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