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38歳社畜おっさんの巻き込まれ異世界生活~【異世界農業】なる神スキルを授かったので田舎でスローライフを送ります~  作者: 岡本剛也
第4章

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第386話 水戸黄門


 両者ともに膝をついているけど、ガロさんはすでに立ち上がろうとしており、麻痺の影響がさほどないように見える。

 ライムが調整して、ガロさんには胞子の量を少なくしたのかもしれない。


「お前ら、一体何者だ? ただじゃ済まないからなァ」


 三白眼の男性は依然として動けずにいるけど、鋭い眼光と怒気に満ちた声で脅してきた。

 私は悲鳴を上げそうになったけど、何とか抑え込み、ガロさんに声をかける。


「ガロさん、大丈夫ですか? すみません。争いごとは絶対にいけないと思い、ガロさんの動きも封じてしまいました」

「ん……? ……ガロ?」

「ワシは大丈夫じゃ。まだちょいと痺れておるが……ふぅー。ほれ、もう元どおりに動かすことができる」


 深呼吸をすると、その場で飛び跳ねて無事をアピールしてくれた。

 痺れからの回復が早いし、これはガロさんの麻痺耐性が高いんだと思う。


「それなら良かったです。指示は私が出しましたが、まさか胞子で動きを止めるとは思っていなかったので」

「まあこれぐらい乱暴じゃないと、ワシらは止まらんかったと思うぞ。つい、カッとなってしまったからのう。ふぉっふぉっ」


 笑い事ではないと思うんだけど、とにかく体に異常がなく、冷静にもなってくれたみたいで良かった。

 私がホッとしたのも束の間、三白眼の男性が何やらうめき声のようなものをあげ始めた。

 もしかして、麻痺がさらに効いてきてしまったのかもしれない。


「あの、大丈夫ですか? すぐに解毒薬を――」

「……な、なぁ……ガロって、あのガロじゃねぇよな?」


 ようやく口を開いた三白眼の男性の声からは、先ほどまで恐ろしいほど感じていた怒気が消えていた。

 よく見れば、目尻も垂れており、三白眼ですらなくなっている。


 多分だけど、私がガロさんの名前を呼んだことで察したんだと思う。

 冷静に考えれば、ギナワノスで戦う闘士がガロさんを知らないわけがない。


「想像されているガロさんと同一人物だと思います」

「う、嘘だろ? か、騙ってるなら、それこそ冗談じゃ済まないぞ」

「さっきの兵士と同じことを言っておるな。何度も言うが、わざわざガロを名乗らんじゃろ」

「ほ、本当にガロ……さんなのか?」

「ああ、正真正銘ガロじゃ」


 ガロさんが自信満々にそう告げると、ひざ立ちの状態から勢いよく頭を地面につけた三白眼の男性。

 体が思うように動かないということもあるんだろうけど、それにしても勢いよく顔から倒れた。


「す、すまねぇ! まさかガロさんだとは思わず、失礼な態度を取っちまった。この通りだ。許してくれ」

「ふぉっふぉっふぉ。許すも許さんも、お主が吹っかけてきただけじゃろう。特に気にしておらんわ」

「本当に申し訳ねぇ!」


 抑えきれない怒りを抱えていたようにも見えた男性が、ガロさんと分かるや否やこうなるんだもんなぁ。

 さっきの兵士さんといい、なんというか水戸黄門を見ている気分になる。


「攻撃の意思がないなら構わんよ。こちらこそ、勝手に踏み入って悪かったのう」

「い、いや、ガロさんならむしろ歓迎されるべきだ。――名乗るのが遅れてしまってすまない。俺の名前はスピンだ」

「スピンさんですね。私は佐藤と言いまして、こちらがジョエル君です」

「ワシは名乗らんでいいと思うが、ガロという。コロッセウムに上下関係なんかないんじゃが、一応先輩ということにはなるんかの?」

「もちろん大先輩だ。ピリついていたとはいえ、失礼な態度を取って悪かった」


 未だに顔を地面につけたまま、謝り続けているスピンさん。

 この土下座に近い姿勢だからよく分かるけど、本当に腕の長い人だなぁ。


「とりあえず解毒薬をお渡しします。麻痺もすぐに治る……はずです」

「自信なさげなのが少し怖ぇが、ありがたく飲ませてもらう」


 私はスピンさんを起こし、解毒薬を飲ませてあげた。

 マッシュの能力が進化していることが分かったため、この解毒薬で効くのかどうか不安だけど、ルーアさんお手製の解毒薬だし、さすがに効くと思う。


「それじゃもう心配はいらんか? ワシらはもう少し見学させてもらうぞ」

「あっ、ちょっと待ってくれ。急に襲った詫びとして、俺に案内させてほしい。案内といっても、ガロさんのほうが詳しいだろうが、俺のように襲う奴が確実にいるからな。俺がいれば抑止力にはなる」

「ありがたい申し出じゃが、体は大丈夫なのか?」

「大丈夫だ。飲ませてもらった解毒薬の質がいいのか、もう痺れが取れ始めてきている」


 まだ若干痺れは残っているようだけど、立ち上がってみせたスピンさん。

 さすがは闘士なだけあって、体の回復もすさまじい。


「それなら、ついてきてもらおうかのう。よろしく頼むぞ」

「ああ、任せてくれ。失礼な奴がいたら、俺が叩きのめす」

「心強いわい。まあ今のところ一番失礼じゃったのはスピンじゃがな」

「そ、それは……言わないでくれ」

「冗談じゃ」


 軽口も叩きながら、調整場をさらに奥へと進み始めたガロさん。

 私はもう引き返したい気持ちがあったけど、スピンさんが護衛してくれると言ってくれたしなぁ。

 今さら大丈夫ですとは言い出せず、ライムとマッシュに挟まれて守られながら、私とジョエル君はガロさんの後をついていったのだった。



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