第34話 日本と異世界
「はぁー、美味しかった! フライドポテトも十分美味しかったけど、オムライスはまた更に美味しかったわ! 本は絵で描かれているし、料理は段違いで美味しい。もしかしてだけど……佐藤が暮らしていた世界ってとんでもない場所?」
「そうですね。暮らしていた時は全てが当たり前だったので、特に何も思いませんでしたが、何でもあって全てのクオリティが高い凄い世界だったのかもしれません」
「それでいた、魔物も争いもない世界なのですよね? 羨ましい限りです」
「私が住んでいた国では――ですがね。ただ、この世界も凄く良いと思いますよ。魔物も従魔となったら可愛いですし、治安とご飯があまり美味しくないこと以外は完璧だと思います」
魔王だけでなく、他国からの侵略の可能性。
それと王都付近はまだ治安が良いみたいだけど、少し離れると平気で犯罪が行われている地域もあるらしい。
その部分だけは嫌ではあるが、今ここで暮らしている分には何もないし、【異世界農業】のスキルのお陰もあるけど、日本よりも暮らしやすいとさえ思っている。
良くも悪くもネット文化がないというのが、一時病んでいた私にとっては良い方向に作用している気がする。
「そうなの? 私が聞く限りじゃこっちの世界に勝っている部分なんてないと思ってしまうけど」
「私もそう思います。できることなら、私も佐藤さんが住んでいた世界に行ってみたいです」
「それができたらいいんですけどね。私もベルベットさんとシーラさんを案内したいですから」
「私も行ってみたいけど、それは難しいと思うわ。お父様が説明したと思うけど、転移させるには十年単位の膨大な魔力が必要になるし……そもそもそっちの世界には魔力という概念がないんでしょう?」
「ありませんね。完全に空想上のものとなっています。……なるほど。そうなると、向こうからこっちの世界に戻っては来られないということですか」
「そういうこと。狙って呼び戻せることはできるかもしれないけど、佐藤が巻き込まれたように決して完璧ではないから」
そういうことであれば、ベルベットさんとシーラさんを案内するということは難しいか。
永住するという強い覚悟が必要になる。
私はこうして良い人に巡り合え、王様からも優遇して貰えているから何不自由はないけど、慣れない世界で暮らすというのは辛いものがある。
「なるほど。大きなリスクも伴う儀式なんですね」
「うん。だから旅行気分では使えないの。今回の『勇者召喚の儀』も本当なら行いたくなかったってお父様が言っていたからね」
そんな危険の大きい儀式をせざるを得ないぐらい、この国……いや、この世界に危険が迫っているということか。
私はこうして楽しいスローライフを送らせてもらっているけど、蓮さん達は戦っているんだもんな。
美香さんとは約束したけど、4人共に出来る限りサポートしてあげたい。
「魔王軍ってそんなに危険なんですね。私はそんな中、こんなに楽しんでいていいのでしょうか?」
「いいんだって。佐藤は異世界に戻るって選択を取らなかっただけで、役目を果たしているようなものだから」
「そうです。それに美香さんのケアだってしていましたし、佐藤さんはお役に立っていると思いますよ」
「なるほど。農業を頑張ることが私の役目みたいなものなんですね」
「はい。せっかくでしたら、楽しくやった方がいいです」
できることが限られているなら、わざわざ辛気臭くなる必要はないし、これまで通り楽しくやらせてもらおう。
……ただ、もう少し効率にはこだわってもいいかもしれない。
気兼ねなく蓮さん達に日本の料理を振舞えるくらいのNPを稼げるようになれば、手厚いサポートができるようになるからな。
楽しむことは決して忘れず、その上で農業の方も頑張っていこう。
「そういうことでしたら、変わらず私は楽しくやらせてもらおうと思います。お二人もどうかよろしくお願い致します」
「私の方こそよろしくお願いします。私にできることならやらせて頂きます」
「私もよろしくね。まぁ本という現金目当てだけどさ」
食後の何気ない会話だったけど、良い話し合いができた気がする。
目標を立ててからは農業の方に力を入れていたけど、更にやる気が出てきた。
「それじゃ親睦を深めるために、食後のデザートでも頂きましょうか」
「えっ、佐藤さんが作ってくれるのですか?」
「はい。安いものですが、作らせて頂きます」
「なになに? 佐藤ってデザートまで作れるの? 私、甘いものには目がないのよ!」
「私もです! ベルベット様、佐藤さんが作るデザートは本当に美味しいので、期待していいと思いますよ!」
「シーラがそこまで言うのなら、期待しちゃうわね」
ベルベットさんとシーラさんが盛り上がっている中、私は再びキッチンに立ってデザート作りを始めた。
作るのはバニラアイスで、牛乳、バニラエッセンス、砂糖、生クリームだけで作ることができる簡単で安価なデザート。
味は保証できるし、早速作って二人に振舞うとしよう。
※作者からのお願い
一日二話投稿のモチベーションとなりますので、この小説を読んで少しでも「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、ブクマと↓の☆☆☆☆☆から評価頂けましたら幸いです <(_ _)>ペコ
つまらないと思った方も、☆一つでいいので評価頂けると作者としては参考になりますので、是非ご協力お願いいたします!
お手数だと思いますが、ご協力頂けたら本当にありがたい限りです <(_ _)>ペコ