表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/365

第36話 模擬戦


 更にそこから三戦行われたのだが、一戦目でベルベットさんの動きを読みきったようで、三戦共にシーラさんの圧勝。

 ベルベットさんも決して弱くないことは分かるけど、とにかくシーラさんが強すぎるのだ。


「あー、駄目! どう攻めても勝てるビジョンが見えないわ。シーラ、あなた相当強いのね。なんで今まで雑用ばかりをやっていたの?」

「お褒めくださりありがとうございます。雑用をやっていたのは色々と事情がありまして……。とにかく、ベルベット様も良い腕です」

「あれだけボッコボコにして勝っといて、良い腕って言われてもねぇ……。ちょっと、佐藤やりましょうよ。憂さ晴らしさせてくれるかしら?」

「えっ? 憂さ晴らしはやめてください」

「冗談よ。気分転換も兼ねて、指導してあげるわ」

「それなら……よろしくお願いします。先に言っておきますが、私はこの年まで剣を握ったことがなかったどころか、運動すらまともにしてこなかった中年のおじさんですからね?」

「分かっているわ」


 ベルベットさんはニヤリと笑みを浮かべており、本当に分かっているのか不安になってくる。

 流石に本気では打ち込んでこないとおもうけど、ある程度は覚悟しておいた方がよさそうだ。


 私はシーラさんと入れ替わるようにベルベットさんの前に立ち、渡された木剣を構える。

 対峙したことでより分かるけど、剣を構えているベルベットさんには少しの隙もない。


 それに立ち姿も、体に一本の線が入っているようで……美しさすら感じる。

 これが小さい頃から剣を習ってきた人の構えか。


「それじゃ始めるわよ。準備はいい」

「は、はい。いつでもどうぞ」


 私がそう告げた瞬間、ベルベットさんが突っ込んできた。

 速いなんてものではなく、あっという間に間合いに入られ――頭を軽く叩かれる。


「何しているのよ。棒立ちじゃ練習にもならないわよ?」

「い、いや。は、反応ができなくて……。何をしたらいいんですか?」

「私に合わせて剣を振るのよ。そして、私が剣を振ったらガード。分かった?」

「わ、分かりました」


 分かったと言ったはいいものの、すぐに実戦できるわけもなく、私は一方的にやられ続けた。

 手加減してくれているお陰で、打ち込まれた箇所は痛くないのだが、体を過度に硬直させてしまうからか、ほとんど動いていないのに筋肉が早くも痛くなってきた。


「ふふ、想像以上にダメダメね。まずはリラックスすることから始めた方がいいかもしれないわ」

「ベルベット様、次は私にやらせてください」


 今度はシーラさんが私の前に立った。

 ベルベットさんは基礎に忠実な美しい構えだったが、シーラさんはどこからでも攻撃されそうな……威圧的な構えに感じる。


「私は打ち込みませんので、佐藤さんから仕掛けてきてください。そうですね……一発当てたら佐藤さんの価値です」

「シーラさんは手を出さず、一発当てたら私の勝ち? そんな簡単なルールでいいのですか?」

「ええ。恐らくですけど、これが一番良い練習になるかと思います」

「なら、遠慮なく打ち込ませて頂きます」


 舐められているかと思ってしまうルール。

 体がガッチガチに固まった上に、腰まで引けていた私だけど……手を出さないと分かっているなら、流石に一発くらいは当てることができる。


 木剣を握り直し、軽く深呼吸をしながら体の力を抜いてから、私はシーラさんに斬りかかった。

 人間相手、ましてや女性に斬りかかるなんて抵抗感しかないのだけど、これはあくまでスポーツの一種。


 そう割りきって、私はシーラさんに本気で斬りかかった。

 心の中で謝罪しながら、渾身の一撃を打ち込んだ――のだが、私の木剣は軽々と受け止められており、その後の連撃も当たる気配がない。


 ……シーラさんは想像以上に凄い人なのかもしれない。

 私よりも私のことを知っているのではと思うほど、打ち込む方向にシーラさんの木剣があるのだ。


 それに、打ち込んだ手応えがまるでない。

 ベルベットさんとシーラさんの模擬戦は剣のぶつかり合う音が聞こえていたけど、私が打ち込んだ剣からは何の音もならない。


 私が手加減しているとかではなく、シーラさんが威力を完璧に吸収しながら受け止めているのだ。

 そして極めつけは、その場から一歩も動いていないこと。


 上段、中段、下段、思いつく限りの攻撃を仕掛けてみたけど、木剣を当てるどころか一歩も動かせないまま、先に私の体力の方がなくなってしまった。

 いっぱい打ち込んだことで練習にはなったけど……今回一番学んだことは、私に戦いは向いていないということだったな。



※作者からのお願い


一日二話投稿のモチベーションとなりますので、この小説を読んで少しでも「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、ブクマと↓の☆☆☆☆☆から評価頂けましたら幸いです <(_ _)>ペコ


つまらないと思った方も、☆一つでいいので評価頂けると作者としては参考になりますので、是非ご協力お願いいたします!


お手数だと思いますが、ご協力頂けたら本当にありがたい限りです <(_ _)>ペコ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  ▼▼▼ 私の別作品です!1/27発売ですので、どうかお手に取って頂けたら幸いです! ▼▼▼  
表紙絵
  ▲▲▲ 私の作品です!1/27発売ですので、どうかお手に取って頂けたら幸いです! ▲▲▲ 
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ